平成16年版 情報通信白書

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第1章 特集 「世界に拡がるユビキタスネットワーク社会の構築」

(5)デジタル・ディバイドの解消に向けて

過疎地域等におけるブロードバンドサービスの普及は遅れている

1 ブロードバンドサービスの地域格差の現状

 ユビキタスネットワーク社会の実現に向けては、どこでもブロードバンドサービスが利用できる環境が整備されることが重要であるが、現状では、都市部を中心に整備が進展しており、採算性等の問題から民間事業者の投資が期待しにくい地域には進展しておらず、地域間の格差が存在している。
 ブロードバンドサービスの提供状況を、サービスが少なくともその地域の一部で提供されている市町村数でみると、平成15年度末にいずれかのブロードバンドサービスが提供されている市町村は、全国では83.3%となっているが、過疎地域(注1)では、60.9%となっている。また、市と町村でみると、市では100%であるが、町村では78.3%となっている。
 さらに、主なブロードバンドサービス別でみれば、ADSLについては、市では99.9%であるが、町村では74.6%、過疎地域では55.4%となっており、FTTHについては、市では70.8%であるが、町村では8.4%、過疎地域では1.8%となっている。これらから、過疎地域等の条件不利地域におけるブロードバンドサービスの普及は都市部より遅れていることが分かる(図表[1])。

 
図表[1] ブロードバンドサービスの普及状況(平成15年度末現在)

図表[1] ブロードバンドサービスの普及状況(平成15年度末現在)
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2 ブロードバンド利用格差の現状

 ユビキタスネットワーク社会の実現に向けては、インフラの地域格差の縮小に加え、ネットワークの利用格差が縮小されることが望まれる。平成14年末から15年末にかけてブロードバンド利用率(注2)は、世代、性、都市規模、年収の各属性で増加したが、依然として属性による格差が見られる。
 また、自宅のパソコンからのインターネット利用者におけるブロードバンドの利用比率(ブロードバンド化率)(注3)でも、世代、性、都市規模、世帯年収の格差が存在する。その中でも、49歳以下のブロードバンド利用が急速に増加したため、インターネット利用においては差が縮小してきた世代による利用格差は、ブロードバンド利用においては広がる傾向にある。他方、都市規模による利用格差は、平成15年末には特別区・政令指定都市・県庁所在地と町村における利用率の差は14.4ポイントまで縮小している(図表[2])。

 
図表[2] 属性別ブロードバンド利用率、自宅のパソコンからのインターネット利用者におけるブロードバンド比率の推移

図表[2] 属性別ブロードバンド利用率、自宅のパソコンからのインターネット利用者におけるブロードバンド比率の推移
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3 インターネット利用格差の現状

 平成15年末のインターネット利用率(注4)は、利用者の世代、性、都市規模、年収のすべての属性で平成13年末、14年末と比べて上昇しているが、都市規模による格差は平成14年に比べ開いている。
 世代別のインターネット利用率においては、若年層と高齢層の利用率の格差が大きい。特に60歳未満はいずれの世代も60%以上の利用率であるのに対し、60歳以上では21.6%と利用率は大幅に減少する。
 性別のインターネット利用率においては、依然として男性の方が女性よりもインターネット利用率が高いが、利用率の差は10%を割るまで格差が縮小している。また、都市規模別のインターネット利用率は、すべての地域で平成14年末と比べて利用率が上昇しているが、都市規模が小さくなるにつれて、利用率が低くなっている。
 収入別のインターネット利用率(世帯の年収で世帯構成員の利用率を比較)については、年収の多い層ほど利用率が高い。前年と比較すると、どの年収区分でも利用率が上昇している。特に低年収層で大きく上昇したため、年収による格差は縮小し、すべての層で利用率が5割を超えた(図表[3])。

 
図表[3] 属性別インターネット利用率の推移

図表[3] 属性別インターネット利用率の推移
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4 インターネット利用格差の要因

 インターネットの利用には、世代、性、都市規模、年収の各要因により格差が存在している。この4つの要因が、インターネット利用/未利用に与える影響の大きさを比較するために、分析を行った(注5)
 その結果、インターネットの利用/未利用に最も大きな影響を及ぼしている要因は、世代(注6)である。特に「年齢が13〜19歳」(影響度0.81)、「年齢が20〜29歳」(影響度0.77)、「年齢が30〜39歳」(影響度0.77)という属性はインターネット利用に最も大きな影響を及ぼしており、若年層のインターネット利用率が高くなっている。逆に、インターネット利用に最も大きなマイナスの影響を与えているのは、「年齢が60歳以上」(影響度-1.94)という属性であり、高齢になるほど、インターネットを利用しない傾向にある。このことから、我が国におけるインターネット利用格差の解消のためには、世代間の格差の解消が重要であることが示されている(図表[4])。

 
図表[4] 各属性がインターネット利用/未利用に与える影響度

図表[4] 各属性がインターネット利用/未利用に与える影響度
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5 携帯インターネット利用格差の現状

