平成17年版 情報通信白書

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第3章 情報通信政策の動向

第7節 情報通信利用者の保護

1 電気通信事業分野における消費者行政

高度情報通信ネットワーク社会の影への対策を推進

 情報通信分野の急速な技術革新と規制緩和による競争の進展等により、高度化・多様化した電気通信サービスが国民各層に広く普及・浸透し、国民生活に大きな利便性をもたらす一方で、電気通信サービスをめぐるトラブルも急増し、その内容も年々複雑になってきている。こうした状況の中、総務省では、消費者が安心して電気通信サービスを利用できるための取組を積極的に推進している。

1 迷惑メール対策

 携帯電話等に対し、受信者の同意を得ず一方的に送信される広告・宣伝目的の電子メール(いわゆる迷惑メール)については、平成14年7月に施行された「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」による取締り(注)や、電気通信事業者による自主的対応により、一定の成果を上げてきたが、近年、送信行為の巧妙化、悪質化等が進行しており、未だ迷惑メール問題は解決していない。
 このような状況を踏まえ、総務省では、平成16年10月から、「迷惑メールへの対応の在り方に関する研究会」を開催し、政府による法執行、電気通信事業者による自主規制、技術的解決策、利用者啓発、国際協調といった迷惑メール流通の抑制・防止のために必要な対応方策について幅広く検討を進めている(図表[1])。

 
図表[1] 総合的な迷惑メール対策の推進

図表[1] 総合的な迷惑メール対策の推進

 この研究会における議論を踏まえ、総務省では、現行法の改正について検討を進め、特定電子メールの範囲の拡大、架空電子メールアドレスによる送信を禁止する範囲の拡大、送信者情報を偽った電子メールの送信の禁止及びその違反者に対する直罰規定の導入等を内容とする「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案」を平成17年3月に第162回国会に提出し、同年5月に成立した。

2 振り込め詐欺対策

 総務省の「電気通信消費者相談センター」に寄せられる苦情・相談等の半数以上を占めているのが架空請求等の振り込め詐欺に関するトラブルである。総務省では、架空請求等について、従前からその手口と対策に関する周知に努めてきたが、架空請求等の犯罪に利用されることの多いプリペイド式携帯電話について、その原因となっている匿名性を排除するため、平成16年6月から携帯電話事業者等とともに新たな本人確認強化策について検討を重ね、その結果、同年11月、総務省及び各携帯電話事業者から以下の対策を発表し、平成17年4月から、各携帯電話事業者において運用を開始した。
[1] すべてのプリペイド式携帯電話について、携帯電話事業者がその契約者情報を確認・登録する。
[2] 携帯電話事業者は、契約者情報の届出がないこと等により契約者の確認ができない場合には利用を停止する。
 また、プリペイド式携帯電話をはじめとする携帯電話の匿名性を排除し、不正な利用を防止するため、携帯電話・PHS事業者に対して契約締結時・譲渡時の本人確認義務を課すとともに、契約締結時等において虚偽の氏名、住居等を申告する行為、携帯電話・PHS事業者の承諾なく業として有償で携帯電話・PHSを他人に譲渡する行為、借り主の氏名、連絡先等を確認しないで携帯電話・PHSを業として有償で貸与する行為、他人名義の携帯電話・PHSを譲渡する行為等を処罰の対象とする「携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律」が、議員提出法律案として第162回国会に提出され、平成17年4月に成立した。

3 インターネット上の違法・有害情報対策

(1) プロバイダ責任制限法
 インターネットの急速な普及に伴い様々な電気通信サービスの提供が可能となってきている一方で、他人の権利を侵害する情報の流通も増加してきている。その対策として、平成14年5月、インターネット上のウェブページや電子掲示板等による情報の流通によって他人の権利が侵害された場合について、(ア)プロバイダ等の損害賠償責任の制限・明確化、(イ)(被害を受けた者からの)発信者情報の開示請求権を規定する、いわゆるプロバイダ責任制限法(「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」)が施行された。総務省では、同法が適切に運用されるよう、業界団体による同法のガイドラインの策定に対する支援や周知を行ってきている。
 平成16年10月には、業界団体等により構成される「プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会」が策定した「プロバイダ責任制限法名誉毀損・プライバシー関係ガイドライン」が改訂され、[1]インターネット上の情報の流通による重大な人権侵害事案であって、[2]被害者自らが被害の回復・予防を図ることが困難な場合に、法務省人権擁護機関(各法務局長及び地方法務局長)がプロバイダ等に対し当該情報の削除依頼を行う手続等が新たに定められたが、総務省は、この改訂作業を支援するとともに、周知に取り組んだ。
 また、最近、ネットオークション上の模倣品・海賊版の流通が問題となっていることを受け、平成16年12月から、同協議会に「商標権関係ワーキンググループ」が設けられ、プロバイダ等による対応方法に関する検討が進められている。

(2) モバイルフィルタリング技術の研究開発
 近年、携帯電話等によるモバイルインターネットが幅広い年齢層に急速に普及する一方、出会い系サイト等を通じた児童買春等が社会問題となっている。現在、パソコン向けのフィルタリング(インターネットのウェブページのうち、特定の条件に合致する(しない)ページの閲覧を遮断する機能)は実現・普及しているが、実際に児童買春等の問題となったケースで主に利用されていた“モバイル”向けには、その特性から、フィルタリング機能の実現に至っていないため、総務省では、児童の健全育成の観点から、平成16年度よりモバイル端末におけるフィルタリング機能の開発・実現に取り組んでいる。

4 フィッシング対策

 インターネット上で個人情報を詐取する「フィッシング」については、平成16年秋頃から我が国でも問題が顕在化しつつあるが、電子メールやウェブサイトが主要なツールとなっていることから、総務省では、インターネット接続サービスを提供する電気通信事業者を中心とする「フィッシング対策推進連絡会」を平成17年1月から開催し、情報の共有を図るとともに、その効果的な対策等について検討を進めている(図表[2])。

 
図表[2] フィッシング対策の概要

図表[2] フィッシング対策の概要


(注)同様に、迷惑メール対策として、通販事業者等を対象とした「特定商取引に関する法律」の改正法が平成14年7月に施行されている

 第7節 情報通信利用者の保護

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