平成15年版 情報通信白書

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第1章 特集「日本発の新IT社会を目指して」

(5)IPv6への移行

IPv6の標準化、実用化で世界をリード

1 IPv6の必要性

 ユビキタスネットワークが進むにつれ、情報家電や無線タグ等の接続端末は、その数・種類双方の面で飛躍的に拡大すると想定される。IPv6(Internet Protocol version 6)は、こうした接続端末数の増加に対応するとともに、利用者の利便性を大きく向上させるものであり、IPv6への早期移行が期待されている。
 IPv6とは、インターネットで使用するプロトコル(通信手段)の新規格である。IPv6においては、2の128乗個というほぼ無限のIPアドレス(インターネットに接続された端末を識別するための固有の数値、いわば通信の住所に相当する)を有しており、情報家電等身の回りのあらゆる機器にIPアドレスを割り当てることができる。このため、家庭内ネットワーク内にある端末も外部のネットワークから識別することが可能となるため、IP電話やインスタントメッセージ等のPtoP通信(サーバを介さない端末間通信)や外出先から家庭内IPv6機器へのアクセス等を容易に行うことが可能になる。
 また、現在のインターネットでは、通信品質が保証されていない、接続する端末の設定に手間がかかる、情報セキュリティ確保面で弱いといった問題点を抱えているが、IPv6を用いることでこれらの問題を比較的容易に解決することができる。例えば、IPv6においては、通信内容の重要度に応じた優先順位を付加することにより、重要な通信の品質を改善できる。また、「プラグ・アンド・プレイ」と呼ばれる自動設定機能により、情報家電等の端末をネットワークにつなぐだけで煩雑な設定が自動的に行われ、インターネットへの最初の接続が容易になる。さらに、IPv6にはIPsec(IP Security)と呼ばれる利用者の認証と暗号機能が標準装備されており、より安全な通信を容易に実現させることが可能となる(図表1))。

 
図表1) IPv6の意義

図表1) IPv6の意義

2 IPv4アドレスの割当て状況

 IPv4アドレスの国別割当て数を比較すると、インターネット利用が先行した米国は豊富に割り当てられているのに対し、我が国や中国等のアジア地域は、全世界の約6割に及ぶ約37億人もの人口を抱え、インターネット利用者が急増しているにもかかわらず(2-9-2(1)参照)、多くの国で歴史的に割り振られたIPv4アドレス数が少ない。IPv6については、技術の標準化段階から我が国研究者が大きな貢献を行ってきた我が国発の技術といえるものであり、我が国がアジアの一員として、アドレス数の限界を克服するIPv6の実現に先導的役割を果たす意義は大きい。

3 IPv6への移行状況

 我が国は、IPv6の実用化に向けて産学官連携で様々な実証実験を行ってきた。我が国のインターネット・サービス・プロバイダ(ISP)等のIPv6アドレスの取得状況については、平成11年度末時点では、5組織であったものが、平成14年度末現在では、53組織に達しており、世界一のIPv6アドレス取得組織数となっている。我が国は、IPv6の実用化面においてもフロントランナーであり続けている(図表2))。

 
図表2) IPv6割振組織の国際比較

図表2) IPv6割振組織の国際比較
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 近年、商用ベースでのIPv6対応製品が次々と登場しており、現在は本格的な普及を前にした立ち上がり期にある。我が国では世界に先駆けて平成13年11月に一般ユーザ向けに商用の試験サービスが開始されて以来、いくつかの大手ISPを中心に実験が行われている。パソコン用のソフトウェアにおいても、一般的なOS(基本ソフト)、ウェブ閲覧ソフト(ブラウザ)、音楽等の再生ソフトウェアはIPv6対応のものが既に提供されている。また、伝送制御装置であるルータのIPv6対応も進んでおり、主要メーカの基幹ルータ商品はもとより、家庭等で使うホームルータでもIPv6対応商品も発売されている。さらに、IPv6対応のハードディスク搭載のビデオデッキが登場し、冷蔵庫等の白物系情報家電でも商品化が予定されている(図表3))。

 
図表3) IPv6への対応状況

図表3) IPv6への対応状況

関連ページ:IPv6への移行の推進については、3-3-1(1)参照

 

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