平成18年版 情報通信白書

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第1章 ユビキタスエコノミー

3 ICT化と経済成長(第三の効果)

 第三の効果である産業や企業のICT化による生産性の向上は、資本や労働といった生産要素の投入量の変化では説明することができない変化要因である全要素生産性(TFP:Total Factor Productivity)28の向上という形で顕在化する。1990年後半からの米国の繁栄は、資本ストックの深化だけで説明することは難しい。米国の2000年から2004年の労働生産性の上昇3.5%に対して、資本ストックの深化による寄与度は1.2%であり、残りの2.3%はその他の要因、すなわちTFPによる寄与となっている。日米比較を行うと、2000年から2004年の労働生産性のうち、資本ストック深化の寄与度については日米ほぼ同じであるが、TFPの寄与は米国が高くなっており、これが米国の労働生産性が高い主な要因となっている。
 図表1-1-191-1-20に示されているように、2000年から2004年期においては経済成長や労働生産性に対する全要素生産性成長率の寄与が高まっている。しかしながら、産業別に見れば、情報通信産業が3.7%、電気機械29が2.9%と、情報通信に関連する分野では高い値が示されているものの、それ以外の産業は必ずしも高くはない30。すなわち、現時点での我が国の全要素生産性の成長は技術革新を先導する情報通信産業によって支えられており、全産業において顕在化しているものではない。
 ただし、第三の効果は、ミクロのレベル、すなわち個々の主体において顕在化しつつある。以下の節では、ユビキタスネットワークの進展によって始まりつつある各主体の社会経済活動の変化について検討する。また、第12節では、マクロデータでは明確にならなかったICT化と生産性の関係について、ミクロデータを使って検討を行う。
 
図表1-1-23 日米の労働生産性成長率の比較
図表1-1-23 日米の労働生産性成長率の比較
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図表1-1-24 産業別全要素生産性上昇率
図表1-1-24 産業別全要素生産性上昇率
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28  労働、資本(情報通信資本を含む)といった生産要素の変化では説明されない変化要因を指す。全要素生産性自体は、技術進歩や効率性の改善、組織や制度変革、景気変動等様々な要因を含むことになるため、第三の効果が、他の要因によって相殺されてしまうなどの可能性があることに注意が必要である
29  情報通信機械は除いている
30  情報化投資は活発に行われ、情報通信資本ストックが蓄積されているものの、生産性向上が見られないとして、情報化投資とともにどのような対応を取ればICTユーザー部門でも生産性向上の効果があるかということが現在では議論となっている

 第1節 情報通信産業の動向

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