平成19年版 情報通信白書

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第1章 ユビキタスエコノミーの進展とグローバル展開

第1節 情報通信と経済成長

1 「情報・知識の時代」の経済成長

(1)「情報・知識の時代」の到来

 経済成長を超長期的に見ると、「農業の時代」、「工業の時代」を経て今日に至っている。そして21世紀に入り数年が過ぎた今日、新しい時代として、「情報・知識の時代」が到来すると指摘されている1
 各時代にはそれぞれ大きな変革をもたらした契機があり、新たな経済成長の源泉が出現した。それは、「農業の時代」には肥沃な広い土地であり、「工業の時代」には資本設備であった。これからの「情報・知識の時代」には、ICTが変革をもたらす契機となり、情報・知識が新たな経済成長の源泉になると考えられる(図表1-1-1)。
 
図表1-1-1 経済成長とその源泉
図表1-1-1 経済成長とその源泉

 経済成長を超長期でとらえたとき、それは単純な直線で描かれるものではなく、新しい成長の源泉やそれを支える技術が出現し、それに適応した社会経済システムが構築されることにより、新たな成長の段階に入る。そして当初は急速に成長し(収穫逓増局面)、やがて成長は緩やか(収穫逓減局面)になる。つまり経済は各時代において、ぼっ興期、成長期、成熟期を繰り返し、全体として成長が持続されていく。これを図示すると経済成長の軌跡はローマ字の「S」を描く曲線となる(図表1-1-2)。そしてこの新旧のS字曲線が交差する場面で、社会経済の構造が大きく転換し、次の時代の経済成長へと移行していく。
 
図表1-1-2 経済成長とS字曲線
図表1-1-2 経済成長とS字曲線

 工業の時代においては、まず蒸気機関の発明により軽工業を中心とした第一次産業革命が起こり、18世紀から19世紀中葉までの経済成長を可能にした。次いで19世紀後半から20世紀にかけて第二次産業革命が起こり、電力、石油等をエネルギーとする資本設備が経済成長の源泉となった。後に大量生産・大量消費の時代といわれることになる第二次産業革命以降の工業の時代においては、企業により大規模で高度な資本設備の導入が進み、それが経済成長を持続させた。そこでは技術開発に高度な専門知識が必要とされ、応用面では作業の自動化・機械化が進んだ。
 一方、情報・知識の時代においては、コンピュータ等の情報通信資本が新しい資本設備として、相互にネットワーク化される。つまり、ICTが普及しネットワーク化されることで、これまで以上に情報や知識の交流が活発になり、新しいアイディアや創意工夫等によって様々なイノベーションが生み出される。情報・知識の時代においては、農業や工業の時代の特質に加えて、このような多様な情報・知識をいかに利用するかが決定的に重要な意味を持つようになると考えられる。


1 Chandler(2000)は、「商業の時代」、「工業の時代」及び「情報の時代」と三つの時代区分でとらえた上で、「20世紀の後半に工業の時代から情報の時代に変換した」と指摘した。
 また、梅棹(1963)は、第一次産業、第二次産業及び第三次産業という分類では区分できない「情報産業」の位置付けを解説するに当たり、産業を動物発生学の視点で分類し、内胚葉(=消化器官系の機能)を農業、中胚葉(=筋肉を中心とする諸器官)を工業(製造業)、外肺葉(=脳神経系、感覚器官)を情報産業(精神産業)と例えている

 第1節 情報通信と経済成長

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