平成16年版 情報通信白書

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第1章 特集 「世界に拡がるユビキタスネットワーク社会の構築」

3 ユビキタスネットワークが日本経済に与える影響

(1)進展する高度情報通信ネットワーク環境と市場の動向

高度情報通信ネットワーク環境の進展とともに多様な市場が活性化

1 進展する高度情報通信ネットワーク環境と各種ビジネス・サービスの動向

 ここ数年のブロードバンド・モバイルネットワークの急速な普及や、情報通信技術の高度化を背景に、高度情報通信ネットワーク環境を活用した様々なビジネス・サービス市場が成長している。また、高度情報通信ネットワーク環境の基盤となる高性能な情報通信関連機器の市場も急拡大を遂げている。

(1)ブロードバンドの普及に伴う電子商取引等の活性化

 情報通信インフラの高度化・低廉化により、平成15年末には自宅のパソコンからインターネットを利用している世帯の47.8%がブロードバンド回線を利用している(1-1-1(1)図表[2]参照)。生活の基盤として定着したインターネットを活用して、あらゆる業種の企業がインターネットビジネスを本格化させ、売上を拡大させている。
 消費者向け(B2C)の電子商取引の市場規模は、平成15年には1兆9,117億円(対前年比20.5%増)、事業者向け(B2B)の電子商取引の市場規模は77兆4,309億円(同67.2%増)となっている(図表[1]、[2])。また、ブロードバンドの普及により、インターネットコンテンツ市場も順調に拡大しつつあり、平成15年における個人向けパソコンインターネットコンテンツの市場規模は14年の1.75倍になっていると推計される(図表[5])。インターネットによる株式取引の売買代金は、平成15年度下半期には50.0兆円(対前年同期比3.5倍)、証券会社による株式委託取引総額の21.6%(同8.9ポイント増)を占めており、インターネットを通じた金融取引も年々盛んになってきている(図表[3])。

 
図表[1] 消費者向け電子商取引市場(B2Ceコマース市場)の推移

図表[1] 消費者向け電子商取引市場(B2Ceコマース市場)の推移
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図表[2] 事業者向け電子商取引市場(B2Beコマース市場)の推移

図表[2] 事業者向け電子商取引市場(B2Beコマース市場)の推移
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図表[3] インターネットによる株式取引額の推移

図表[3] インターネットによる株式取引額の推移
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(2)情報通信機器の小型化、携帯端末を活用した電子商取引等の進展

 従来、インターネットは、家庭のデスクトップ型パソコンから利用されることが多かったが、ノートパソコンの高性能化・低価格化により、パソコン市場におけるノートパソコンの比率が上昇している。パソコンの国内向け出荷台数に占めるノートパソコンの比率は年々増加する傾向にあり、平成13年には50%を超え、15年には55%となった(図表[4])。

 
図表[4] 国内向けのパソコン出荷台数の推移

図表[4] 国内向けのパソコン出荷台数の推移
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 また、携帯電話・PHS向けのコンテンツの充実、携帯端末の高機能化により、携帯電話端末向けのインターネットコンテンツ市場が拡大している。平成15年の携帯電話を利用したインターネットコンテンツの市場規模は14年の1.37倍に増加していると推計される(図表[5])。

 
図表[5] インターネットコンテンツ市場の推移(平成13年を100として指数化)

図表[5] インターネットコンテンツ市場の推移(平成13年を100として指数化)
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(3)高度な技術を生かした情報通信関連機器の急速な普及・売上拡大

 昨今の情報通信技術の進展により、高性能な情報通信関連機器が急速に普及している。こうした動きは、高精細・高音質なデジタル放送や各種デジタルコンテンツの活用を促進するとともに、家電・機器・端末同士がネットワークでつながることによって様々なコンテンツ・サービスがあらゆる場所・端末によって利用可能となるユビキタスネットワーク環境の基盤を形成しつつある。
 例えば、DVDビデオの国内出荷台数はビデオテープレコーダーを逆転し、平成15年には520万台(対前年比54.0%増)となった(図表[6])。また、液晶カラーテレビ・プラズマディスプレイテレビ(PDPテレビ)を合計した薄型テレビの国内出荷台数は、平成15年に177万台(対前年比47.7%増)となり急速に販売台数が拡大している(図表[7])。平成15年6月からは地上デジタル放送対応テレビも販売されており、地上デジタル放送が開始された同年12月までの約半年間で44万台が出荷され、売上も好調である。携帯電話も、高精細な付属カメラや、第3世代移動通信システム対応等による高機能化が進んでおり、対前年同期比で増加の傾向にある(図表[8])。

 
図表[6] DVDビデオ及びビデオテープレコーダー(VTR)の国内出荷台数の推移

図表[6] DVDビデオ及びビデオテープレコーダー(VTR)の国内出荷台数の推移
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図表[7] 液晶カラーテレビ・PDPテレビの国内出荷台数の推移

