平成16年版 情報通信白書

2 情報セキュリティ及びプライバシー保護対策の推進

（1）情報セキュリティ対策への取組

安心して利用できるITの実現に向けて

　IT化の進展は、国民生活、経済活動に大きな恩恵をもたらす一方、社会全体の情報通信システムへの依存度を高めるため、情報通信システムへの攻撃により社会全体に重大な事態が引き起こされることもあり得る。このため、今後のIT戦略の推進にあたっては、情報セキュリティの向上が不可欠であり、総務省では以下のような情報セキュリティ対策の強化に向けた取組を行っている。

1 情報セキュリティ確保に向けた官民連携の強化

　電気通信分野はIT社会の根幹をなす重要インフラの一つであるとともに、他のあらゆるインフラの基盤となる「インフラのインフラ」に相当するものである。このため、我が国のインターネット・セキュリティを確保する上で、ネットワークインフラを提供する電気通信事業者における適切なセキュリティ対策の実施が極めて重要となる。
　情報通信ネットワークを悪用して、多様なITサービスの提供を妨げる各種セキュリティ侵害に関する情報を収集・分析し、分析結果を会員間で共有することによりネットワークの防護・連携を図るなど、インシデント（情報セキュリティ侵害事案）発生時の対応や官民連絡・連携に係る対策を進めるために、平成14年7月に業界団体3団体及び電気通信事業者7社により、インシデント情報共有・分析センター（Telecom-ISAC Japan）が設立され、平成15年3月にサービス提供を開始している。さらに、Telecom-ISAC Japanでは、インシデントの発生を早期に捉え、情報セキュリティ侵害の被害拡大を防止するため、インシデントの拡散を速やかに把握するための「広域モニタリングシステム」の構築を目指し、研究開発並びに体制整備を開始している。

2 情報セキュリティ対策に関する研究開発体制の整備、人材育成の推進等

　平成15年1月、情報セキュリティ対策に関する研究開発体制並びに極めて高度な情報セキュリティに関する知見を有する人材の育成機能をより一層充実、強化するため、独立行政法人通信総合研究所情報セキュリティセンターを設置した。さらに、同センターについては、平成16年4月、独立行政法人通信総合研究所の独立行政法人情報通信研究機構への改組に伴い、一層の体制強化が図られたところである。
　また、平成15年度から、ウイルスのネットワークへの影響の予測・分析や迅速なウイルス対策の策定が可能になる研究開発環境を整備するため、コンピュータウイルス等を収集・動態保存したデータベースとその研究のための模擬ネットワークによるテストベッドを構築し、ウイルスの発生による緊急事態に迅速に対応するための体制及び外部研究者の当該テストベッドの共同利用体制を確立する予定である。

3 「安心・安全インターネット推進協議会」の活動支援

　利用者が意識せずとも情報セキュリティが確保されたネットワーク環境の実現を目指し、平成15年12月に民間において安心・安全インターネット推進協議会が設立され、総務省もオブザーバーとして参画している。今後、総務省においては、安心・安全なインターネット環境の実現に資する基盤技術について、同協議会と連携をとりながら研究開発を実施する予定である。

4 セキュアOSに関する調査研究

　平成15年度に電子政府・電子自治体へのオープンソースOS導入の在り方の検討に資することを目的として、総務省では、オープンソースOS及び非オープンソースOSについて、セキュリティ面、運用面、コスト面等の様々な観点から、そのメリット・デメリットの客観的・中立的な評価を実施した。当該評価を通じ、あらゆる情報システムに対しても最適なOSは存在しないことから、それぞれの情報システムの構築・運用にあたって、とるべき情報セキュリティ対策の検討をシステム調達の前段階で実施するとともに、総合評価方式による調達を通じて最適なOSの選択をそれぞれのシステムごとに行うことが適当であること等が提言された。

5 不正アクセス対策

　平成12年2月に施行された「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」第7条第1項の規定に基づき、国家公安委員会、総務大臣及び経済産業大臣は、毎年少なくとも1回、不正アクセス行為の発生状況及びアクセス制御機能に関する技術の研究開発状況を公表することとし、不正アクセス行為が行われにくい環境の構築に資することとしている。
　また、平成13年11月に欧州評議会閣僚委員会において採決された「サイバー犯罪に関する条約」の批准を目指し、国際的な相互主義の下、グローバルな不正アクセス対策を講じるための不正アクセス行為の禁止等に関する法律の一部改正案を第159回国会に提出した。