平成20年版 情報通信白書

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第1章 活力あるユビキタスネット社会の実現

(2)ICT活用の鍵となる要因

ア 人口規模と情報化関連予算割合
 全国1,748の市区町村を人口規模別に、30万人以上の市区、30万人未満の市区、町村の三つに分け、さらに、それぞれの市区町村の予算全体に占める情報化関連予算の割合ごとに、ICT総合活用指標の平均値をとったものが図表1-1-3-11である。人口規模別に見ると、30万人以上の市区のICT総合活用指標が最も高く、次いで、30万人未満の市区、町村の順になっており、人口規模が大きい市区ほど、ICTの活用が進んでいる傾向にあるといえる。また、情報化関連予算の割合に着目すると、いずれの人口規模別グループにおいても、情報化関連予算の割合の違いによって、ICT総合活用指標に大きな差異は見られない。
 
図表1-1-3-11 ICT総合活用指標 (人口規模×情報化関連予算割合)
図表1-1-3-11 ICT総合活用指標 (人口規模×情報化関連予算割合)
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 このことは、ICTの活用状況は、各市区町村の人口規模によって差があるものの、情報化関連予算の割合の大小にはあまり影響されないことを示すものである。予算を増やしても必ずしもICTの活用が進むわけではなく、予算を効率的、効果的に使うことがより重要であると考えられる。

イ 推進体制の整備と情報化関連予算割合
 限られた予算で高い効果を上げるためには、組織体制の整備や情報化に取り組む上での工夫等が重要になると考えられる。そこで次に、全国1,748の市区町村を、専担の情報化担当部署の有無及び情報統括責任者(CIO)の設置15の有無によって4区分に分け、情報化関連予算の割合別に見たものが図表1-1-3-12である。これを見ると、専担の情報化担当部署のある市区町村のほうが、ICT総合活用指標は高い傾向にあることが分かる。さらに、専担の情報化担当部署のある市区町村でも、そうでない市区町村でも、CIOを設置している市区町村の方が、ICT総合活用指標はおおむね高い傾向にある。なお、専担の情報化担当部署がありCIOを設置していない市区町村を除いては、情報化関連予算の割合による活用指標への影響は見られなかった。これは、予算が少なくても、推進体制を整備し、限られた予算を効率的に使うことができれば、ICTの積極的な活用を進めることができることを示すものであるといえる。
 
図表1-1-3-12 ICT総合活用指標 (推進体制×情報化関連予算割合)
図表1-1-3-12 ICT総合活用指標 (推進体制×情報化関連予算割合)
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ウ 推進体制の整備、情報化計画の策定と情報化関連予算割合
 全国1,748の市区町村を、推進体制の整備状況(専担の情報化担当部署の有無及びCIOの設置の有無)と情報化計画16の有無によって4区分に分け、情報化関連予算の割合別にICTの活用状況を見たものが図表1-1-3-13である。これを見ると、推進体制を整備し、情報化計画を策定している市区町村と、いずれも行っていない市区町村を比較すると、ICT総合活用指標の平均点に2倍以上の差がある。これは、専担の情報化担当部署やCIOの設置といった推進体制の整備に加えて、情報化計画の策定を行うことがより効果的なICTの活用につながる可能性を示すものであるといえる。
 
図表1-1-3-13 ICT総合活用指標 (推進体制×情報化計画×情報化関連予算割合)
図表1-1-3-13 ICT総合活用指標 (推進体制×情報化計画×情報化関連予算割合)
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エ 人口規模、広域連携と情報化関連予算割合
 全国1,748の市区町村を、人口規模及び情報化関連予算の割合ごとに分け、それぞれにおいて、アプリケーションの開発に当たり近隣市区町村との広域連携を実施しているか否かによって、ICTの活用状況を見たものが図表1-1-3-14である。同じ予算割合の市区町村間で比較すると、いずれの人口規模においても、広域連携を実施している市区町村のほうが実施していない市区町村よりもICTの活用が進んでいることが分かる。情報化関連予算の割合に着目すると、30万人以上の市区では予算割合が大きいほど広域連携実施の有無によるICT活用の差が大きくなっているが、30万人未満の市区及び町村では予算割合が小さい方が広域連携実施の有無によるICT活用の差が大きくなっている。人口規模が小さく、予算割合が小さい市区や町村では、予算や人材等の面で自らの行政区のみで実施できることが限られており、近隣市区町村との連携を行ったほうが効率的、効果的なICTの活用が可能になると考えられる。
 
