平成18年版 情報通信白書

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第3章 情報通信政策の動向

2 放送の高度化の推進

(1)地上放送のデジタル化の推進

 放送のデジタル化は、国民生活に密着した放送メディアの高品質化、高機能化等を実現するものであり、我が国では、CS放送・BS放送・ケーブルテレビに続き、基幹放送である地上テレビジョン放送についても、平成15年(2003年)12月に東京・名古屋・大阪の三大広域圏においてデジタル放送が開始された。地上デジタルテレビジョン放送は、今後、順次放送エリアを拡大し、平成18年(2006年)末までに全国県庁所在地等で放送を開始し、平成23年(2011年)には現在のアナログ放送を終了し、デジタル放送に全面移行する予定となっている。
 放送のデジタル化は、これまで一方的に視聴者が受動的にサービスを享受していた視聴の形態を革命的に変革し、国民、視聴者自らが能動的に働きかける視聴スタイルを現出させ、国民に、今までの放送にない高度で多彩なサービスを提供することにより、アナログ技術の段階では考えられなかった様々な視聴形態を可能とするとともに、国民共有の資源である電波の利用効率を飛躍的に高め、更なる高度利用への可能性を拓くものである。
 総務省では、平成23年(2011年)のデジタル放送への完全移行の実現に向け、地上デジタル推進全国会議等と連携しつつ、全放送のデジタル化を推進している。

1 地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政の果たすべき役割〜情報通信審議会中間答申

 地上デジタル放送の平成18年(2006年)までの全国展開及び平成23年(2011年)までのデジタル放送への全面移行の確実な実現のため、普及を一層加速、推進していく必要があることから情報通信審議会では、情報通信政策部会「地上デジタル放送推進に関する検討委員会」において検討が行われ、平成17年7月に第2次中間答申がまとめられた。
 この中では、デジタル全面移行に向けた重点施策として「通信・放送融合」の成果の積極活用、特にIPインフラを地上デジタルの伝送路として用いること等が提言されている。
 
図表3-3-10 情報通信審議会 第2次中間答申の骨子〜2011年全面移行ミッションの確実な実現に向けて〜
図表3-3-10 情報通信審議会 第2次中間答申の骨子〜2011年全面移行ミッションの確実な実現に向けて〜

2 地上デジタル放送等の円滑な普及のための情報提供活動の推進

 地上テレビ放送は、国民視聴者にとって最も身近なメディアであり、国民生活に密着したものであることから、そのデジタル化に当たっては、幅広い国民の理解を得ていく必要がある。このため、視聴者にとっての具体的なメリットや地上テレビ放送のデジタル化の社会的意義等について、社団法人地上デジタル放送推進協会(D-PA)、放送事業者、地方公共団体と連携し、
[1] 新聞広告の掲載、テレビCMによる告知、周知用リーフレット、ポスター等の作成、頒布等
[2] 各種イベント等における情報提供等
など、様々な周知広報活動を行っている。
 また、デジタル放送への全面移行を円滑に行うためには、アナログ放送終了までの間に、視聴者がデジタル受信機等を購入するなど受信環境を整備する必要があり、そのためには、視聴者に対し、「アナログ放送の終期」に関する周知を徹底する必要がある。このような観点から、平成23年(2011年)以降、アナログ受信機等のみではテレビが視聴できなくなる旨を告知するため、メーカー、販売店等の協力の下、アナログ受信機等にシールをちょう付するなどの取組を平成17年度から行っている。