図表[7] 液晶カラーテレビ・PDPテレビの国内出荷台数の推移
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図表[8] 携帯電話の国内出荷台数の推移

図表[8] 携帯電話の国内出荷台数の推移
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 日本のメーカーが強い競争力を有している高性能な製品は(1-1-2図表[1]参照)、国内のみならず海外での需要も大きく、その輸出金額も増大しつつある。ブラウン管以外の放送用カラーテレビの輸出単価・金額の推移を見ると、液晶カラーテレビやPDPテレビを含む薄型テレビの影響により、ここ数年で輸出単価・金額ともに増大しつつある(図表[9])。

 
図表[9] カラーテレビ(ブラウン管除く、放送用のもの)の輸出単価・金額の推移(平成13年第1四半期を100として指数化)

図表[9] カラーテレビ(ブラウン管除く、放送用のもの)の輸出単価・金額の推移(平成13年第1四半期を100として指数化)
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2 高度情報通信ネットワーク環境の進展と企業業績・日本経済の復調

 高性能な情報通信関連機器の売上の増加や、事業の再構築等の企業努力等により、企業の株価・業績に明るい動きが見られるようになった。株価について言えば、通信業・電気機器メーカーの株価は、平成12年初頭のITバブルの崩壊後、15年の3〜4月まで下落を続けたが、その後反転しつつある(図表[10])。また、主な通信業・電気機器メーカーは、平成15年度決算において対前年度比で増収・増益となった(資料1-3-3参照)。

 
図表[10] 我が国における株価指数の推移(平成14年4月を100として指数化)

図表[10] 我が国における株価指数の推移※(平成14年4月を100として指数化)

 高性能な情報通信関連機器等の市場の活性化、設備投資の拡大、輸出の増大等に支えられ、日本の景気は着実に回復しつつある。実質GDP成長率も好転し、平成15年(2003年)には3年ぶりに年間を通じてプラス成長を達成した(図表[11])。

 
図表[11] 日米における実質GDP成長率の推移(前期比:季節調整済み)

図表[11] 日米における実質GDP成長率の推移(前期比:季節調整済み)
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3 高度情報通信ネットワーク環境の発展と今後の市場の展望

 高度情報通信ネットワーク環境の発展に伴う各種市場の拡大は、情報通信インフラの形成、情報通信関連需要の増大、各種企業による新規製品・サービス提供という好循環が、高度情報通信ネットワーク環境進展の潮流の中で生まれる一例としてとらえることができる。
 ネットワーク環境において、日本は世界で最も低廉なブロードバンド環境が実現しており、また、高機能な第3世代携帯電話において、日本は世界をリードしている。さらに、高性能な情報通信関連機器の製造技術において、日本企業は極めて強い技術力を有しており、各機器・部品市場において大きな世界シェアを占めている(図表[12])。こうしたネットワーク環境・技術力を背景に、高度情報通信ネットワーク環境は、これからも引き続き進展していく見通しである。

 
図表[12] 日本企業の情報通信関連部品・機器における世界シェア(出荷ベース、2002年)

図表[12] 日本企業の情報通信関連部品※・機器における世界シェア(出荷ベース、2002年)
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 また、平成15年において、インターネット関連消費やネットショッピングに対する支出額は対前年比で30〜40%以上増加しており、ネットワーク・デジタル機器関連消費や携帯電話関連消費も10%以上の増加となっている(図表[13])。こうした高度情報通信ネットワーク環境を活用して提供される新しいサービス・商品に対して、消費者は強い需要を示しており、今後もこれらの分野を中心に大きな需要が生まれる可能性があることを示唆している。

 
図表[13] 高度情報通信ネットワーク関連サービス・機器に対する消費額の推移(世帯平均、14年1〜3月平均を100として指数化)

図表[13] 高度情報通信ネットワーク関連サービス・機器に対する消費額※の推移(世帯平均、14年1〜3月平均を100として指数化) 資料編1-3-4参照
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 さらに、企業による先進的な商品・サービスの提供や旺盛な消費者ニーズの下、カメラ付き携帯電話、携帯インターネット、非接触型ICカードによる交通機関の自動改札サービス等、日本・日本企業から生まれた数々の先進的な情報通信関連商品・サービスが、世界でも拡がりを見せている(1-2-2(2)参照)。これは、世界でもトップクラスの高度情報通信ネットワーク環境を活用して、我が国のみならず世界中で活用される新たな商品・サービスが生まれる土壌が、我が国に形成されつつあることを示している。
 今後も、高度なネットワーク環境を活用し、消費者のニーズをとらえた新しいビジネス・サービス・製品が、各種市場で拡大し、日本経済を下支えするとともに、世界中で活用されることが期待される。

関連ページ:電子商取引(B2C)市場規模の推計方法については、資料1-3-1参照
関連ページ:インターネットコンテンツ市場の推計方法とその推移については、資料1-3-2参照

 

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