平成16年版 情報通信白書

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第3章 情報通信政策の動向

3 電波の有効利用政策の推進

世界最先端のワイヤレスブロードバンド環境の構築に向けて

1 電波開放戦略の推進

 我が国の経済が更に成長し、豊かな国民生活を実現するためには、我が国の社会経済システムの活性化を進めていくことが重要であり、特に、他産業を牽引している情報通信分野においては、無線を活用した新たなビジネスを開花させるため、広帯域周波数をニーズの高い分野に大胆かつ迅速に開放し、事業者の自由な事業展開を可能にすることが課題となっている。
 このような状況の中で、総務省は、平成15年7月に、今後の社会経済における電波の役割、電波利用の将来展望、電波技術の将来動向、今後の周波数需要予測等を展望した総合的な電波行政の在り方について、情報通信審議会より答申(「電波政策ビジョン」)を受けた。
 総務省では、この答申を踏まえ、世界最先端のワイヤレスブロードバンド環境の構築を実現し、強じんで活力に満ちた日本経済とするために、[1]周波数割当ての抜本的見直し、[2]電波再配分のための給付金制度の導入、[3]電波ビジネスの自由な事業展開を推進するために現行の免許制度に代えた登録制度の一部導入等を主な柱とした「電波開放戦略」を推進している(図表[1])。

 
図表[1] 電波開放戦略

図表[1] 電波開放戦略

2 「周波数の再編方針」の策定

 「電波開放戦略」を推進し、ワイヤレスブロードバンド環境を構築するにあたっては、その中核を担う移動通信や無線LAN等に必要な周波数を確保することが不可欠となる。このため、総務省では、周波数再配分の基本的な考え方について、平成15年10月に「周波数の再編方針」を策定・公表した。また、実際に電波の再配分を実施する場合、実際の電波の利用状況を把握した上で、電波の迅速かつ円滑な再配分を実施することが必要である。このため、総務省では、平成14年の電波法の改正により、電波の利用状況の調査・公表・評価する制度を導入しており、無線局の使用実態、通信量等の利用状況について調査を行っている。電波の再配分の対象となる周波数帯は、同調査の評価結果に基づき、免許人の経済的影響等について、二次調査を実施し、当該免許人からサービスの提供を受けている利用者への影響も配慮した上で決定される。

3 電波再配分のための給付金制度の導入

 電波の再配分を実施する場合、既存の電波利用者にとっては、過去に投資して取得・建設した無線設備が使えなくなるほか、撤去費用、新規設備の取得等、経済的な費用負担が生じるおそれがある。このため、電波の迅速な再配分を円滑化する観点から、周波数の使用期限が早期に到来する既存の電波利用者に対して、当該使用期限の早期の到来により通常生じる費用を給付金として支給する制度を導入するため、平成16年2月に電波法の改正案を第159回国会に提出し、同法は同年5月に成立・公布された(図表[2])。

 
図表[2] 電波再配分のための給付金制度の導入

図表[2] 電波再配分のための給付金制度の導入

 既存の電波利用者に対し給付金を支給する具体的な予定としては、平成15年5月に公表した電波の利用状況調査の評価結果を踏まえ、平成17年中に大都市圏で高出力の屋外無線LANが自由に利用できる環境を整備するため、4.9〜5.0GHz(電気通信業務用固定局が使用している周波数)、100MHz幅を、関東・東海・近畿圏において、平成19年(2007年)11月末とされている使用期限を2年間前倒しするため、既存の電波利用者に対して給付金を支給する予定である。

4 無線局の登録制度の導入

 我が国においては、ADSL等有線系ネットワークを中心として約1,500万(平成15年度末)のブロードバンド契約者が存在しており、我が国のブロードバンド環境は急速に拡大している。このような状況の下、今後、「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」つながるユビキタスネットワーク社会を実現していくためには、無線によるブロードバンド環境の構築が必要不可欠となっている。
 このため、有限かつ稀少な電波の有効利用を更に進め、混信等の防止等電波利用の秩序を維持し、電波ビジネスの自由な事業展開を図って電波の多重利用を推進するための方策を講ずることが必要である。このような観点から、高出力の屋外無線LAN等共同利用型の無線システムについて、電波の秩序を維持しつつ規制緩和を行い、現行の「事前チェック型」の免許制度に代え、「事後チェック型」の登録制度を導入するため、平成16年2月に電波法の改正案を第159回国会に提出し、同法は同年5月に成立・公布された。
 この登録制度の導入により、これまで基地局等1局ごとに詳細情報に基づき免許(申請から免許までおおむね2〜3週間程度)を与えていたものが、同一使用形態の基地局等をまとめて登録(申請から登録まで最短1日)可能になるほか、登録に基づき個々の基地局等の自由な設置(詳細情報を事後届出)が可能となるなど、電波の自由な利用を促進し、無線局開設の手続きの大幅な迅速化・簡素化が期待される(図表[3])。

 
図表[3] 無線局登録制度の導入

図表[3] 無線局登録制度の導入

5 電波利用料制度の見直し

 今日、電波の利用は様々な分野に及び、増大かつ多様化の一途をたどっている。円滑な電波利用を確保するためには、[1]有限な資源である周波数のひっ追への対応、[2]電波利用の拡大に伴う行政事務量の増加への対応等の課題に対して、早急かつ的確な対処が必要となってきている。
 総務省では、混信や妨害のない安定的な電波環境を維持するとともに、免許事務の電子化や能率的な電波利用の促進により無線局の急増に対処するなど電波の適正な利用のより一層の確保を目的に、無線局全体のための共益的な行政事務の費用を当該事務の受益者である免許人全体で負担する電波利用料制度を、平成5年4月から導入している(図表[4])。
 電波利用料制度については、制度の導入から既に10年以上が経過したが、導入時と比べて、携帯電話や無線LAN等電波を利用したビジネスの発展や電波利用料の負担割合の変化等、電波利用料を巡る諸事情も大きく変化してきており、総務省では、電波有効利用政策研究会において、電波利用料制度の在り方について、電波の経済的価値を反映することの是非も含めた多面的な観点から総合的に見直すための検討を進めている。

 
図表[4] 電波利用料制度の概要

図表[4] 電波利用料制度の概要
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関連ページ:移動通信システムの高度化に向けた取組については、3-3-1(6)参照
関連ページ:無線インターネットの高度化については、3-3-1(7)参照
関連ページ:無線局数については、2-2-5(3)参照

 

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