3 「地上デジタル推進全国会議」における取組

 平成15年5月に、地上デジタル放送の普及に関し、分野横断的かつ国民運動的に推進を図るための組織として、放送事業者・メーカー・販売店・消費者団体・地方公共団体・マスコミ・経済団体等幅広い分野のトップリーダー及び総務省等の関係省庁からなる「地上デジタル推進全国会議」が設置されており、官民一体となって普及を推進する体制となっている。
 同会議においては、平成17年12月、地上デジタル放送用受信機の普及目標や各関係者の取り組むべき具体的事項等をとりまとめた「デジタル放送推進のための行動計画(第6次)」を策定した。
 今次計画では、
[1] 平成23年(2011年)のアナログ停波の実現には、すべての視聴者にデジタル放送を送り届けるインフラ整備を完了することが必要であり、放送事業者、国その他の関係者によるなお一層の努力が必要であること、
[2] アナログ停波の時期を「2011年」と認識する視聴者は少なく、出荷受信機数もアナログがデジタルを上回る現状であること、の認識の下、
I 今回の計画に盛り込んだロードマップについて、更に完成度を高め、その確実な実現を図っていくため、放送事業者その他の関係者が一層の努力を行うこと、
II 平成23年(2011年)までという6年間という限られた期間の中で、IP、衛星等補完的伝送路の活用を含め、視聴者にデジタル放送を送り届けるインフラ整備を推進、
III 価格や機能面で、視聴者の多様なニーズに応えた受信機の開発、販売と周知広報の実施
等が盛り込まれている。
 
図表3-3-11 地上デジタル放送推進の今後の取組
図表3-3-11 地上デジタル放送推進の今後の取組

4 公共分野における地上デジタル放送の高度な利活用

 地上デジタル放送においては、既にデータ放送や双方向サービスに加え、ワンセグなど新たなサービスの提供が開始されており、今後は、蓄積型の放送等、さらに利便性の高い多様なサービスの実現が見込まれ、デジタルテレビが家庭の新たなICT基盤となっていくことが期待されている。また、デジタル放送への完全移行に向け、全国各地における円滑な普及を推進するためには、地上デジタル放送の様々な利活用の可能性を視聴者に提示していくとともに、より効果的かつ着実な普及方策を多角的に検討することが必要である。
 そこで総務省では、幅広い分野における地上デジタル放送の今後の利活用の在り方や、その実現に向けた課題と解決方策及び行政が果たすべき役割について、平成16年1月、情報通信審議会に諮問し、同年7月、中間答申を受けた。この答申を受け、防災・医療等の公共分野において、地上デジタル放送の高度な利活用を想定したモデル的なシステムを構築し、携帯端末向け放送、サーバー型放送・通信インフラとの連携等、地上デジタル放送ならではの高度な機能を活かした新たなサービス等に関する調査研究を行っている。

5 放送のデジタル化に伴う諸課題への対応

 平成15年12月、地上デジタルテレビジョン放送が開始され、地上、衛星及びケーブルのいずれの分野においても放送のデジタル化が進展しつつある。
 今後、デジタル化された放送インフラの高度利活用や高度化する情報通信ネットワークとの連携による新しいサービスの展開、ユビキタスな放送利用環境の充実、デジタル環境下における放送番組等のコンテンツ利活用等が円滑に進展し、デジタル化を通じて放送が国民生活の利便性等の向上、活力ある経済社会の構築、新たな文化の創造等に大きく寄与することが期待されている。このような環境の中で、デジタル放送への円滑な移行と多様な国民視聴者のニーズ等に的確に応えうる放送の発展に向けて、総務省では、平成16年7月から「デジタル化の進展と放送政策に関する調査研究会」を開催し、デジタル化の進展と新しい放送サービスの展開、デジタル放送時代の公共放送、デジタル時代における放送コンテンツ等について検討を行い、平成17年8月に中間取りまとめを公表した。
 取りまとめでは、大きく分けて四つの論点が取り上げられている。
1 新規サービス(ワンセグ、サーバー型サービス、課金サービス等)の展開や利活用をめぐる課題等への対応
2 衛星・ケーブルをめぐる課題等への対応(CS放送事業者、衛星事業者及びプラットフォームの関係、ケーブルテレビ事業者と番組供給事業者等との関係等)
3 放送コンテンツの利活用を巡る課題等への対応(デジタル放送におけるコピー制御の在り方、コピー制御の制度的担保の在り方等)
4 放送事業を取り巻く環境の変化等を巡る課題等への対応(マスメディア集中排除原則の在り方、デジタル時代の公共放送について等)
である。

