平成19年版 情報通信白書

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第1章 ユビキタスエコノミーの進展とグローバル展開

(5)ユビキタスネットワークの進展と経済成長の将来見通し

 今後、情報通信資本のユビキタス化がどの程度経済成長に寄与するかについて、生産関数モデルの推定で使用したユビキタス化効果検証モデルに基づき、次のシナリオ1とシナリオ2について、シミュレーションを行う。
 なお、シミュレーションに当たっては、ユビキタス化効果検証モデルで考慮した各データを、以下のシナリオに基づき延長して推計した10
 [1] シナリオ1(日本経済が順調に推移しユビキタスネットワークの持つポテンシャルも十分発揮される場合)
 近年の日本経済の回復基調が2010年まで継続すると仮定し、テレワーク等による女性や高齢者の労働機会の増大等により、少子高齢化、人口減少の環境下にあっても就業者数の推移は現在の基調を維持するものとする。また、労働需要の回復、資本蓄積の進展や設備稼働率の上昇に伴いユビキタスネットワークも順調に進展すると仮定する。
 [2] シナリオ2(日本経済が必ずしも順調に推移せずユビキタスネットワークのポテンシャルも十分発揮されない場合)
 近年の日本経済の回復基調が継続しないと仮定し、少子高齢化、人口減少の影響を受けて就業者数が減少するものとする。また、設備稼働率が低下し、ユビキタスネットワークも十分には進展しないと仮定する。
 なお、各種データの予測値は図表1-1-8、それに基づくユビキタス化効果検証モデルにおける各説明変数の予測値は図表1-1-9のとおりである。
 
図表1-1-8 各種データの予測値
図表1-1-8 各種データの予測値
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図表1-1-9 各種データの予測値に基づくユビキタス化効果検証モデルにおける各説明変数の予測値
図表1-1-9 各種データの予測値に基づくユビキタス化効果検証モデルにおける各説明変数の予測値
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ア シミュレーション結果
 日本経済が順調に推移しユビキタスネットワークの持つポテンシャルも十分発揮されるというシナリオ1の下では、2007年から2010年までの予測期間中、実質GDP成長率は3%前後で推移し、これに対する情報通信資本の寄与度は0.29%〜0.30%、情報通信資本のユビキタス化(ユビキタス指数×情報通信資本ストック)の寄与度は2010年には1.14%にまで上昇する(図表1-1-10)。
 
図表1-1-10 シナリオ1における実質GDP成長率と寄与度
図表1-1-10 シナリオ1における実質GDP成長率と寄与度
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 一方、日本経済が必ずしも順調に推移せずユビキタスネットワークも十分には進展しないというシナリオ2の下では、同予測期間中、実質GDP成長率は2%前後で推移する(図表1-1-11)。これに対する情報通信資本の寄与度は0.20%とシナリオ1よりも低く、また、情報通信資本のユビキタス化についても、2010年の寄与度は0.97%であり、シナリオ1と比較すると0.17ポイント小さい。
 
図表1-1-11 シナリオ2における実質GDP成長率と寄与度
図表1-1-11 シナリオ2における実質GDP成長率と寄与度
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イ 将来に向けた取組
 日本経済が順調に推移しユビキタスネットワークの進展による利用面の効果が発揮された場合、我が国の実質GDP成長率は、2007年からユビキタスネット社会の実現を目指す2010年までの期間、そうした条件が満たされない場合に比べ、およそ1.0ポイントから1.1ポイント上回って推移する可能性があることが分かった。
 我が国の情報通信政策は、e-Japan戦略が平成13年1月にスタートして以降、インフラ整備が順調に進展し、世界最先端というべき水準の低廉かつ高速なブロードバンド環境が実現した。それを受け、平成15年7月にはe-Japan戦略の見直しが行われ、情報通信政策の重点は利用促進にシフトし、ユビキタスネットワークの形成が新しい社会基盤整備の目標像として位置付けられた。ユビキタス指数の将来の見通しを見ると、2010年に向け、利用機会の増大や利用形態の多様化という「利用の深化」にけん引されることにより、ユビキタスネットワークの進展は加速していくと見られる。
 今後、ユビキタスネットワークの進展を図るため、引き続き各種政策を積極的に推進していくことが不可欠である。なぜなら、それは人口減少下において、日本経済の潜在的な成長可能性を高め、経済活力を維持・向上させる可能性を伴うものであり、重要性が極めて高いからである。このことを、我々は共通認識として持つべきであり、日本の将来に向けた経済発展に向け、総力を結集していくことが強く求められているのである。


10 算出の詳細については、付注4を参照

 第1節 情報通信と経済成長

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