平成16年版 情報通信白書

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第1章 特集 「世界に拡がるユビキタスネットワーク社会の構築」

(3)ユビキタスネットワークサービスへの期待

ユビキタスネットワークを利用したサービスに対して全体的に利用意向が高い

 近い将来、いつでも、どこでも、何でも情報通信ネットワークにつながるユビキタスネットワークの実現が期待されている。ユビキタスネットワークを利用した社会においては、人々が必要な情報を必要な時に適切な形で入手できるようになり、生活活動の中でより適切な行動選択が可能となる。また、生活の中で守りたいものが確実に守られ、安全であるという情報を常に認識できることにより、安心した生活を過ごすことが可能となる。さらに、ユビキタスネットワークを利用した便利さや楽しさが、人々のより豊かな生活を実現することも期待される。
 現在、ユビキタスネットワークを利用した社会において実現すると考えられているサービス(ユビキタスネットワークサービス)の利用意向を尋ねたところ、「大切な人やモノ(家族、親、家、自動車等)に危険が迫ったときに離れた場所にいる自分に通知してくれる」が最も高く、87.2%の人が利用意向を示している。続いて、「医師が医療内容をリアルタイムに電子カルテに記録するなどにより、診療時間や病院での待ち時間が短縮される」(83.7%)、「急に病気になった場合でも、近くの病院で遠くの専門医に診てもらえる」(83.0%)、「外出時には自宅を常時自動監視し、異常があれば知らせてくれたり、必要に応じて警備会社に自動通報してくれる」(81.0%)といった安心を与えるサービスへの利用意向が高くなっている。さらに、「安価なシール等を貼っておくことにより、自分の持ち物(財布や傘等)を紛失した場合にすぐにどこにあるか調べることができる」電子タグ等の利用意向も80.5%と高い(図表[1])。

 
図表[1] ユビキタスネットワークサービスの利用意向※1(複数回答)

図表[1] ユビキタスネットワークサービスの利用意向※1(複数回答) 資料1-2-3参照 資料1-2-3参照
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 以下、利用者の属性(勤労者、家庭生活者、高齢者、若者に分類)ごとの利用意向を踏まえて、現在考えられている各ユビキタスネットワークサービスの一例を紹介する。

1 勤労者の期待するユビキタスネットワークサービス

 平成15年末には、全国の事業所のインターネット普及率が82.6%となり、また、勤労者の中心的年代である20歳代、30歳代、40歳代の自宅からのブロードバンド利用率がそれぞれ35%を超えるなど、勤労者は公私ともに情報通信ネットワークに積極的に触れる機会が多くなっており、情報通信ネットワークの利便性を享受できるサービスの利用意向が高いと考えられる。他方、勤労者は勤務のため所在や時間に制約があり、これらの制約を超えるためにユビキタスネットワークサービスを利用する意向が強いと考えられる。
 勤労者において他の属性に比べて特徴的に利用意向の高いユビキタスネットワークサービスは、「大切な人やモノに危険が迫ったときに離れた場所にいる自分に通知してくれる」(1位)(自分の自動車が盗難に遭いそうになり、盗難の危険の知らせと車内のカメラの映像が自分の携帯端末に通報される。)、「外出時には自宅を常時自動監視し、異常があれば知らせてくれたり、必要に応じて警備会社に自動通報してくれる」(4位)(自宅のエアコンをつけたまま外出したため、エアコンが運転中であることの連絡が届く。)、「自動車に高機能カーナビや自動制御による運転サポート機能が組み込まれ、より安全・快適に運転できる」(9位)(車の数や走行情報から、走行中の道路の渋滞予測が連絡されるとともに、渋滞を回避する別ルートが提示される。)、「観光情報等の検索機能や自動翻訳機能、道案内、テレビ電話によるサポート付きの携帯電話等を利用して、安心して気軽に海外旅行が楽しめる」(10位)(旅行先の街角で、携帯端末を使って観光名所までの歩行ルートを、携帯端末の日本語の案内を聞きながら確認できる。)等である(図表[2])。

 
図表[2] 勤労者の期待するユビキタスネットワークサービスのイメージ(一例)

図表[2] 勤労者の期待するユビキタスネットワークサービスのイメージ(一例)