6 アナログ周波数変更対策の着実な実施

 我が国の厳しい周波数事情の中、地上デジタル放送用の電波を確保するため、一部の地域において既存のアナログ放送の周波数を変更する対策の必要があり、この対策に要する経費について、国が電波利用料財源により措置できるよう、平成13年7月に電波法の一部改正が行われた。
 また、NHK、民放及び総務省の三者からなる全国地上デジタル放送推進協議会が平成13年7月に設立され、同協議会においてアナログ周波数変更の対策手法、対策経費等、今後の進め方等について検討行われ、平成14年8月に、対策経費1,800億円程度、対策局所数801局所、対策世帯数約426万世帯程度との見通し等が取りまとめられた。
 総務省では、検討結果を踏まえ、平成14年8月から送信側の対策を、また、平成15年2月から個別世帯等における受信対策を実施しており、関東・中京・近畿の三大広域圏において、おおむね対策が終了するなど、全国で571地域の対策に着手し、約415万世帯(要対策世帯全体の約90%)の対策を終え、計画に沿って順調に対策が進んでいる。
 今後は引き続き三大広域圏以外の地域を中心に対策を実施していくこととしている。

7 地上デジタル放送施設整備の推進

 総務省では、平成14年9月、地上デジタルテレビジョン放送を行う放送局の免許方針を制定し、これに従い、同年12月には、NHK並びに関東、中京及び近畿広域圏内の民間放送事業者16社から地上デジタルテレビジョン放送局の免許申請が行われ、平成15年12月にはこれらの事業者が地上デジタル放送のサービスを開始した。その後、平成16年9月には関東広域圏、同年11月には近畿広域圏においてエリア拡大が行われるとともに、12月には中京広域圏の親局が定格出力となった。
 また、富山県においては平成16年10月、静岡県においては平成17年6月、東北各県においては平成17年12月、長野県、山梨県、新潟県、福岡県及び沖縄県においては平成18年4月に本放送を開始し、順調に拡大している。
 地上デジタル放送を行うための施設整備を促進するために、「高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法」に基づく実施計画の認定を受けた放送事業者(平成17年末までに127社認定)に対し、税制及び金融上の支援措置を講じている。さらに、平成15年度税制改正により対象設備の拡充を図るなど、事業者の投資負担の一層の軽減を図るとともに、一定の放送番組制作事業者に対しても、税制(法人税又は所得税の特別償却)及び財政投融資に係る支援措置を講じている。
 また、地上デジタル放送の普及のためにはケーブルテレビ施設の高度化が重要であり、ケーブルテレビ施設の高度化を促進するため、高度有線テレビジョン放送施設整備事業を実現する一定の事業者に対し、税制及び金融上の支援措置を講じている。

8 放送のデジタル化に対応した高度放送システムの研究開発

 総務省では、これまで、国民全体が「いつでも」、「どこでも」、「誰もが」、「容易に」放送のデジタル化のメリットを活かした放送サービスを視聴できる環境を実現するため、平成12年に「ミレニアムプロジェクト」の一環として認められた放送のデジタル化に対応した高度放送システム等の研究開発を着実に実施している。
 今後も、多様で、簡便、迅速、円滑な放送サービスを実現するため、デジタル放送に特有な映像コーデックの処理時間を大幅に短縮する技術やSDTVから超高精細画像までの映像アプリケーションや受信機に応じた任意解像度ごとに柔軟に対応可能とするソフトウェアコーデック技術の実現に向けた研究開発を実施し、家庭におけるICT革命の基盤となるデジタル放送の高度化を推進することとしている。

 第3節 情報通信ネットワークの高度化

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