平成19年版 情報通信白書

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第1章 ユビキタスエコノミーの進展とグローバル展開

(2)ユビキタスネットワークの進展と「情報・知識の時代」

ア ユビキタスネットワークを利用した新しい価値創造
 我が国の情報通信を巡る状況を見ると、インターネットの急速な普及、ADSLや光ファイバ等によるブロードバンド化、携帯電話に代表されるモバイル化、放送のデジタル化、デジタル・コンテンツ産業のぼっ興等が、特に21世紀に入ってから劇的に進展した。現在、我が国は、世界最先端のブロードバンドネットワーク等、ICTを利用するためのインフラ整備が進んでおり、2010年には、ユビキタスネットワークが進展したユビキタスネット社会が実現すると考えられる。
 ユビキタスネットワークの進展により、企業・産業分野のみならず個人・世帯等の社会生活領域にまで情報通信ネットワークが深く浸透する。その意味するところは、こうしたネットワークによって情報・知識を利用する主体のすそ野が大きく広がるとともに、各主体において利用機会の増大や利用形態の多様化が著しく進展することにある。そこでは、多様な利用主体が様々な形態の連結、協働等により結び付き、ネットワーク上の多種多様な情報・知識を利用して生産活動を行うことにより、新しい付加価値を持つ情報・知識が生み出される。さらに、このように生み出された情報・知識がネットワーク上で流通、集積し、同様のプロセスを経て、更に新しい付加価値を持つ情報・知識が生み出されるという連鎖が生じる。
 現在、我が国では、ユビキタスネットワークの進展という新しいうねりの中で、情報・知識の利用局面において、このような新しい価値創造活動が進展している。こうした動きは、工業の時代から本格的な情報・知識の時代への移行という大きな流れと重なり、増幅し合いながら、今後、経済活動に更に深く影響を及ぼしていくものと考えられる。

イ ユビキタス指数の重要性と経済成長
 ユビキタスネットワークが進展する一方、その全体像については、個々の状況やデータ等から感覚的に把握できるだけで、現在のところ客観的なマクロ指標は無い。したがって、ユビキタスネットワークの進展による社会経済への影響を分析する上でも、まず、ユビキタスネットワークの進展状況を表す客観的な指標として、「ユビキタス指数」を作成するという試みが重要となる。
 ユビキタスネットワークの進展は、前述のとおり、ネットワークにより情報・知識を利用する主体のすそ野を広げるとともに、その利用機会の増大や利用形態の多様化を促すものであり、利用面での利便性向上に大きく貢献する。それでは、このようなユビキタスネットワークの進展は、経済成長に対してどのような影響を与えるのであろうか。先行研究によると、情報・知識の時代には、企業等の情報通信資本がネットワーク化され、そこにネットワーク外部性等が生じることにより、収穫逓増局面である急速な経済成長が実現する可能性が示されているが2、これに加えて、ユビキタスネットワークの進展が経済成長にどのような影響を与えるのか、また、それはどの程度のものなのかを検討することが重要な課題となる。
 このようにユビキタスネットワークの進展に注目する背景には、今後、少子高齢化、人口減少が進む中で、日本が将来にわたり経済活力を維持・向上させていくためには、ユビキタスネットワークの持つポテンシャルを十分にいかすことにより、経済全体の生産性や潜在成長率を高め、経済成長を実現していくことが不可欠という発想がある。
 そのような認識の下、以下では、最初に、ユビキタスネットワークの進展状況を利用面から示すユビキタス指数を作成し、次いで、そのユビキタス指数を用いながら、ユビキタスネットワークの進展が経済成長に及ぼす影響を分析し、最後に、その分析結果を基に、ユビキタスネットワークの持つポテンシャルが十分にいかされた場合に達成することができる2010年に向けた経済成長の見通しを示す。


2 日本経済研究センター(2000)、篠崎(2003a)

 第1節 情報通信と経済成長

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