第8節 グローバル化への対応 1 国際政策の推進 (1)主な国際会議の動向 −デジタル・ディバイドの解消に関する議論がより活発に (1)デジタル・ディバイドの解消に向けた取組  2001年7月に開催されたジェノバ・サミットにおいて、「デジタル・オポチュニティ作業部会(ドット・フォース:Digital Opportunity Task Force)」(2000年7月の九州・沖縄サミットにて設立された国際的デジタル・ディバイド解消に向けた関係者間の協力のためのグループ)の報告書が支持され、当該報告書にある行動計画(ジェノバ行動計画)について、2002年6月開催予定のカナナスキス・サミット(カナダ)でその実施状況をレビューすることが合意された。また、電子政府に関するその行動計画の策定が奨励された。  このほか、国連の活動として、2000年9月の国連ミレニアム宣言を踏まえ、情報通信技術による貧困撲滅等の開発目標の達成に向け、国連と先進国、途上国、民間企業、NPO等の関係者との協力・連携を促進する場として、国連ICT(Informationand Communications Technology)タスクフォースが開催された。タスクフォースには、6つのワーキング・グループが設置され、今後更なる具体的取組を検討する予定である(図表1))。  また、APECでは、電気通信・情報ワーキング・グループ(TEL:Telecommunications and Information Working Group)において、2005年までにAPEC域内のインターネットアクセス数を3倍に増加させることなどを目標に、「デジタル・ディバイド解消に向けた行動のためのブループリント」が作成されているほか、我が国による「ルーラルエリアにおけるデジタル・ディバイド解消のためのIPベースの無線LANの開発」をはじめ各種プロジェクトが推進されている。  さらに、2002年5月に開催された第5回電気通信・情報産業大臣会合(中国(上海))においては、「共通の発展の推進に向けたデジタル・オポチュニティの活用」というメインテーマのもと、TELにおける今後2年間の活動方針を定めた大臣宣言が採択された。  また、民間の活動として、スイスを本部とする世界規模の非営利組織である、世界経済フォーラム(WEF:World Economic Forum)においても、「グローバル・デジタル・ディバイド・イニシアティブ・タスクフォース」を設置し、デジタル・ディバイドの解消に向けた取組が行われているところである。 (2)電子商取引に関する取組  2000年5月にメキシコで開催されたAPEC第4回電気通信・産業大臣会合においては、電子商取引のインフラ開発等を推進するための政策・規制環境の確保等をうたったカンクン宣言が採択された。  APECの電気通信・情報ワーキング・グループ(TEL)においても、国際間の電子商取引(BtoC)における消費者保護等の課題の抽出・検討等を行う実証実験プロジェクトであるINGECEP(Integrated Next Generation Electronic Commerce Environment Project)が我が国により行われてきたほか、各国においても電子商取引関連プロジェクトが進められている。  一方で、電子政府に関する取組も盛んになっており、第25回TEL会合では電子政府に関する取組状況の調査が提案され、5月開催の大臣会合において調査結果が報告された。  民間における取組としては、欧州・アフリカ、南北アメリカ及びアジア・オセアニアの電子商取引に携わっている企業からなるGBDe(電子商取引に関する世界ビジネス会議:The Global Business Dialogue on Electronic Commerce)が、電子商取引を推進するための諸課題について検討し、年1回の総会で各国政府等に対し提言を行っている。2001年9月に行われた第3回東京総会においては、電子商取引の世界的な普及に向けた課題(知的財産権、コンバージェンス(融合)、電子政府、消費者信頼性、デジタルブリッジ等)について、民間参加者に加えフィリピンのアロヨ大統領をはじめ数多くの政府及び国際機関の首脳も参加して積極的なディスカッションを行い提言を取りまとめた。総務省からも小坂副大臣(当時)をはじめ多くの関係者が参加し、本会議に対する貢献を行っている。 (3)ITU関連会合  ITUにかかわる活動としては、2002年3月、世界電気通信開発会議(WTDC-2002)がトルコ(イスタンブール)において開催され、2003年以降の電気通信開発部門の活動方針等が審議された。  また、2001年11月、ITU主催のアフリカテレコム 2001(電気通信展示会及びフォーラム)が南アフリカ(ヨハネスブルグ)において開催された。展示会には、世界28か国・236社が、最新の情報通信技術の展示を行ったほか、フォーラムでは、世界42か国から政策責任者、民間企業の幹部等が出席し、情報通信に関する最新の政策・技術動向について意見交換を行った。 (4)APT関連会合  2000年10月31日から11月2日まで東京で開催されたアジア太平洋情報社会サミットでは、域内30か国・地域の情報通信担当大臣等の参加のもと、域内の情報社会の構築に向けて「東京宣言」及び「行動計画」が採択された。  「東京宣言」では、「できる限り2005年までに、学校や郵便局等公共的な施設からのアクセスを含め、アジア太平洋地域すべての人々が、インターネットにアクセスできるよう全力を挙げる」ことが当面の目標として設定され、その実現に向けた「行動計画」では、1)デジタル・ディバイドの解消、2)オポチュニティ確保に向けた情報通信基盤の整備、3)人材育成とITリテラシーの向上等の具体的提言がなされた。  これを受けて、2001年10月にタイで開催されたAIIS(アジア太平洋情報社会イニシアティブ:Asia Pacific Initiatives for the Information Society)会合及び2002年2月にインドで開催されたデジタル・ディバイド会合では、「東京宣言」及び「行動計画」のフォローアップとして、各国における取組の紹介及び今後の検討課題等に関する議論が行われた。 (5)世界情報社会サミットに向けた取組  情報社会の抱える問題について幅広い関係者の共通認識を確立することを目的として、2003年(スイス(ジュネーブ))及び2005年(テュニジア(チュニス))に世界情報社会サミットの開催が予定されている。  2001年6月にITU理事会において正式な開催場所・日程が決定されたのを受け、同年12月には国連総会においてサミット開催を歓迎し、各国・国際機関のほか、産業界及びNGO等幅広い参加を促す旨の決議が採択された。このほか、実施事務局が立ち上げられ、政府間コンサルテーション会合が設けられるなど、本会合に向けた準備が本格化しつつあり、我が国としても、準備会合、本会合を通じて、本サミットに貢献するべく作業を進めている。 図表1) 国連ICTタスクフォースの6つのワーキング・グループ 図表2) 主な国際会議の概要