 平成15年末の携帯インターネット利用率(注7)は、利用者の世代、性、都市規模、年収のほぼすべての属性で平成14年末と比べて上昇しているが、依然として格差は残っている。
 その中でも特に世代別の携帯インターネット利用率における若年層と高齢層の利用率の格差が大きい。13歳から39歳では5割以上の利用率があるのに対し、50歳から59歳では22.3%、60歳以上では5.1%と年齢が上昇するとともに利用率は大幅に減少する。
 性別及び都市規模別の携帯インターネット利用率は、都市規模が小さくなるにつれて利用率が低く、男性よりも女性が低くなっているが、利用格差はインターネット利用の格差やブロードバンド利用の格差と比べると少ない。
 収入別の携帯インターネット利用率(世帯の年収で世帯構成員の利用率を比較)については、平成15年末においても年収の多い層ほど利用率が高い傾向があるが、平成14年末と比較すると、特に低年収層で大きく増加したため、年収による格差は縮小している(図表[5])。

 
図表[5] 属性別携帯インターネット利用率の推移

図表[5] 属性別携帯インターネット利用率の推移
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6 高齢者・障害者の情報通信利用とバリアフリー化

 ユビキタスネットワーク社会のメリットを十分に享受するためには、高齢者や障害者を含め誰もが自由に情報の発信やアクセスが可能な社会を構築していく必要がある。こうした観点から、高齢者や障害のある人の利用に配慮した情報通信機器・システムの研究開発・普及、社会環境の整備(ユニバーサルデザイン)が求められている。
 例えば、電話機能やメール機能等頻繁に使用する機能だけを大きな文字で表示し、これまで携帯電話の操作に不安を感じてきた利用者に配慮された携帯電話機が発売されるなど、誰でも使いやすい情報通信機器への取組が進みつつある。平成15年12月には、通常のスピーカーとは別に、骨伝導方式のスピーカーを搭載した携帯電話が実用化された。骨伝導方式は、人間が鼓膜以外から音を感じられる特性を利用した方式で、音の振動を頭がい骨等を通して聴覚器官に伝えるため、聴覚に障害のある人の一部が通話を行うことが可能となった(注8)(図表[6])。

 
図表[6] 骨伝導方式の携帯電話の聞こえる仕組み

図表[6] 骨伝導方式の携帯電話の聞こえる仕組み

 また、聴覚や言語に障害のある人が、携帯電話のメール機能やインターネット機能を使い、文字で警察に110番通報できる仕組みの構築が全国に広まっている。例えば、平成16年1月には、警視庁が携帯電話からインターネットを通じて文字で110番通報ができる「警視庁110番サイト」を開設した。このホームページは、聴覚、言語に障害があり通話ができない人を対象とし、これらの人が事件や事故にあったとき、携帯電話から文字による通報が可能であり、通報者は、事件・事故の場所、内容、通報者の名前等を入力した後、携帯インターネットの画面上で警視庁通信指令本部と対話(チャット)することができる(図表[7])。

 
図表[7] 警視庁110番サイトのトップページ

図表[7] 警視庁110番サイトのトップページ
※ 警視庁110番サイト (言語や聴覚に障害のある人専用サイト)

 さらに、障害者の携帯電話の利用も増えてきており、大手携帯電話事業者の販売店では、平成15年2月から、販売店と手話等の支援を行う企業をテレビ電話で結び、聴覚に障害のある人と販売店の販売員との会話を手話とパソコン画面の文字出力により支援するサービスを開始している。これにより、聴覚に障害のある人が、携帯の購入から使い方の説明、修理のアフターサービス等の説明をより理解できるようになっている。


(注1)過疎地域とは、「過疎地域自立促進特別措置法」(過疎法)第2条第2項の規定により公示された町村を指す
(注2)ここでのブロードバンド利用率は、属性ごとの調査対象者に占めるブロードバンド利用者の比率
(注3)自宅のパソコンからのインターネット利用者におけるブロードバンド利用比率(ブロードバンド化率)とは、属性ごとの自宅のパソコンからのインターネット利用者に占めるブロードバンド利用者の比率
(注4)ここでのインターネット利用率は、属性ごとの調査対象者に占めるインターネット利用率(利用場所、形態は問わない。)
(注5)上記は、インターネット利用/未利用について、要因別の属性を同一基準で分析するため、インターネット利用・非利用を被説明(外的基準)変数とし、「世代別」、「性別」、「都市規模別」及び「世帯年収別」の4要因21属性(各属性450サンプル)を説明変数として、数量化II類で解析した
(注6)影響度の最大値と最小値との差が他の要因(性、都市規模、世帯年収)と比較して最も大きい(2.75)ことから説明される
(注7)ここでの携帯インターネット利用率は、属性ごとの調査対象者に占める携帯インターネット利用者の比率
(注8)聴覚障害には様々な種類があり、聞こえ方には個人差があるため、聴覚に障害のあるすべての人が通話可能というわけではない

関連ページ:過疎地域等におけるネットワークインフラの整備については、3-7-3(1)参照
関連ページ:情報バリアフリー化の推進については、3-7-3(3)参照

 

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