平成18年版 情報通信白書

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第1章 ユビキタスエコノミー

4 電子商取引と価格調整

 電子商取引では、市場メカニズムがより有効に機能するのではないかという期待が存在する8。この仮説が正しければ電子商取引市場の価格は通常市場の価格よりも低い水準となることが期待される。
 ネットショップと実店舗の名目表示価格9を比較してみたところ、ネットショップ表示価格は実店舗の表示価格よりも低い水準となっていた10(図表1-8-10)。特に、価格比較サイトやポータルサイトに掲載されているネットショップの場合、この傾向が顕著となった。比較サイトやポータルサイト上では、各店舗価格は直接比較されることになるため、最も低い値を付けたショップに顧客が集中し、価格低下に拍車がかかるという価格競争メカニズムが機能する可能性を示唆している。
 ただし、輸送費やポイント割引などを考慮にいれた調整後価格では、ネットショップと実店舗の間に明確な価格差を見いだすことはできなくなった。このことは、例えばポイント制や輸送費等を含めた実質価格で、実店舗とネットショップ間で競争が生じている可能性を示唆している。
 一方、店舗間の価格のばらつき(分散)状況については、ネットショップ間の価格差が小さくなると思われたが、実際は価格差が大きくなっていた11。ネットショップは中小規模の店舗の参入も多く、価格引下げに対する体力差が実店舗間よりも大きいことや、商品納期等の差別化要因が存在し、これがネットショップ間の価格の違いとなって現れていることなどが考えられる12
 
図表1-8-10 ネットショップと実店舗の平均価格の差
図表1-8-10 ネットショップと実店舗の平均価格の差
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8  電子商取引市場における価格調整プロセスに関する先行研究としてBrynjolfsson and Smith(1999)がある
9  輸送費やポイント割引等を考慮して調整を行う前の価格
10  平均値の差の検定を行った
11  一物一価が成立しない原因として、[1]消費者が信用できるサイトでしか取引を行わない、[2]異なるサイトを利用するために、その度クレジットカード等の個人情報を入力する必要があるといった煩雑さ(スイッチングコスト)が存在するため、購入先を変えるにはこれら(スイッチング)コストを超えるだけの価格差がなければ、購入先を変更しない[3]再販価格制のように自主的な規制によって成立していた一物一価が成立しなくなる、といったことが要因として指摘されている。館(2002)
12  ただし、送料やポイント等を考慮した調整後価格では先と同様に明確な違いは見られなくなった

 第8節 市場効率性の向上

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