2 家庭生活者の期待するユビキタスネットワークサービス

 家庭生活者においても自宅からの1日の平均インターネット利用時間が204.3分となるなど、情報通信ネットワークに触れる機会は多くなっている。家庭生活者は、在宅時間が長く、子供の世話や高齢者の介護、食事の準備等家事の負担が相対的に重いことから、これらの家事を支援するユビキタスネットワークサービスの利用意向が高いと考えられる。
 家庭生活者において他の属性に比べて特徴的に利用意向の高いユビキタスネットワークサービスは、「乳幼児、独居老人、ペット等が目の届かない場所にいる場合でも、様子や居場所を確認したいと思うときに確認できる」(5位)(保育園にいる子供がネットワークカメラで感知、撮影され、自宅の親が保育園での子供の様子を確認できる。)、「薬を携帯電話等に近付けるだけで種類が分かりやすく表示されたり、複数の薬の飲み合わせに注意が促されるなど、薬の誤飲や副作用を防止できる」(9位)(薬を2種類以上飲もうとして、複数の薬の服用に関する注意を喚起するメッセージが情報端末に音声とともに表示される。)、「商品についているチップやバーコードを携帯電話等に読み取らせることにより、商品の安全性などに関する情報を入手し、安心して買い物ができる」(10位)(スーパーで電子タグが取り付けられた商品(野菜)を端末に近づけて、産地や生産履歴が表示されるとともに、その商品を使ったおすすめメニューが表示される。)、「携帯電話等の簡単な操作により、外出先からでも家庭内の様々な電気製品のスイッチを遠隔操作できる」(14位)(外出先の買い物の際に、自宅の冷蔵庫にある食料品の種類や量を携帯電話で確認できる。)等である(図表[3])。

 
図表[3] 家庭生活者の期待するユビキタスネットワークサービスのイメージ(一例)

図表[3] 家庭生活者の期待するユビキタスネットワークサービスのイメージ(一例)

3 高齢者の期待するユビキタスネットワークサービス

 平成15年における我が国の65歳以上人口は約2,400万人と人口全体の19.0%を占めており、平成22年には22.5%に増加すると推計(注1)されるなど、我が国の高齢化は急速に進展することが予測されている。また、65歳時の平均余命(注2)も平成14年には男性が17.96歳、女性が22.96歳となり、このような長い期間を高齢者が安心して、自ら生きがいをもって過ごすことが可能となるユビキタスネットワークサービスの利用意向が高いと考えられる。
 高齢者において他の属性に比べて特徴的に利用意向の高いユビキタスネットワークサービスは、「医師が医療内容をリアルタイムに電子カルテに記録するなどにより、診療時間や病院での待ち時間が短縮される」
(1位)(病院で診察の際に、別の部屋での検査結果がリアルタイムに電子カルテに入力され、それを基に医師が診察する。)、「急に病気になった場合でも、近くの病院で遠くの専門医に診てもらえる」(2位)(診療所の患者の映像が病院の専門医に転送され、応急処置の指示を受ける。)、「住民票・印鑑証明の発行等の行政サービス、確定申告、選挙の投票等がインターネットでいつでも安全にできる」(5位)(自宅のパソコンからパスポートの申請を行う。)、「外出時にスロープやエレベーターなどの安全な通路が案内されたり、緊急時には自動的に近くの施設に連絡があるなど、高齢者や要介護者でも安心して外出できる」(7位)(駅等の外出先で、安心して歩ける経路を情報端末で確認しながら歩く。)等である(図表[4])。

 
図表[4] 高齢者の期待するユビキタスネットワークサービスのイメージ(一例)

図表[4] 高齢者の期待するユビキタスネットワークサービスのイメージ(一例)

4 若者の期待するユビキタスネットワークサービス

 平成15年末には、若者の中心的年代である13歳から19歳のインターネット利用率は91.6%と年代別で最も高くなっている。また、平成14年度末には、全国の99.5%の公立小中高等学校等がインターネットに接続し、平成14年度から小中学校で、15年度から高等学校で情報に関する科目の授業が始まるなど、若者は若年の頃から情報通信ネットワークに積極的に触れ、様々な情報通信ネットワーク利用形態にすぐに順応可能であることから、便利で感動を与えてくれるユビキタスネットワークサービスの利用意向が高いと考えられる。
 若者において他の属性に比べて特徴的に利用意向の高いユビキタスネットワークサービスは、「安価なシール等を貼っておくことにより、自分の持ち物を紛失した場合にすぐにどこにあるか調べることができる」(1位)(電車に荷物を置き忘れたが、携帯端末を使って、荷物に付けられた電子タグの位置情報を検索することにより、すぐに所在が確認できる。)、「映画館やコンサート会場の入口や、料金所や駅の改札、駐車場のゲート等において、ICカードや携帯電話等をかざすだけで、手間をかけずに通過できる」(3位)(コンサート会場の入口で、携帯電話をかざしながらスムーズに入場ができ、座席までの案内が表示され誘導される。)、「あらかじめ登録しておくと、移動中に、自分の近くにあるお店の広告や割引券等の情報を携帯電話等で入手できる」(9位)(事前に登録しておいた店の前を歩いていると、季節限定の商品が紹介されるとともに、割引券が携帯端末に届く。)、「外出時でも携帯電話等でテレビ放送を見ることができる」(13位)(電車で移動中に携帯電話を使ってデジタル放送を受信し、テレビでサッカーの試合を見ることができる。)等である(図表[5])。

 
図表[5] 若者の期待するユビキタスネットワークサービスのイメージ(一例)

図表[5] 若者の期待するユビキタスネットワークサービスのイメージ(一例)


(注1) 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成14年1月推計)」における中位推計による
(注2) 厚生労働省「平成14年簡易生命表」による

 

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