平成20年版 情報通信白書

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第1章 活力あるユビキタスネット社会の実現

コラム 子どものつくり出すケータイ文化

 インターネットは、日常生活の中で欠かせない存在となり、子どもたちがインターネットに触れる機会も増えている。特に、子どもたちの世代は、携帯電話を通じたインターネット利用が進んでおり、子どもたちの日常生活の中に深く浸透しているといえる。小学生の約3割、中学生の約6割、高校生の9割以上が、携帯電話及びPHSを通じてインターネットを利用しているともいわれており、高校生においては、インターネット機能付きの携帯電話を「持っているのが当たり前」という状況になっている。
 携帯電話は、その名のとおり、基本的には通話を行うための機器であるが、子どもの世代ではメールによるコミュニケーションの方が、電話によるそれよりも好まれていると見られる。子どもたちは、携帯電話のメールを、外出時の親との連絡手段や、転校等で離ればなれになってしまった友人との連絡手段等、遠隔地にいる人との手軽なコミュニケーションツールとして利用するだけでなく、直接、口には出しにくい悩みをメールで相談したり、メールを使って親と率直な対話を行ったりといった、身近な人々とのコミュニケーションを深化するための手段としても活用している。子どもたちにとって携帯電話は、もはや単なる情報伝達手段ではなく、人間関係を構築するための礎の一つとなっており、その生活からは、切っても切り離せないものとなっているといえる。
 また、子どもたちは、携帯電話を通じて、インターネットも積極的に活用している。音楽のダウンロードやゲームといったコンテンツを、受け手として楽しむだけではなく、掲示板やSNS、プロフ、ブログ、更には携帯小説といった形で、コンテンツの発信を活発に行っている。例えば、掲示板やSNS等は、友人との関係の深化や、真剣に悩みを聞いてくれる人との新たな出会い等、充実した人間関係の構築に活用されるほか、携帯小説は、主に女子学生の書いたものが日々掲載され、中には書籍化されてベストセラーとなり、映画化される作品も登場するなど、子どもたちの才能が発揮され、いわゆる「ケータイ文化」が創出される場としての機能を担いつつある。
 ここまで述べた以外にも、場所を選ばず情報収集が可能であるといった利便性や、常に子どもと連絡が取れるという安心・安全面の確保の観点からも、子どもが携帯電話を持つことにはメリットが多いと考えられる。特に、子どもの安全確保という点では、GPS機能を利用することで、保護者等が子どもの現在地を手軽に確認することが可能であり、比較的年齢の低い世代にも携帯電話が与えられる大きな理由の一つとなっている。
 一方、多くの報道がなされているように、携帯電話を通じて危険に遭遇したり、不快な思いをさせられることがあるのも事実であり、例えば、平成19年中に、出会い系サイトを利用して犯罪被害にあった18歳未満のうち、出会い系サイトへのアクセス手段として携帯電話を利用した被害者数は、1,062人に上っている。また、「学校裏サイト」と呼ばれる掲示板上で、同級生から誹謗中傷を受け、心に深い傷を負う子どももいるほか、その他のいわゆる「有害情報」が子どもに与える影響も心配されている。確かに、こういったインターネットの負の部分と、そこから子どもに及ぶ危険への対策は非常に重要な課題であり、総務省としても、フィルタリングの普及促進やリテラシーの向上に取り組んでいる。
 ただし、このような負の部分があることを受けて、携帯電話の利用自体を問題視するよりも、携帯電話を通じて遭遇しうる危険について、子どもも保護者もしっかりと理解し、それを踏まえて携帯電話の適切な利用の方法を学び、上述のような携帯電話の有用性のみを引き出せるように努力することが肝要だと考えられる。そのためにも、総務省をはじめとする関係省庁による啓発活動等の取組のより一層の推進が求められる。
 以上のように、有害情報と出会う危険性は存在しつつも、大多数の子どもたちは携帯電話を通じて、メールやインターネットを自在に操り、楽しんでいる。そこには、単なる娯楽だけではなく、友人や先輩に真剣な悩みを相談したり、すれ違いがちな親とのコミュニケーション構築の端緒としたりするなど、子どもたちが他人との正しい付き合い方を模索する上での優れたツールともなりうる可能性がある。また、次世代のユビキタスネット社会の中心を担う世代が、SNSや携帯小説という形で若いころから情報発信を行うことは、子どもたちの人格形成、日本の情報通信産業やコンテンツの今後の発展、さらには、日本文化に新たな息吹を与えうるという点から喜ばしいことであり、今後、更に健全に発展していくことが期待される。

 第3節 ユビキタス化がもたらす新たな国民生活

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