平成20年版 情報通信白書

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第1章 活力あるユビキタスネット社会の実現

第1節 情報通信による地域経済の活性化

1 情報通信による地域経済成長

(1)日本の経済成長と地域経済の発展

 我が国は、今後、少子高齢化が急速に進み、2055年には、合計特殊出生率が1.26、65歳以上の高齢者が総人口の40.5%を占め、総人口も現在より約3,800万人減少する超少子高齢社会を迎えると予想される1(図表1-1-1-1)。少子高齢化が現在のペースで進み人口が減少していくと、中長期的には、生産活動に携わる労働力人口が減少する。国の供給能力は、主として労働力と資本の二つによって支えられていることから、労働力人口の減少は、一国の経済成長に対して負の影響を与える。そのような状況の下で、経済成長を維持していくためには、減少した労働力を補い、かつ、それを上回るような新たな供給能力の源泉が必要となる。
 
図表1-1-1-1 我が国の人口の推移と将来推計
図表1-1-1-1 我が国の人口の推移と将来推計
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 日本の経済水準を見ると、2006年の日本の一人当たり名目GDPは、OECD加盟国中18位、労働生産性(就業者一人当たり付加価値)は、同20位となっており、世界における今日の日本の位置付けは、決して高くはない(図表1-1-1-2)。今後、日本経済が更に成長していくためには、国民の多様な考え方を活用し、新たな付加価値を創出していくことが必要である。とりわけ、地域経済の発展は、これからの日本の経済成長にとって非常に重要である。
 
図表1-1-1-2 OECD諸国の一人当たり国内総生産(名目GDP)ランキングにおける日本の順位の推移
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 しかしながら、近年の地域経済を取り巻く環境は急速に変化しつつある。少子高齢化の進展はもとより、ICTの普及に伴う経済活動のグローバル化と世界を相手にした市場競争、公共事業を軸とした高度経済成長期の成長モデルからの転換等、地域経済は様々な課題を抱えている。
 地域の経済活動を支える人口の移動状況を見ると、東京、大阪、名古屋の三大都市圏では、人口が増加している一方、その他の地域では人口が減少している(図表1-1-1-3)。その結果として、地域社会では、住民の社会生活を支える施設の利用が不便になったり、伝統工芸や地域固有の文化の喪失により地域の魅力が薄れ、更に人口が減少するという悪循環に陥っている。また、人口の減少により、労働力の確保が困難となった場合には、地域からの企業の流出を招くことが想定される。それは財政面で税収を低迷させ、自治体の財政を悪化させる。さらに、自治体財政の悪化は、行政サービスの低下につながり、人口流出が一層深刻化するという負の連鎖を引き起こしかねない。
 
図表1-1-1-3 人口増減率の推移
図表1-1-1-3 人口増減率の推移
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 このような負の連鎖から脱却するためには、人口減少下においても地域の生産活動を活性化し、それぞれの地域が経済成長を達成していくことが必要である。


1 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成18年12月推計)」に基づく。データはいずれも「出生中位(死亡中位)」による

 第1節 情報通信による地域経済の活性化

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