図表1-1-3-14 ICT総合活用指標 (人口規模×広域連携×情報化関連予算割合)
図表1-1-3-14 ICT総合活用指標 (人口規模×広域連携×情報化関連予算割合)
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 近隣市区町村との連携形態の一つが、地域情報プラットフォームの利用である。地域情報プラットフォームとは、地域内の様々な公共情報システムを連動させ、又は地域を越えて連携させるための共通基盤のことを指す。これまでは、多くの自治体がそれぞれにおいてシステムの開発、運用を行ってきたが、個別のシステム導入は、システムが開発事業者独自の仕様で構成されているため、他の事業者の参入が困難で競争環境がなく、コストの高止まりにつながると考えられる。また、システム間連携が困難であり、各システムが類似した機能を重複して保有するという問題点がある。地域情報プラットフォームの利用は、自治体が個別にシステムを開発、運用する非効率性を回避し、特定の開発事業者への過度の依存、すなわちレガシーシステムからの脱却に有効であると考えられる。それに加えて、地域情報プラットフォームの導入によってシステム間での連携が容易になるため、複数の部門にまたがる行政サービスを一つの窓口で受け付けて処理するワンストップサービスの実現が可能になり、住民や民間企業にとっても利便性が大きく向上することが期待される。

オ 国の支援策の効果
 全国1,748の市区町村を、人口規模及び総務省が実施している地域情報化推進のための各種支援策の利用の有無の別にICTの活用状況を見たものが図表1-1-3-15である。これを見ると、いずれの人口規模グループにおいても、支援策を利用している市区町村のほうが利用していない市区町村よりもICTの活用が進んでいることが分かる。したがって、国の支援策は、ICTの活用度を高めるという意味において、一定の効果を上げていることが分かる。この背景としては、支援策を利用しようとする市区町村ほど、地域の情報化推進に対する意識が高く、ICTを積極的に活用しようとする意欲が強いこと、ネットワーク基盤整備に対する支援策の中に、補助事業の申請に当たり、ネットワーク構築後に提供される具体的なアプリケーションを明示することを求めているものがあること等が考えられる。
 
図表1-1-3-15 ICT総合活用指標 (人口規模×国の支援策利用)
図表1-1-3-15 ICT総合活用指標 (人口規模×国の支援策利用)
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 さらに、全国1,748の市区町村を、推進体制の整備状況(専担の情報化担当部署の有無及びCIOの設置の有無)と国の支援策利用の有無によって4区分に分け、情報化関連予算の割合別にICTの活用状況を見たものが図表1-1-3-16である。これを見ると、国の支援策を利用していても、推進体制を整備している市区町村と、整備していない市区町村では、ICT総合活用指標の平均点に2倍程度の差があることが分かる。
 
図表1-1-3-16 ICT総合活用指標 (推進体制×国の支援策利用×情報化関連予算割合)
図表1-1-3-16 ICT総合活用指標 (推進体制×国の支援策利用×情報化関連予算割合)
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 したがって、国の支援策を受ければICTの活用が必ず進むというわけではなく、推進体制の整備等、市区町村の創意工夫によって国の支援策を十分生かすことが、ICTの活用を効果的に進める上で鍵になるといえる。


15 ここでは、専任のCIOを設置している場合に加え、首長等がCIOを兼任している場合も含む
16 ここでの「情報化計画」とは、各自治体が独自に定める情報化基本計画等、情報化分野に特化して、対住民サービスや庁内事務等におけるICT導入・活用に関する施策の方向性や具体的施策等を定めたものを指す

 第1節 情報通信による地域経済の活性化

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