平成20年版 情報通信白書

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第3章 情報通信政策の動向

(3)国際機関及び多国間関係(アジア・太平洋地域関係を除く)における国際政策の展開

ア 戦略的な国際標準化活動の強化
 技術革新が著しいICT分野で、欧米に加えて中国や韓国が積極的に標準化に取り組む中、今後、我が国が国際競争力を強化していくためには、諸外国のニーズを踏まえて、海外展開のターゲットとなる技術やシステムを明確化し、産学官が連携して、国際標準化から、技術の製品化、システムの他国への売り込みまでの一連の活動を戦略的に進めることが不可欠である。
 このため、平成19年8月に情報通信審議会に「我が国の国際競争力を強化するための研究開発・標準化戦略」について諮問し、平成20年6月には、
[1] 我が国が重点的に国際標準化活動に取り組むべき技術分野におけるICT標準化戦略マップ及びICTパテントマップの策定方針
[2] 国際標準化活動に携わる人材の育成方法
[3] 産学官の連携によりこれらの活動を統括するICT標準化・知財センターの設置
等の国際標準化活動の強化策等が答申として取りまとめられた。
 総務省は、今後、ICT標準化・知財センターを中心として、戦略的な国際標準化活動の強化を図ることとしている。
 
図表3-6-1-1 ICT国際標準化戦略の推進体制
図表3-6-1-1 ICT国際標準化戦略の推進体制

イ 国際電気通信連合(ITU)活動への参加
 電気通信に関する国連の専門機関である国際電気通信連合(ITU)は、
[1] 無線通信部門(ITU-R:ITU Radiocommunication Sector)
[2] 電気通信標準化部門(ITU-T:ITU Tele-communication Standardization Sector)
[3] 電気通信開発部門(ITU-D:ITU Tele-communication Development Sector)
の3部門から成り、周波数の分配、電気通信技術の標準化及び開発途上国における電気通信分野の開発支援等の活動を行っている。我が国は、各部門へ研究委員会の議長・副議長及び研究課題の責任者を多数輩出し、勧告を提案するなど、積極的に貢献を行っている。

(ア)ITU-Rにおける取組
 ITU-Rでは、あらゆる無線通信業務による無線周波数の合理的、効率的、経済的かつ公正な利用を確保するため、周波数の使用に関する研究を行い、無線通信に関する標準を策定するなどの活動を行っている。近年では第4世代移動通信システム(IMT-Advanced)、広帯域無線アクセスシステム(BWA)等の標準化作業が活発に進められている。
 2007年(平成19年)10月にスイスのジュネーブにて無線通信総会(RA-07)が開催され、ITU-R部門全体の作業方法の見直しや勧告及び次研究会期(2008から2011年まで)の研究課題の承認等が行われた。まず、研究体制を見直し、衛星通信や地上での無線通信を扱っていた三つの研究委員会(SG)が、二つのSGに再編されることとなった。次に、ITU−Rの各SGの議長、副議長が選出され、日本からはSG4(衛星業務)副議長、SG5(地上業務)議長、SG6(放送業務)副議長が任命を受けた。また、IMTの名称に関する新決議が承認され、IMT-Advanced国際標準化の基本指針に関する新決議やIMT-2000の詳細無線インタフェース勧告の改訂等について承認された。
 さらに、RA-07に引き続き、世界無線通信会議(WRC-07)が開催され、国際的な周波数分配等、電波に関する国際的秩序を規律している無線通信規則の改正等が行われた。その結果、IMT(第3世代及び第4世代移動通信システム)に使用する新たな周波数の確保や航空管制用の周波数の確保等が決定された。

