平成16年版 情報通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
目次の階層をすべて開く目次の階層をすべて閉じる

第3章 情報通信政策の動向

(5)電気通信の安全・信頼性の確保

あなたの大切な通信を確実に届けるために

1 重要通信の確保

 電気通信分野では、携帯電話やIP電話等の普及に伴う通信サービスの発展や利用形態の多様化等に応じ、国、電気通信事業者及び産業界が連携して災害等の非常時に備えて重要通信を確保するための効果的な仕組みを、我が国全体として整備する必要性が高まっている。
 こうした事情を踏まえて、総務省では、平成14年4月から、電気通信事業における重要通信確保の在り方に関する研究会を開催し、平成15年7月に報告書を公表、重要通信を確保するための方策等について提言を行うと同時に、同年5月に宮城県沖で発生した地震の際、著しい輻そうが発生し携帯電話がつながりにくい状況となったこと等を踏まえ、今後早急に取り組むべき課題を取りまとめた。
 また、平成16年1月、同研究会報告書の提言等を受け、災害時等における通信確保に向け、電気通信システムの安全・信頼性確保のための事業者間連携の推進を目的に平成4年に設立された安全・信頼性協議会の場を通じた対応策の導入及び検討等の電気通信事業者の取組状況を公表した。
 具体的には、携帯電話からの110番等の緊急通報や災害関係機関の重要通信をより確実に確保する方策、災害時等の輻そう時において、インターネットやメールを活用した安否確認方策の取組のほか、平時から一般利用者に周知すべき災害時等における電話利用方法について、ホームページやパンフレット等への掲載を実施することとしている(図表[1])。

 
図表[1] 災害時等の電話利用方法のキャッチフレーズ

図表[1] 災害時等の電話利用方法のキャッチフレーズ

 また、平成15年度においては、宮城県沖地震や釧路十勝沖地震の際の固定・携帯電話の輻そうやブラスターワームに代表されるコンピュータウイルス等の拡大があったほか、各種障害も生じていることから、電気通信設備の事故の発生状況や発生要因、対応策等を確認するため、必要に応じて実地調査を行い、電気通信事業者に対し再発防止に必要な指導を行うとともに、「情報通信ネットワーク安全・信頼性基準」に基づく対策の実施を求める等、今後も利用者が安心して電気通信サービスを利用できるよう電気通信の安全・信頼性確保に努めていくこととしている(図表[2])。

 
図表[2] 平成15年度の電気通信分野における主要事故事例

図表[2] 平成15年度の電気通信分野における主要事故事例
Excel形式のファイルはこちら


2 電気通信事業における緊急通報機能等の高度化方策

 「電気通信事業における重要通信確保の在り方に関する研究会報告書」においては、[1]携帯電話からの緊急通報における位置情報表示機能について、関係者間の調整を行い、円滑な導入に向けて取り組むことが必要、[2]IP電話からの緊急通報の接続を行うために必要な機能、実現する方法等について、関係者との検討の場を設けることが必要との提言も行われた。
 これらを受け、総務省では、平成15年11月、情報通信審議会に「電気通信事業における緊急通報機能等の高度化方策」について諮問し、同審議会に緊急通報機能等高度化委員会を設置して、次のとおり検討を行っている(図表[3])。

 
図表[3] 緊急通報機能等の高度化のイメージ

図表[3] 緊急通報機能等の高度化のイメージ

(1)携帯電話からの緊急通報における発信者位置情報通知機能に係る技術的条件の検討

 携帯電話の普及に伴い、緊急通報全体に占める携帯電話からの通報の割合が急増しているが、携帯電話における発信者の位置特定は、固定電話と異なり、技術的困難性等から実現されていない。発信者の位置は、警察、消防、海上保安の緊急通報受理機関の迅速かつ確実な対応のために極めて重要な情報となっており、携帯電話からの緊急通報における発信者位置情報通知機能を早期に実現することが期待されている。
 同委員会において、[1]緊急通報を行った際に指令台に速やかに位置情報を通知できるように、移動機又は携帯電話事業者のネットワークにおいてリアルタイムな位置情報の測定が可能であること、[2]指令台において正確な位置特定ができるように、測定した位置情報が十分な精度を有すること、といった観点を踏まえ、当該機能の技術的条件、及びその開始時期や端末普及の目標等を内容とする導入スケジュールについて取りまとめを進めている。

(2)IPネットワークにおける緊急通報等重要通信の確保方策の検討

 IP電話サービスからの緊急通報については、固定電話と異なり、技術的困難性等から発信場所を所轄する緊急通報受理機関の指令台に接続できないものがある。
 同委員会において、[1]現行の網構成等を基本としながら早期に緊急通報の接続を実現することを想定した技術方式等の検討(第1段階)、[2]緊急通報をIP電話で受理する網構成等において緊急通報の接続を実現することを想定した技術方式等の検討及び今後の技術開発・標準化の動向等を踏まえた将来展望のとりまとめ(第2段階)を行うこととしており、IPネットワークにおける緊急通報等重要通信の確保に必要な機能の実現方策や標準化に必要な事項等について取りまとめを進めている。

 

テキスト形式のファイルはこちら

(4)情報通信分野の個人情報の保護 に戻る 第3章第7節3(1)過疎地域等におけるネットワークインフラの整備 に進む