平成20年版 情報通信白書

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第1章 活力あるユビキタスネット社会の実現

(3)TFP成長と労働生産性向上

 労働生産性成長に対するTFP成長の寄与について、日本と米国で比較したものが図表1-2-4-7である。米国の労働生産性は、1990年以降、一貫して成長しており、2000年から2006年の間の成長率は2.7%であった。これに対して、日本の労働生産性は、ほぼ横ばいで推移しており、同期間の成長率は米国を下回る2.1%であった。
 
図表1-2-4-7 労働生産性成長に対するTFP成長の寄与
図表1-2-4-7 労働生産性成長に対するTFP成長の寄与
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 労働生産性成長の要因を比較すると、米国においては、1990年代以降、TFP成長率が1%以上労働生産性を押し上げているが、日本ではその効果は極めて小さく1%未満にとどまっている。一方、日本では、TFP成長率の寄与度が高まってきてはいるものの、一般資本の深化(資本装備率の上昇)の寄与度が一貫して最も大きくなっている。つまり、米国の労働生産性の成長は、TFP成長率によるところが大きいのに対して、日本の労働生産性成長は、資本の深化によるところが大きいという特徴があることが分かる。
 また、日本の労働生産性成長を、製造業、サービス業の別に比較してみると、製造業では2000年から2006年の間に4.69%という高い労働生産性成長を達成したのに対し、サービス産業の労働生産性成長率は1.20%にとどまっており、サービス産業の低い労働生産性成長が、日本全体の労働生産性成長を押し下げていると考えられる(図表1-2-4-8)。成長の要因を見ると、特にTFP成長率の寄与度に大きな差があることが分かる。製造業では、労働生産性の成長率4.69%に対して、TFP成長率の寄与度が2.89%、サービス産業では、労働生産性の成長率1.20%に対して、TFP成長率の寄与度が0.16%となっており、これが、製造業とサービス産業の労働生産性成長に大きな差が生じた要因の一つであると考えることができる。
 
図表1-2-4-8 労働生産性成長率に対する寄与度(2000〜2006年)
図表1-2-4-8 労働生産性成長率に対する寄与度(2000〜2006年)
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 TFPは、資本や労働といった生産要素の投入量の変化では説明されないその他すべての要因を含んでおり、その要因を特定することは容易ではない。具体的には、技術進歩や業務効率性の改善、組織改革や制度変革、景気変動等、様々な要因を含んでおり、導入したICTを使いこなす環境や体制の整備もTFPに含まれると考えられる。日本においては、特にサービス産業を中心に、ICTを積極的に導入するとともに、意思決定の迅速化や業務プロセスの見直しといった組織変革を進めることによってTFP成長を図り、それを労働生産性の向上へとつなげていくことが今後の課題であるといえる。

 第2節 情報通信産業の成長と国際競争力の強化

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