(イ)ITU-Tにおける取組
 ITU-Tでは、通信ネットワークの技術、運用方法に関する国際標準の策定や、これに必要な技術的な検討を行っている。今会期(2005から2008年まで)においては、特に、次世代ネットワーク(NGN:Next Generation Network)、IPTV、IdM(ID管理)、ネットワーク型電子タグ(N-ID:Networked Identification)、ホームネットワーク(HN)等の新しいサービスにかかわる標準化が進められているところである。現在、研究委員会(SG)及び電気通信標準化アドバイザリグループ(TSAG)には、我が国から議長2名、副議長9名、多数の課題責任者を出しているほか、我が国から積極的な標準化活動を行っている。
 2008年(平成20年)10月には、南アフリカ共和国にて世界電気通信標準化総会(WTSA-08)が開催され、ITU-T部門全体の研究体制の再構成、作業方法の見直しや勧告の承認及び次研究会期(2009から2012年まで)の研究課題の承認等が行われる予定である。我が国は、WTSA-08に向けて、各SG会合やAPT(Asia Pacific Telecommunity)の関連会合等に対して寄与文書を提出するなど継続的に貢献し、各国の動向にも注意しつつ対処を検討していくこととしている。

(ウ)ITU-Dにおける取組
 ITU-Dでは、開発途上国における電気通信分野の開発支援を行っている。2006年(平成18年)3月には、ITU-Dの総会である世界電気通信開発会議(WTDC-06)が開催され、今後の活動指針となるドーハ宣言及び行動計画が採択された。同行動計画には、インフラ整備、技術開発、人材育成、災害時の支援等に関するプログラムが盛り込まれ、これらのプログラムに基づき、様々なプロジェクトの実施や各種ワークショップの開催といった活動が積極的に進められている。
 また、WTDC-06においては、我が国の提案により、途上国におけるITU技術標準の作成・活用能力の向上に取り組むべきことを内容とする決議が採択された。これを受け、アジア・太平洋諸国において標準化活動に従事する政府職員等を対象とする研修を総務省とITUとで共催する予定である。

ウ インターネットガバナンスフォーラム
 インターネットガバナンスフォーラム(IGF)は、世界情報社会サミット(WSIS)チュニス会合の結果に基づき、国際連合が事務局を設置し、インターネットに関する様々な公共政策課題について議論するフォーラムである。我が国は、政府・ビジネス部門・市民社会などのマルチステークホルダーによる「対話の場」としてのIGFの役割を積極的に支持しており、2007年(平成19年)11月の第2回会合には、総務省、日本経団連、学識者、NGO関係者等が参加した。
 第2回会合では、第1回会合(2006年(平成18年)11月:アテネ)の議題であった、自由な情報流通・表現の自由、インターネットにおけるセキュリティ、多様性、アクセスに加えて、「重要なインターネット資源」が新たな議題として取り上げられた。
 また、第2回会合の議長総括では、10億人が利用するまでに拡大したインターネットを次の10億人が速やかに利用できるようにすることの重要性や、IPv6の活用、サイバー犯罪に関する各国制度の調和等の重要性等が挙げられ、今後もこれらの重要課題について議論を継続していくこととされた。

エ 世界貿易機関(WTO)におけるドーハ・ラウンド交渉
 2001年(平成13年)11月から開始された世界貿易機関(WTO:World Trade Organization)ドーハ・ラウンド交渉では、サービス貿易分野において最も重要な分野の一つとされている電気通信分野について、一層の自由化に向けた積極的な交渉が展開されている。我が国は、WTO加盟国の中で最も電気通信分野の自由化が進展している国の一つであることから、諸外国に対して、一律に課せられている外資規制等の措置について、撤廃・緩和の要求を行っている。同ラウンド交渉は、2006年(平成18年)夏に各国の意見対立によりいったん中断されたが、2007年(平成19年)1月末に本格的に再開されており、現在、2008年(平成20年)内の妥結に向けて集中的な交渉が行われている。
 
図表3-6-1-2 インターネットガバナンスフォーラム(IGF)
図表3-6-1-2 インターネットガバナンスフォーラム(IGF)

 第6節 国際戦略の推進

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