平成19年版 情報通信白書

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第1章 ユビキタスエコノミーの進展とグローバル展開

コラム マーケティング・商品開発業務における取組事例

 花王(本社東京都中央区、従業員(連結)3万人)における生活者コミュニケーションセンター(旧消費者相談センター)の取組は、ICT利用と組織的な革新が商品開発に対して相乗効果を生んでいる事例と考えられる。同センターは、昭和9年に設立された「長瀬家事科学研究所」が昭和29年に「花王家事科学研究所」と改名され、同時に消費者相談を開始したことから始まる長い歴史を持つ。昭和53年にはエコーシステムと呼ばれる相談対応・解析システムを導入し、ICT利用の面でも常に先進的な取組を行ってきた。平成17年には第6次エコーシステムが稼動し、個人情報保護のための機能や社内のどこからでもアクセスできる機能が追加された。そして、消費者(生活者)との「双方向対話」に力点を置いていることを明確にするため、平成19年には「生活者コミュニケーションセンター」と名称変更している。
 花王では、同センターを、単に問い合わせや苦情に対応する「アフターサービス」の場ではなく、「消費者・顧客の立場に立って、心をこめた“よきモノづくり”を行い、世界の人々の喜びと満足のある、豊かな生活文化の実現に貢献する」という同社の使命の起点として位置付け、消費者から寄せられた情報を商品の開発や改良にいかすために、様々な工夫を凝らしている(図表)。
 
図表 花王における消費者相談センターの位置付け
図表 花王における消費者相談センターの位置付け

 例えば、商品開発部門やマーケティング部門と同センターとは、商品開発にかかわる情報を共有して、消費者視点で性能や使いやすさを共に追求する仕組みが導入されている。また、消費者からの問い合わせに答えるために、両部門の担当者が一緒になって家庭訪問による調査や実験を行い、その結果に基づいて消費者に回答するようなことも頻繁に行われている。加えて、同センターに寄せられた情報は、個人情報を削除した上でデータベース化され、研究開発や生産部門をはじめとする社内の全部門で多角的に活用されているが、「消費者起点」を実現するために、データのみでなく、部門の壁を越えて活発なコミュニケーションを行うことも、企業文化として浸透している。

 第2節 情報通信と競争力

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