平成16年版 情報通信白書

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第3章 情報通信政策の動向

第7節 情報通信利用者の保護

1 電気通信サービスにおける消費者行政

消費者支援策の推進と電気通信の適正利用のための対応

 近年の情報通信技術の進歩や規制緩和による電気通信事業者間の競争の進展等により、電気通信サービスの高度化、サービス内容や料金メニューの多様化が大いに進み、消費者の利便性は向上している。その一方で、消費者が、不正アクセスや迷惑通信等の電気通信の不適正利用の被害に遭うケースや、サービス内容の複雑化等に起因するトラブルに巻き込まれるケースも多くなりつつある。こうした状況の中、消費者が安心して電気通信サービスを利用できるようにするための取組、すなわち、消費者行政の強化が重要になっており、その充実が求められている。

1 消費者支援策の推進

(1)電気通信サービスの契約の適正化と広告表示の適正化

 DSL関係やIP電話関係のもの等、主に電気通信事業者と消費者との間の契約に係るトラブルの原因は、電気通信事業者からの説明がわかりにくいこと等により、消費者が電気通信サービスの内容を十分に理解できないまま契約を締結してしまうことが多いためと考えられることから、第156回国会において電気通信事業法が改正され、契約時に電気通信事業者や契約代理店が消費者にその内容を説明しなければならない旨及び電気通信事業者が消費者からの苦情・問合せを適切かつ迅速に処理しなければならない旨の説明義務が新たに設けられた。
 また、電気通信サービスは、料金メニューやサービス内容の複雑化・多様化が進んでいることから、消費者にとってよりわかりやすく誤解のない広告表示を行うため、電気通信事業者3団体((社)電気通信事業者協会、(社)テレコムサービス協会、(社)日本インターネットプロバイダー協会)により構成される電気通信サービス向上推進協議会が、平成15年12月に、「電気通信サービスの広告表示に関する自主基準」を公表した(注)

(2)消費者団体等との連携

 消費者行政の推進のためには、消費者団体等との連携を図ることも重要な課題であり、その一環として、総務省では、消費者団体や電気通信事業者団体等をメンバーとする電気通信消費者支援連絡会を平成15年1月から開催して、消費者支援の在り方について定期的に意見交換を行っている。
 電気通信消費者支援連絡会において検討してきたこれまでの主なテーマは、[1]電気通信サービスの広告表示に関する自主的な基準の在り方、[2]平成15年の改正により新たに盛り込まれた電気通信事業法の消費者保護ルールの在り方であり、前者の検討については「電気通信サービスの広告表示に関する自主基準」(上記(1))に反映され、後者の検討については、改正電気通信事業法の説明義務、苦情等適切処理義務等の関係省令等に反映されている。

(3)電気通信サービスに関する苦情・相談対応と消費者への情報提供

 総務省では、消費者相談窓口を設置し、消費者から寄せられる電気通信サービスに関する苦情・相談に対応している。また、毎年、電気通信サービスに関する注意事項をまとめた「電気通信サービスQ&A」という小冊子(パンフレット)を作成、配布しているほか、総務省ホームページにも「電気通信消費者情報コーナー」を設け消費者行政の取組を紹介している。

2 電気通信の適正利用のための対応

(1)迷惑メール

 「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」(平成14年7月施行)では、営利事業者が事前に受信者の同意を得ず広告メールを送る場合には、題名の冒頭に「未承諾広告※」、本文中に「送信者の氏名又は名称、住所、送信に用いたメールアドレス、送信拒否の通知を受けるためのメールアドレス」等を表示しなければならない旨(表示義務)及び送信拒否の通知をした者に対して広告メールを再送信してはならない旨(オプトアウト義務)等が定められており、これらの義務に違反した場合には、総務大臣による措置(是正)命令、さらに措置命令に従わないときは罰金刑が課されることとなっている。
 総務省では、迷惑メール問題の改善に向け、措置命令をはじめとする同法の執行のほか、電気通信事業者による自主的対応の促進や利用者への周知啓発に努めている(図表[1])。

 
図表[1] 携帯電話事業者による自主的対応や利用者への周知啓発の概要

図表[1] 携帯電話事業者による自主的対応や利用者への周知啓発の概要
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(2)違法・有害コンテンツ対策

[1]プロバイダ責任制限法
 インターネットの急速な普及に伴い様々な電気通信サービスの提供が可能となってきているが、その一方で、他人の権利を侵害する情報の流通も増加してきている。その対策として、平成14年5月に、インターネット上のウェブページや電子掲示板等、不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害された場合について、(ア)プロバイダ等の責任の制限(プロバイダ等の責任を制限・明確化することにより、プロバイダ等が権利侵害情報に対して適切に対応することが促される)、(イ)(被害を受けた者からの)発信者情報の開示請求権を規定する、いわゆるプロバイダ責任制限法(「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」)が施行された。総務省では、同法が適切に運用されるよう、業界団体による同法のガイドラインの策定に対する支援や周知を行ってきている。

[2]プロバイダによる自主規制の促進
 インターネット上での違法・有害情報については、(社)テレコムサービス協会が「インターネット接続サービス等に係る事業者の対応に関するガイドライン」(平成10年2月公表、平成15年5月改訂)及び「インターネット接続サービス契約約款モデル条項」(平成12年1月公表)を、また(社)電気通信事業者協会が「インターネット接続サービスの提供にあたっての指針」(平成13年3月公表)を策定し、周知に努めている。総務省では、今後とも、業界団体等による自主的取組を促すための支援を行うこととしている。

[3]フィルタリングサービスの普及・開発
 近年、モバイルインターネットが幅広い年齢層に急速に普及する一方、出会い系サイトを通じた児童買春等が社会問題となっている。現在、パソコン向けのフィルタリング機能(インターネットのウェブページのうち、特定の条件に合致する(しない)ページの閲覧を遮断すること。)は実現・普及しているが、(実際に児童買春等の問題となったケースで主に利用されていた)“モバイル”向けについては、その特性から、フィルタリング機能の実現に至っていないため、総務省では、児童の健全育成の観点から、平成16年度からモバイル端末におけるフィルタリング機能の実現に取り組んでいる(図表[2])。

 
図表[2] モバイル端末によるフィルタリング機能のイメージ図

図表[2] モバイル端末によるフィルタリング機能のイメージ図


(注)電気通信サービス向上推進協議会には、その後(社)日本ケーブルテレビ連盟が参加し、平成16年5月現在、4団体が構成員となっている

関連サイト:電気通信消費者情報コーナー(URL http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/s-jyoho.html

 

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