平成20年版 情報通信白書

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第1章 活力あるユビキタスネット社会の実現

(5)「富士山型」から「八ヶ岳型」へ 〜新たな経済成長モデルの姿

 我が国は、欧米先進国に対するキャッチアップ型の経済成長を達成し、1980年代後半から1990年代にかけては、世界的にも非常に高い経済水準を達成した。この過程においては、首都圏を中心とする一部の地域に、人材、企業、資金、情報が集中し、日本の経済成長は、こうした地域における経済成長に大きく依存してきた。
 しかしながら、我が国経済は成熟期に突入し、キャッチアップ型の経済成長は過去のものとなりつつある。少子高齢化といった社会構造の変化やグローバル競争の激化に対応しながら、日本経済が今後も経済成長を達成していくためは、各地域の多様性を認め、それぞれの地域が自立して新たな付加価値を生み出す成長モデルへと転換していくことが必要である。そのために各地域は、それぞれの特徴や個性を踏まえ、持てる資源を効率的に活用しながら活力を高め、地域の特色ある発展を達成する努力を行うことが重要である。
 このことはすなわち、首都圏等のごく一部の地域だけが日本の経済成長をけん引する「富士山型」の成長モデルから、各地域が、それぞれの固有資源や知識・情報を生かし、独自性を発揮することで、各地域の経済力を全体として底上げしつつ経済成長を達成する「八ヶ岳型」の成長モデルへの転換を指している。
 (4)のシミュレーションからは、情報通信資本装備率の低い地域において情報通信資本の蓄積を重点的に進めることによって、我が国のユビキタス化を国内全体として底上げし、それにより高い経済成長を達成することが可能であることが示された。
 この結果は、情報通信資本装備率の低い地域の方が、これまでユビキタスネットワークを利用したことがない潜在的な利用主体や、利用したことがあっても使いこなすまでには至っていなかった利用主体が多く、情報通信資本の蓄積を進めることによって、こうした主体がユビキタスネットワークを新たに利用するようになり、更に使いこなすようになることで、それら地域の経済成長の底上げを促すと同時に、日本経済全体に対してより大きな効果を生み出すことを意味しているものと考えられる。

 第1節 情報通信による地域経済の活性化

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(4)地域間の資本の配分による経済全体への影響 に戻る 第1章第1節2(1)地域間デジタル・ディバイド解消の意義 に進む