平成16年版 情報通信白書

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第3章 情報通信政策の動向

(4)防災分野におけるIT化の推進・高度化

消防防災分野における情報化の推進

 大規模災害等の非常事態において、迅速かつ的確な災害応急活動を実施するためには、情報の収集・伝達が必要不可欠である。そこで、総務省では、「e-Japan重点計画-2003」等を踏まえ、情報通信技術の急速な進展に対応して、高度な消防防災分野の情報通信ネットワークシステムの構築に取り組んでいる(図表)。

 
図表 消防防災情報通信ネットワークの概要

図表 消防防災情報通信ネットワークの概要

1 ネットワークインフラの整備

 災害時等において、迅速かつ的確に情報の収集・伝達を行うために、総務省では、都道府県との間に国土交通省のマイクロ回線を活用した地上系通信網である消防防災無線を整備している。一方、都道府県及び市町村も、それぞれ都道府県防災行政無線、市町村防災行政無線を有しており、各々がこれらの地上系無線を活用することにより、相互に必要な情報のやり取りを行っている。しかしながら、大規模災害等の発生に備え、通信の多ルート化が必要であることから、総務省及び各地方公共団体においては、(財)自治体衛星通信機構が運用を行う衛星系通信網である地域衛星通信ネットワークも活用しているところである。
 今後、総務省及び地方公共団体において、これら地上系無線網、衛星系通信網の更なる整備促進を行うとともに、音声及びファクシミリ中心の情報伝達のみならず、多様なアプリケーションに対応するべく、これら関係無線の高度化・高機能化を推進していく。
 具体的には、市町村で整備している市町村防災行政無線(同報系)のデジタル化に対して必要な支援を行うとともに、地域衛星通信ネットワークにつき、映像のデジタル化・多チャンネル化及び高速データ伝送の実現に向け、第二世代化を推進していく。
 また、各消防本部と消防・救急隊員間又は消防・救急隊員間の連絡を行うための無線通信網である消防救急無線については、秘匿性の確保、高度なアプリケーションの実現、周波数の有効利用等のため、各消防本部においてデジタル化に取り組むこととしている。そこで、総務省では、全国の消防本部において円滑かつ速やかな移行を進められるよう、平成16年度から必要な支援を行っていく予定である。

2 情報システムの活用による防災情報の共有化の推進

 総務省では、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、各種の情報システムを整備・活用することにより、必要な情報を地方公共団体との間で共有している。具体的には、消防防災に係る情報をデータベース化して地方公共団体との間で共有化するための「消防庁防災情報システム」や、地震発生時の被害を推計するための「簡易型地震被害想定システム」、緊急消防援助隊の広域応援活動を支援するための「緊急支援情報システム」を整備し、地方公共団体からの接続を進めることにより、情報の共有化をしているところである。
 平成15年度は、これらシステムへの接続に、インターネットが活用できるように必要な措置を講じているところである。また、都道府県において独自に整備している防災関係の情報を集約したシステムと消防庁防災情報システムとの間で、データの連携を図るとともに、消防庁防災情報システムを介して、映像情報を共有できるようシステム構築を行っている。さらに、今後は、新しく独自にシステムを整備する都道府県との間でも情報の共有化が図れるよう、必要な部分について標準仕様を策定するとともに、システムを有しない都道府県との間でも情報共有が可能となるように、有効な方策を検討していく予定である。
 また、平成15年度においては、消防本部からの火災報告等をオンラインで報告できるシステムについて、運用を開始(平成16年1月)したところである。

3 情報通信技術の進展への対応

 これまで、携帯電話等からの119番通報については、地域の消防本部の中で代表となる消防本部で受信し、管轄の消防本部へと転送する代表消防本部方式により運用を行ってきた。しかしながら、近年の携帯電話の急速な普及、それに伴う携帯電話からの119番通報の増加を踏まえ、利用者の利便性の向上のためには、通報者がいる場所を管轄する消防本部において直接受信を可能とすることが不可欠となってきた。そこで、総務省では、平成12年度から携帯電話等を用いた119番通報のあり方検討懇談会を開催し、必要な事項の検討を実施してきている。平成15年度には、直接受信のための技術的な仕様を策定するとともに、これを実現化するための方策について検討し、今後は、緊急時要援護者のため、メール等からの119番通報への対応について議論を行っていく予定である。
 また、津波や集中豪雨等の際に、住民が緊急に避難行動を取ることを可能とするためには、気象庁が発表する津波警報や気象警報等の緊急防災情報について、地方公共団体及び住民に対して迅速かつ確実に伝達することが必要不可欠である。そこで、総務省消防庁では、地域衛星通信ネットワークと市町村防災行政無線(同報系)を有効活用して、緊急防災情報を伝達するための方策を検討しており、平成16年度においては、気象庁から受信した緊急防災情報を地域衛星通信ネットワークにより地方公共団体に伝達するシステムの構築とこれら緊急防災情報の活用システムの検討を実施する予定である。
 今後は、「e-Japan重点計画-2003」等を踏まえ、国・地方公共団体・住民間における防災情報の共有化を図っていくため、総務省では地方公共団体と連携しつつ、計画的かつ積極的に情報化を推進する予定である。特に関係無線のデジタル化を早期に効率的に実施するため、また、必要な情報システムの整備、データ連携を進めるため、必要な方策を検討していくとともに、幅広く地方公共団体への支援を行っていく。

 

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