3 バックボーンインフラ インターネット上のトラヒックは急速に伸長、トラヒック交換は東京一極集中 1 インターネットにおけるトラヒックの急増  ブロードバンドの進展に伴い、インターネットにおけるトラヒックは急増しており、これに対応できるようインフラ整備を図っていく必要がある。そのためにはトラヒック情報の把握が不可欠であるが、これまでインターネット上のトラヒックについては、国内主要IX(注1)(インターネットエクスチェンジ:Internet Exchange)におけるトラヒック情報程度しか把握されていない状況にあった(図表[1])。 図表[1] 国内主要IXにおけるトラヒック  このため、総務省では、ISP7社(注2)及び学界の協力を得て、我が国のインターネットのトラヒック情報の集計・試算を行った(平成16年9月〜11月)。 (1)ブロードバンド契約者のトラヒックの傾向  ブロードバンド契約者のトラヒックは、増勢傾向を続けており、ダウンロード(ISPから契約者へのトラヒック)とアップロード(契約者からISPへのトラヒック)の差が小さくなり、ISPにとって「一般利用者はダウンロードが中心」ということを前提にネットワークを構築することはできなくなってきている(図表[2])。 図表[2] 契約者別のトラヒック(平成16年9月〜11月の月間平均トラヒックの合計値の推移、Gbps) (2)ISP同士のトラヒック交換  ISP7社と他のISPとの間のトラヒック交換は、国内主要IXにおけるトラヒック交換よりも、プライベート・ピアリング(注3)等が多用されており、国内主要IXにおけるトラヒック情報を見るだけでは、トラヒック交換の総量を推し量れないことがうかがえる(図表[3])。 図表[3] ISP同士のトラヒック交換(平成16年9月〜11月の月間平均トラヒックの合計値の推移、Gbps) (3)ブロードバンド契約者のトラヒック総量(平成16年11月)  国内主要IXにおけるInのトラヒック総量(国内主要IXに流入するトラヒック総量)に占めるISP7社のシェア41.1%とISP7社のブロードバンド契約者のトラヒック133.0Gbpsを基に、我が国のブロードバンド契約者のトラヒック総量を試算すると300Gbpsを超えるトラヒック(133.0Gbps÷41.1%=323.6Gbps)がインターネット上を流通していることがうかがえる。 2 インターネットにおけるトラヒック交換の東京一極集中  総務省が主要ISP14社(注4)に対して行ったアンケート調査(平成16年2月)によれば、IXにおけるパブリック・ピアリングのためのIX接続回線容量の合計は230.4Gbpsであり、そのうちの約8割が東京に集中している(図表[4])。また、プライベート・ピアリングのための接続回線容量の合計は278.2Gbpsであり、そのうちの約9割が東京に集中している(図表[5])。 図表[4] 主要ISP14社のIX接続回線容量(平成16年2月) 図表[5] 主要ISP14社のプライベート・ピアリング接続回線容量(平成16年2月)  トラヒック交換の東京一極に集中により、地域におけるブロードバンドサービスの品質低下、サイバー攻撃や大規模災害等に対する脆弱性等の問題が指摘されている。主要なISPやIX事業者の中には、危機管理の観点から、東京だけでなく大阪等でもトラヒック交換を行っているところが多いが、インターネット全体の安定運用の観点から、分散型のネットワーク形態に移行するにあたって技術的な課題についても検証していくことが必要である。 (注1)ISP同士の相互接続点としてトラヒックの中継を行う地点 (注2)インターネットイニシアティブ、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ、ケイ・オプティコム、KDDI、ソフトバンクBB、日本テレコム、パワードコム (注3)ピアリング(peering)とは、ISP間でお互いに相手方ISP宛てのトラヒックを交換し合うことをいい、IXで行われるピアリングをパブリック・ピアリング(public peering)、IXを介さないピアリングをプライベート・ピアリング(private peering)という (注4)インターネットイニシアティブ、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ、ケイ・オプティコム、ケーブル・アンド・ワイヤレス・IDC、KDDI、JENS、ソフトバンクBB、ドリーム・トレイン・インターネット、日本テレコム、日本電気、ニフティ、パワードコム、ぷららネットワークス、松下電器産業