はじめに 特集 「u-Japanの胎動」〜2010年の「u-Japan」実現に向けて〜  我が国が、高度情報通信ネットワーク社会の重点的かつ迅速な形成の推進を目的として、「IT基本法」を制定してから4年が経過した。この間、2001年1月からは、「2005年までに世界最先端のIT国家となる」ことを目指すe-Japan戦略がスタートし、当初、出遅れが心配されたブロードバンド化は、インフラの整備が予想を上回る早さで進展し、現状では、世界で最も低廉かつ高速なブロードバンド環境が実現している。  このような順調なブロードバンド化の進展を踏まえ、2003年7月には、IT戦略本部においてe-Japan戦略の見直しが行われた。この見直しでは、戦略の重点を、従来のインフラ整備からIT利活用促進に大きく転換させるとともに、ユビキタスネットワークの形成を新しいIT社会基盤整備の目標像として位置づけている。  これを受けて総務省では、「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」ネットワークにつながり、情報の自在なやりとりを行うことができるユビキタスネット社会(u-Japan)を2010年を目途として実現すべく、その将来像を提示するとともに、その実現のために必要となる政策をu-Japan政策として取りまとめた。e-Japan戦略では、「2005年までに世界最先端のIT国家となる」という諸外国へのキャッチアップを目標としていたが、u-Japanにおいては、2010年に我が国がフロントランナーとして世界を先導していくことが新たな目標として掲げられている。  このような背景のもと、今年の白書では「u-Japanの胎動」を特集テーマとし、2010年のu-Japan実現に向けた現状を分析するとともに、併せて、e-Japan戦略以降の国民、企業のICT利用の進展を明らかにすることをねらいとしている。また、ICT利用の先進国である米国やICT分野で急速に成長を続ける韓国との国際比較もできる限り行った。  なお、インターネットや携帯電話等の情報通信技術を表す英語としては「IT」と「ICT」があり、現在の我が国では「IT」の語が広く普及しているが、国際的には、欧州や中南米、アジアの各国及び国連をはじめとする各種国際機関において「ICT」の語が広く定着している。  総務省としては、これから実現を目指すユビキタスネット社会では、豊かなコミュニケーションが実現するという点が最も重要な概念であることを踏まえ、情報通信におけるコミュニケーションの重要性をより一層明確化するため、本文においては原則として「ICT」の語を使用している。