平成16年版 情報通信白書

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第3章 情報通信政策の動向

(2)ユビキタスネットワーク社会の実現に向けた利活用技術

IT利活用を促進するための研究開発の推進

 ユビキタスネットワーク社会の実現には、基盤技術の確立とともにそれを発展的に利活用へとつなげる技術が必要とされるところであり、多様な分野へとIT利活用を促進するための研究開発も必要とされている。

1 電子タグの高度利活用

 ICチップとアンテナから構成される電子タグは、電波を利用することで、電子タグに書き込まれた情報を離れた場所から読み取りができ、一度に複数の電子タグから情報を読み取るなど、バーコードにはない特徴を有している。加えて、薄く小さく安価な電子タグが登場しはじめたことで、あらゆるモノに埋め込むことが可能になり、今後はバーコード機能の代替のみならず、ネットワークとの結びつきを深めつつ多様な分野で利用され、ユビキタスネットワーク社会において人やモノとネットワークをつなぐ基盤ツールとなることが期待されている(図表[1])。

 
図表[1] ネットワークによる電子タグの高度利活用イメージ

図表[1] ネットワークによる電子タグの高度利活用イメージ

 そのため、平成15年4月からユビキタスネットワーク時代における電子タグの高度利活用に関する調査研究会を開催し、周波数の使用方法やネットワークの活用方策等について検討を行った。研究会では、電子タグとネットワークとの融合技術に関する研究開発の推進、利用者参加型実証実験を通じた社会的コンセンサスの醸成、新たな周波数導入の推進等、今後の電子タグの高度利活用に必要な推進方策に関する提言が平成16年3月に取りまとめられた。これを踏まえ、総務省では、平成16年度から電子タグの属性情報を動的な環境変化に応じて異なるプラットフォーム間で交換するための技術や、電子タグとネットワークを関連づける技術、電子タグ情報へのアクセス権限を制御する技術の研究開発を実施し、電子タグとネットワークとの結びつきを一層深め、ユビキタスネットワークに対応可能な電子タグの高度利活用を推進している。
 一方、産業界等においても電子タグの高度利活用に向けた動きが活性化しており、ユビキタスネットワーキングフォーラムにおいて、平成15年9月から電子タグ高度利活用部会が新たに設置され、電子タグに係る実証実験における課題と解決方法の検討、標準化の推進等の活動が行われている。我が国では、電子タグの高度利活用を実現するべく、関係団体・関連省庁等が連携をとりつつ、産学官一体となって、研究開発・実証実験・標準化等に積極的に取り組んでいる。
 また、総務省では、産学関係機関と連携を図りつつ、基盤技術に関する研究開発のみならず、医療・食品・教育等の様々な分野における利活用のための研究開発を行うとともに、利用者のニーズや社会的影響性を視野に入れた実証実験も併せて取り組むなどユビキタスネットワーク社会の早期実現に向け総合的に推進している。

2 ロボットとユビキタスネットワークの融合

 ユビキタスネットワークが、家庭やオフィスでの利用が期待されるパーソナルロボットや業務用ロボット等とつながる(ネットワークロボット)ことにより、新たなライフスタイルが創出され、高齢化・医療介護問題等の様々な社会的問題への対応が図られるばかりでなく、21世紀の日本発新IT社会の構築にも貢献することが期待されている(図表[2])。ネットワークロボットの実現の大きな鍵は、ユビキタスネットワークとロボットを結ぶネットワーク技術であり、我が国がネットワークロボット分野で世界を牽引するためには、コア技術を早急に確立することが求められている。そのため、ネットワークロボットの将来イメージを明確化するとともに、早期に取り組むべき研究開発・標準化課題、実現のための研究開発推進方策と社会的・経済的効果等を検討するため、平成14年12月からネットワーク・ロボット技術に関する調査研究会を開催し、研究会では、平成15年7月に報告書が取りまとめられた。これを踏まえ、総務省では、平成16年度から5か年計画で、「人に優しいコミュニケーション技術」、「ネットワークロボットの連携技術」等の研究開発を実施している。

 
図表[2] ネットワークロボットの実現イメージ

図表[2] ネットワークロボットの実現イメージ

 一方、産業界等におけるネットワークロボット実現のための取組も活発化しつつあり、平成15年9月、民間企業や大学が主体となって、ネットワークロボット実現のための研究開発・標準化に関する情報交換や各種調査等を行う業界横断的な組織であるネットワークロボットフォーラム(平成15年度末現在:約120会員)が設立された。総務省では、ネットワークロボットの実現に向け、ネットワークロボットフォーラム等の関係機関とも連携を図りながら、研究開発・標準化の推進等、各種取組を総合的に推進している。

3 ネットワーク・ヒューマン・インターフェースの研究開発

 情報通信ネットワークの利用が生活・社会・経済に一層浸透し、誰もがネットワークを活用してITによる恩恵を十分に享受できる社会を構築していくためには、複雑な操作感を感じることなく、安心して安全に情報通信を利用できるようにすることが必要であり、人間とネットワークとのインターフェースの重要性が増している。
 そのため、総務省では、平成15年度から「ネットワーク・ヒューマン・インターフェースの総合的な研究開発」を開始し、ネットワークと連携した実用的な携帯型の多言語音声自動翻訳システム、映像コンテンツの光刺激等による生体への影響を防止する技術等について、要素技術の確立を目指した研究開発を推進している(図表[3])。

 
図表[3] ネットワーク・ヒューマン・インターフェース

図表[3] ネットワーク・ヒューマン・インターフェース

4 ユビキタスセンサーネットワークの実現に向けた検討

 ユビキタスネットワークが進展し、より多様化・高度化したサービスが求められるようになると、静的な情報をモノに付与する電子タグ等の技術から、更に人やモノの状況や周辺環境等を認識し、その動的な情報を発信する技術が重要になってくる。このような高度なセンシング技術や映像認識技術等とネットワークとが結びつきついたユビキタスセンサーネットワーク技術の実現により、医療・福祉、防犯・セキュリティ、防災、農産物等の生産、環境リスクへの対応等、様々な社会・経済活動におけるITによる側面支援が強化されることが期待される。
 このため、総務省では、平成16年3月からユビキタスセンサーネットワーク技術に関する調査研究会を開催している。研究会では、関連する技術動向を調査し、ユビキタスセンサーネットワーク技術の将来イメージを示しつつ、その実現に向けた研究開発課題、標準化課題、社会的受容性、推進方策等を検討している(図表[4])。

 
図表[4] ユビキタスセンサーネットワーク技術の利用シーン

図表[4] ユビキタスセンサーネットワーク技術の利用シーン

 

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