平成19年版 情報通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
トップページへ戻る
操作方法


目次の階層をすべて開く目次の階層をすべて閉じる

第1章 ユビキタスエコノミーの進展とグローバル展開

(2)コミュニケーションの多様化

 ブロードバンド化、モバイル化等、ユビキタスネットワークが進展する中、人と人のコミュニケーションは、コミュニケーションツールである固定電話、携帯電話、パソコン等、また、コミュニケーションの形態である通話、メール等において様々な組み合わせが可能となり、多様化が進展している。
 コミュニケーションのツールや形態に関するアンケート調査結果を見ると、それぞれの特性に応じた使い分けが進んでいることが分かる。携帯電話と固定電話については、半数以上が相手、内容、時間帯、気楽さ又は手軽さにおいて使い分けているとしている(図表1-3-23)。また、携帯メールとパソコンメールについては、時間帯や気楽さといった点から使い分けている人は4割程度にとどまっているが、相手、内容又は手軽さにおいて使い分けていると回答した人は半数以上に上る。メールと通話については、7割以上が内容、時間帯、気楽さ、手軽さによって使い分けており、固定電話、携帯電話、パソコン等のコミュニケーションツールの使い分け以上に、メールか通話かといったコミュニケーションの形態の使い分けについて意識していることが分かる。
 
図表1-3-23 コミュニケーションのツールと形態に関する使い分け
図表1-3-23 コミュニケーションのツールと形態に関する使い分け
Excel形式のファイルはこちら

 また、目的別にどのようなコミュニケーションの形態を最も利用するかについて見ると、緊急に知りたい用事があるときには通話を利用する人が7割以上であった(図表1-3-24)。一方、緊急ではないが知りたい用事があるときには電子メールを利用する人が最も多く、電話によるコミュニケーションは即時性を重視する際のコミュニケーションとして利用されていることが分かる。
 
図表1-3-24 目的別のコミュニケーションツールの利用
図表1-3-24 目的別のコミュニケーションツールの利用
Excel形式のファイルはこちら

 また、普段コミュニケーションをとらない相手と話す場合においても、電子メールを利用する人が最も多く、緊密ではないが気軽にコミュニケーションをとる手段として、電子メールがコミュニケーションの範囲の拡大に寄与していると考えることができる。
 さらに、普段コミュニケーションをとる相手とのやりとりや、悩みの相談には、直接会うとする人が最も多く、特に緊密なコミュニケーションが必要な場合は、通話やメール等を利用しない人が多いことが分かる。
 一方、商品の内容や価格等の情報の収集や、コミュニケーション自体を楽しむ場合には、ホームページやブログ等のインターネットにおけるツールを利用する人が最も多い。コミュニケーションの目的によっては、従来のように相手を特定したクローズドなコミュニケーションではなく、相手を特定せず、内容を公開するオープンなコミュニケーションが利用されるようになってきたことが分かる。
 さらに、このようなコミュニケーションの多様化による影響として、携帯電話の利用によって固定電話の利用が減った人は75.1%に上り、固定電話を全く利用しなくなった人と合わせると8割以上の人が固定電話の利用が減少したと回答している(図表1-3-25)。また、携帯メールの利用によってパソコンメールの利用が減った人は、全く利用しなくなった人も含めて3割近くに上り、通話、メール共に携帯電話による利用が増加し、モバイル化が進展していることが分かる。
 
図表1-3-25 コミュニケーションの多様化の進展による変化
図表1-3-25 コミュニケーションの多様化の進展による変化
Excel形式のファイルはこちら

 一方、ブロードバンド回線の利用によって2割程度の人がパソコンメールの利用が増えたとしており、初めてパソコンメールを利用するようになった人と合わせると、約3割の人がパソコンメールの利用が増加したと回答している。このことから、インターネット利用環境の整備が利用を促進していることが分かる。
 ここ1〜2年のコミュニケーション全般の変化について見ると、4割以上が相手と積極的に連絡を取ったり、以前からの友人と連絡を取ったりするようになったとしており、頻度、深さともに以前より緊密なコミュニケーションを行うようになったと実感する人が多い(図表1-3-26)。一方で、顔を知らない友人と連絡を取るようになったとする人も15%程度いる。これは、SNSやブログの普及によって、現実社会では見知らぬ相手とも情報を交換したり、議論を行ったりすることが一般化してきたことによるものと考えられる。
 
図表1-3-26 ここ1〜2年のコミュニケーション全般における変化
図表1-3-26 ここ1〜2年のコミュニケーション全般における変化
Excel形式のファイルはこちら

 また、他の人の意見によって自分の考えが深まった、新たな価値観を得た、又は興味・関心を他と共有して一緒に楽しむようになったとする人も3割から5割程度に上り、他とのコミュニケーションによって自分自身に変化があったと感じる人も多いことが分かる。
 さらに、興味がなかったことに興味が沸くようになったとする人が半数近く、興味のあるものを積極的に調べるようになったとする人が6割以上に上り、興味の範囲や深さが拡大している傾向がうかがわれる。これは、インターネット利用によって情報の検索、収集等が容易になったこととも関係していると考えられる。
 さらに、ホームページやブログ等によってインターネット上で情報発信する場合、実名を使う人は1割にも満たず、7割程度が仮名を、1割程度が匿名を利用するとしており、合わせて8割程度が実名を使わないとしている(図表1-3-27)。
 
図表1-3-27 インターネット上での情報発信の際の名前の公開
図表1-3-27 インターネット上での情報発信の際の名前の公開
Excel形式のファイルはこちら

 これまでは、このような情報伝達については、企業や既存メディア等の限られた特定の主体による情報発信が主流であったが、ブログ、SNS等によるフラットな双方向型の情報交流が進展する中で、情報発信を行う機会の増えた個人は、実名を使う必要がある場合のみ実名で、そうでない場合は仮名や匿名で、というような使い分けを行うようになったと見られる。
 面識のない相手との連絡や、仮名を使った情報発信等によるコミュニケーションの多様化は、一方で、コミュニケーションに対する不安や不信を招く可能性もある。誤解されたり傷つくことが多くなった、相手と連絡を取っていないと落ち着かなくなった、又は行動が束縛されていると感じるようになった、とする人がそれぞれ1割近くに上っている(図表1-3-26)。
 ユビキタスネットワークの進展に伴い、インターネット上のみでのコミュニケーション、あるいは現実社会とインターネット上の双方にまたがるコミュニケーション等により、規模、範囲、密度、開放性等の点で現実社会とは異なる特性を持つバーチャルな人間関係が構築されつつある。言い換えれば、従来のような地縁や血縁を中心とした人間関係ではなく、いわばネットワークを縁とした新たな人間関係の出現によって、相手と程良いコミュニケーションを実現したり、コミュニケーションをうまく維持したりすることができないケースが生じている。今後、このようなコミュニケーションの変化に適応することが難しい層もあることを十分認識していくことが重要と考えられる。

 第3節 情報通信と社会生活

テキスト形式のファイルはこちら

第1章第3節3(1)ネットワーク利用による社会生活の変化 に戻る コラム Second Life(セカンドライフ) に進む