平成16年版 情報通信白書

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第1章 特集 「世界に拡がるユビキタスネットワーク社会の構築」

1 企業のネットワーク活用の現状

(1)企業内・企業間業務における活用

企業内・企業間における高度ネットワーク活用も進みつつある

1 高度情報通信ネットワーク環境の企業における活用

 ブロードバンド・モバイルネットワーク(注1)が低廉化・高速化し、各種端末の低廉化・高機能化が進展するに伴い、日本の企業の情報通信インフラ整備も着実に進んでおり、単なる普及の段階から、更なる高度化の段階へと移行しつつある。
 総務省「通信利用動向調査」によれば、事業所におけるインターネット普及率は、平成10年には19.2%であったのが、平成15年末には82.6%と4倍以上になった(1-2-1(1)図表[2]参照)。ブロードバンド回線の低廉化・高速化は、事業所のブロードバンド普及にも影響を及ぼしており、平成15年末にはインターネットを利用している事業所のうち、ブロードバンド回線(注2)を導入している事業所の比率を合計すると、42.7%(対前年比21.0ポイント増)に達している(図表[1])。

 
図表[1] 事業所におけるインターネットアクセス回線の回線別利用率の推移

図表[1] 事業所におけるインターネットアクセス回線の回線別利用率の推移
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 さらに、企業間通信網の構築状況においても、平成15年末には全企業の59.3%(対前年比4.9ポイント増)が企業間通信網を構築(注3)している。特に全社的に構築している企業が34.2%(対前年比11.5ポイント増)と大きく伸びており、企業間通信網は単なる普及の段階を越えて、より深い活用が進んでいることがうかがわれる(図表[2])。

 
図表[2] 企業間通信網の構築状況の推移

図表[2] 企業間通信網の構築状況の推移
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 ブロードバンド・モバイルネットワークは高度情報通信ネットワーク環境の一つであるが、近年、電子タグ・非接触型ICカードや、新たにネットワーク対応した機器等、新しい端末・機器・ツール(以下、ユビキタスツールとする。)の活用も実用化されつつあり、実証実験等も盛んに行われている。

 主に事業者を顧客とする企業等(注4)(以下、事業者向け企業とする。)におけるユビキタスツールを活用したシステム/サービスの利用状況をみると、「新たに通信機能を備えた機器を利用するシステム/サービス」を7.9%の事業者向け企業が導入しているほか、「非接触型ICカードを利用するシステム/サービス」が3.9%と、現時点では低い利用率にとどまっているものの、多くの企業が今後の活用に関心を寄せている(図表[3])。利用の目的としては、非接触型ICカードは認証や履歴情報の追跡・管理等に、電子タグは履歴情報の追跡・管理や位置情報把握等に、新たに通信機能を備えた機器は無人化・自動化等のオートメーションや情報の通知・提供を中心に活用又は活用の検討が進められている(図表[4])。

 
図表[3] ユビキタスツールを利用したシステム/サービスの導入状況

図表[3] ユビキタスツールを利用したシステム/サービスの導入状況
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図表[4] ユビキタスツールを利用したシステム/サービスの利用用途(複数回答)※

図表[4] ユビキタスツールを利用したシステム/サービスの利用用途(複数回答)※
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 高度情報通信ネットワーク環境の業務別の活用状況では、モバイルネットワークは情報収集・共有やコミュニケーション、在庫管理、販売促進といった業務での活用が進行中であり、携帯端末の特性をよく活かせる部分から導入が進んでいる。また、ユビキタスツールについては、まだほとんど導入が進んでいないものの、在庫管理、物流・サービス提供といった分野から導入又は導入の検討が始まっており、関心を寄せる企業も多い(図表[5])。

 
図表[5] 高度情報通信ネットワーク環境の業務別導入状況※

図表[5] 高度情報通信ネットワーク環境の業務別導入状況※
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2 高度情報通信ネットワーク環境が企業に与えているメリット

 高度情報通信ネットワーク環境は、そのネットワーク環境を活用している多くの企業に対してメリットを与えている。例えば、ブロードバンド、モバイルネットワークを活用している企業の70%以上が、ブロードバンド・モバイルネットワークの利用によりメリットがあると感じている。また、ユビキタスツールについても、50%近くの企業がメリットを感じている(図表[6])。

 
図表[6] 高度情報通信ネットワーク環境が企業間・内業務に与えるメリットの有無

図表[6] 高度情報通信ネットワーク環境が企業間・内業務に与えるメリットの有無※
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 メリットの内容としては、どのネットワーク環境も業務スピードの向上には高いメリットを感じているほか、ブロードバンドについては、「ブロードバンドによって初めて情報通信システムが導入可能になった業務分野がある」と回答した企業が、他の情報通信ネットワーク環境よりも相対的に高いなど、ネットワークの特性によってメリットの内容が異なっている。
 特に、ユビキタスツールの導入メリットとして、業務コスト削減、従業員の労力軽減に加えて、経営分析・戦略立案の高度化、顧客満足の向上、取引先との協業の促進といった高付加価値に関する項目について、ブロードバンドやモバイルネットワークよりも導入するメリットがあるとする企業の比率が高い(図表[7])。

 
図表[7] 高度情報通信ネットワーク環境が企業間・内業務に与えるメリットの内容(複数回答)

図表[7] 高度情報通信ネットワーク環境が企業間・内業務に与えるメリットの内容(複数回答)※
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(注1)本節におけるモバイルネットワークとは、携帯電話・携帯情報端末・ノートパソコン等の各種携帯情報通信端末を活用した情報通信ネットワークを指す
(注2)光ファイバ、DSL、ケーブルインターネット及び無線(FWA等)
(注3)全社的あるいは一部の事業所又は部門で構築
(注4)「企業のユビキタスネットワーク利用動向調査」で行ったアンケートは、企業のほか、病院等の非営利団体も対象としている

 

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