平成20年版 情報通信白書

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第2章 情報通信の現況

(2)EUの情報通信政策の動向

ア EU
 欧州委員会は、2007年(平成19年)11月、規則の合理化、欧州域内における規制の調和等を目的として、現行の通信規制パッケージ(2002年成立)の見直し案を公表した。今回公表されたのは、現行の通信規制(電子通信枠組み指令、アクセス指令、認可指令、ユニバーサルサービス指令及び電子通信プライバシー指令)の改正に関する指令案二つと、汎欧州的な電子通信市場規制機関(EECMA:European Electronic Communications Market Authority)の設置に関する規則案である。これらは、欧州理事会及び欧州議会における審議を経て、2009年(平成21年)中に採択、2010年(平成22年)中に施行される予定である。
 通信・放送融合分野でも、従来の「国境なきテレビ指令」にかわる「視聴覚メディアサービス(AVMS)指令」が、2007年(平成19年)12月に発効した。近年のメディア技術の展開とそれに伴うサービスの融合によって、視聴者のメディア視聴形態が変化していることを受け、新指令では、規制対象が、従来の規制対象であった「テレビ放送」から、事業者編集責任の下での電子通信による公衆向け動画伝送一般を指す「視聴覚メディアサービス」に拡大された。「視聴覚メディアサービス」は、送信側がスケジュール編成を行う「リニア・サービス」と受信側が視聴タイミングを選択する「ノンリニア・サービス」とに区別され、前者については基本的な規制及び追加的な規制が課され、後者については基本的な規制のみが課される形となっている。

イ イギリス
 2007年(平成19年)9月、情報通信庁(OFCOM:Office of Communications)は、将来的なブロードバンド・サービス提供のための次世代アクセス(NGA:Next Generation Access)網に関し、同インフラの将来的規制の在り方に関する諮問を開始した。同諮問文書では、ブロードバンド及びインフラに関しての現状分析と今後の見通しの分析を行い、ネットワーク・プロバイダは消費者需要にかなうサービスを提供しておりサービス改善も継続して実施しているが、現在のインフラのままでは消費者が必要とする超高速ブロードバンドの提供は困難であると判断した。さらに、超高速ブロードバンドの需要等については、民間事業者による時機を得た、かつ効果的なNGA網への投資を支援するため、従来の基本的な規制の3原則、[1]競争の促進、[2]新サービスから得る消費者・ビジネス利益の最大化を目的としたイノベーション領域の最大化、[3]市場影響力を持つネットワーク・オペレータが、その影響力に応じたインフラを整備し、競争事業者にも提供するという「等価性」の採用に加え、新たな規制の2原則、[4]規制には、NGA網整備に伴う非常に大きな商業的投資リスクを反映させる、[5]長期にわたるNGA網への投資を進めるため長期的な透明性のある規制の実施が必要であるとしている。
 また、2008年(平成20年)2月には、文化・メディア・スポーツ省とビジネス・企業・規制改革省の共同主催で「融合シンクタンク(CTT)」を立ち上げ、通信・放送融合時代の課題について検討していくこととしている。

ウ フランス
 2006年(平成18年)に引き続きフランス・テレコムによる加入者回線の新規参入事業者への開放が進んでいる。特にメタル回線全体を提供するフルアンバンドルの増大が目立ち、2007年(平成19年)9月には回線の高周波部分のみを貸与するラインシェアリングの2倍以上となった。開放回線数は約700万で、人口の68%が何らかの形で開放回線を利用することが可能である。また、開放回線のうち62%は、フランス・テレコムとの回線契約が不要となっている。超高速ブロードバンド市場規制については、第一に加入者宅への光ファイバ引き込みに際して、フランス・テレコムがほぼ独占している管路(とう道)の開放、第二に新たに光ファイバを敷設する建物内での配線の共有化の2点が中心に議論された。独立規制機関である電子通信・郵便規制機関(ARCEP)は、2007年(平成19年)9月にこの二つの課題についての公開協議を開いており、その結果を踏まえ、前者についてはフランス・テレコムが自主的に2008年(平成20年)中の管路のリース開始を発表し、後者については2008年(平成20年)中に法制化することが予定されている。また、政府は、2012年(平成24年)までに400万人が光ファイバサービスに加入すること、ARCEPは、2015(平成27年)年までに人口の50%を光ファイバに接続可能とするという新たな目標を設定した。

 第6節 海外の動向

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