平成20年版 情報通信白書

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第3章 情報通信政策の動向

(2)電波利用の高度化・多様化に向けた取組

ア 移動通信システム・無線アクセスシステムの高度化
(ア)広帯域移動無線アクセスシステムの導入及び第3世代移動通信システムの高度化に向けた取組
 近年、インターネット接続や動画像伝送等、携帯電話によるデータ通信の需要は拡大の一途であり、より高速・大容量の通信が可能な利便性の高い移動通信システムの導入が期待されてきたところである。また、ADSLやFTTHが利用できない条件不利地域において、無線を活用し、有線と同等のブロードバンドサービスの提供を可能とする移動通信システムの導入が期待されてきたところである。これらのニーズに対し、総務省は、平成16年頃から、ワイヤレスブロードバンドの実現に向け、WiMAXや次世代PHSといった広帯域移動無線アクセスシステム(BWA:Broadband Wireless Access)の導入や第3世代移動通信システムの高度化に向けた取組を行っている。
 BWAについては、平成18年以降、円滑な導入に向けて必要な関係規定の整備等に取り組み、全国でサービスを提供する事業者2者と、地域ごとにサービスを提供する事業者に周波数を割り当てることとした。
 全国でサービスを提供する事業者については、総務省は、平成19年9月から10月までの約1箇月間参入の申請を受け付けたところ、4者から申請があり、比較審査の結果、同年12月、ワイヤレスブロードバンド企画株式会社(現UQコミュニケーションズ株式会社)と株式会社ウィルコムの2者の参入が認められた。両者とも2009年春頃のサービス開始を予定しており、総務省は、両者の事業の進捗状況を注視しているところである。
 地域におけるBWAの導入に向けては、総務省は、平成20年1月に審査基準を公表しており、各地域においてBWAのサービスを提供する事業者は、ブロードバンド・ゼロ地域の解消等当該地域の公共の福祉の増進に寄与することが求められている。また、総務省は、同年3月から免許申請の受け付けを開始したところである。
 第3世代移動通信システムの高度化については、従来より高速・大容量の通信が可能となる3.9世代移動通信システムの国際標準化作業や実用化に向けた取組が進められている。これを受け、我が国では平成20年4月より情報通信審議会において「第3世代移動通信システムの高度化のための技術的方策」について審議が開始されたところであり、今後、国内外の技術開発の動向やサービス利用のイメージ、周波数の有効利用を考慮しつつ、検討がなされる予定である。

(イ)第4世代移動通信システムの研究開発及び国際標準化の推進
 第3世代携帯電話(IMT-2000)の次の世代となる、いわゆる第4世代移動通信システム(IMT-Advanced)は、高速移動時で100Mbps、低速移動時で1Gbpsの実現を目標に、2011年(平成23年)ごろを目指して国際電気通信連合(ITU:International Telecommunication Union)において標準化作業が続けられている。2007年(平成19年)10月から開催されたITUの世界無線通信会議(WRC-07)において、IMTに使用する新たな周波数として、[1]3.4-3.6GHz、[2]2.3-2.4GHz、[3]698-806MHz、[4]450-470MHzの計428MHzが確保された。
 総務省では、第4世代移動通信システムについて、2011年(平成23年)ごろの実現を目指して、産学官の連携の下、研究開発及び国際標準化に向けた取組を積極的に推進している。

(ウ)5GHz帯無線アクセスシステムの普及に向けた取組
 総務省では、5GHz帯を使用する高出力の無線アクセスシステムについて、需要の見込まれる大都市圏(東名阪の区域)においては平成17年12月に全国に先駆けて登録制度を導入した。それ以外の区域についても、平成19年11月末に同周波数帯を使用する電気通信業務用固定局の使用期限が到来し、無線アクセスシステムの利用が可能となったため、関係規定の整備を行い、同年12月1日から登録可能区域を全国に拡大した。

イ 自営系移動通信システムの高度化
(ア)950MHz帯アクティブ系小電力無線システムの技術的条件及び950MHz帯パッシブタグシステムの高度化に必要な技術的条件の検討
 950MHz帯アクティブ系小電力無線システム及び950MHz帯パッシブタグシステムは、今後のユビキタスネット社会の実現に向けて、生産、物流、医療及び交通といった幅広い分野において大きな役割を果たすことが期待されている。
 情報通信審議会は、情報通信技術分科会小電力無線システム委員会において、平成16年6月から審議を行ってきた、「950MHz帯アクティブ系小電力無線システムの技術的条件」及び「950MHz帯パッシブタグシステムの高度化に必要な技術的条件」に関して平成19年12月に答申を行った。これを受けて、総務省は関係規定の整備を行った。

(イ)簡易無線局等のデジタル化、電波を利用した動物等の位置検知・通報システム導入等に向けた検討
 近年、MCA無線や簡易無線局等の自営系移動通信は、システムの大小問わず様々な分野で広く活用されている。
 情報通信審議会は、情報通信技術分科会小電力無線システム委員会において、自営系移動通信のうち、主に中小企業や個人で用いられる小電力の小規模なシステムの更なる利活用・高度化に向け、簡易無線局等のデジタル化、電波を利用した動物等の位置検知・通報システムの導入等に向けた検討を行い、それらに必要となる技術的条件について、平成20年3月、一部答申を行った。今後、総務省では、この答申を踏まえ、速やかに制度整備を進めていく予定である。

ウ ITSの推進
 ITS(Intelligent Transport System:高度道路交通システム)は、最先端の情報通信技術を活用することにより、渋滞、交通事故、環境悪化等の道路交通問題の解決を図るためのシステムであり、政府は、「IT新改革戦略」及び「重点計画-2007」において、世界一安全な道路交通社会をITSによって実現することを重点施策として掲げている。
 総務省では、平成18年4月から開催されている「ITS推進協議会」において、内閣官房、警察庁、経済産業省、国土交通省、日本経団連、ITS Japanとともに、平成20年度の安全運転支援システムの大規模実証実験の実現に向けて検討を行っているほか、研究開発については、平成17年度から3箇年計画で、車車間通信技術や路車間通信技術、地上デジタル放送のITS応用技術等により、車・道路・人を有機的に結合させ、道路交通分野においてもユビキタスネットワーク環境を享受できるユビキタスITSの実現を目指し、「ユビキタスITSの研究開発」を進めているところである。
 さらに、総務省では平成19年度から、路車間通信・車車間通信の実現に向けて、安全運転を支援する技術についての実証実験を行っているところである。
 
図表3-2-3-3 ユビキタスITSの研究開発
図表3-2-3-3 ユビキタスITSの研究開発

 第2節 情報通信政策の展開

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