平成21年版 情報通信白書

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第1部 特集 日本復活になぜ情報通信が必要なのか

第3章 日本復活へ向けた3つの挑戦

コラム 「交通・物流」や「電子商取引」等の先進サービスでも模範例となるデンマーク

 日本での情報通信利用が遅れている「医療・福祉」等の公的サービスでは日本とデンマークの比較から示唆を得たが、日本にとっての先進サービスでもデンマークとの比較が参考となる。図表1は、「文化・芸術」「交通・物流」「安心・安全」「電子商取引」の4分野における情報通信サービスの年代別利用率を、日本とデンマークで比較したものである。各分野とも、平均的な利用率では日本はデンマークにそれほど見劣りしない。しかし、4分野に共通して、日本は若年層と高齢層の利用率が低い「山型」を示すのに対し、デンマークは年齢層で大きな差のない「水平型」を示す。日本にとっての情報通信利用の先進分野でも、日本は利用率の世代間格差が大きいのに対し、デンマークでは格差が小さい結果となっている。
 
図表1 情報通信サービスの年代別利用率の二国間比較
図表1 情報通信サービスの年代別利用率の二国間比較
(出典)総務省「ICT関連動向の国際比較調査」(平成21年)
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 デンマークで世代間格差が小さい要因の一つとして考えられるのが、政府主導による普及啓発プログラムである。デンマーク政府は、2000年以降、あらゆる国民利用者のモチベーションを高めるため、情報通信利用による行政手続きの利便性や生活の質の向上等の普及啓発や、低所得者層に対する情報通信機器購入のアドバイス等の取組を行っているが、その代表例が市民向けITポータルサイト「it-borger.dk」である。図表2がそのサイトの画面だが、2007年には情報通信サービスに関する情報を一元的に集約するとともに、市民が情報スキルの自己診断をしたり、自宅のブロードバンド速度のテストをしたり、自分のニーズにあった携帯電話料金体系やブロードバンド・サービスパッケージを判断するツールなどを提供している。
 
図表2 デンマークの普及啓発サイト「it-borger.dk」
図表2 デンマークの普及啓発サイト「it-borger.dk」
「it-borger.dk」のホームページを引用
http://www.it-borger.dk/

 また、デンマーク政府では、2007年から国民の情報スキルのレベル調査を行っている。2008年2月の調査によれば、デンマーク人のおよそ3人に2人が「高」または「中」のスキルとなり、残りの20%が「低」スキル、19%は「コンピュータを使ったことがない」という結果が報告されている。この結果を受けて、デンマーク政府では、情報スキルの低いグループに焦点を当て、日常生活における情報通信利用による生活の質の向上についてのデモンストレーションなどの各種施策を展開中である1


1 デンマーク政府2008年3月「ITと電気通信政策レポート」より
  http://en.vtu.dk/publications/2008/it-and-telecommunications-policy-report-2008/it-and-telecommunications-policy-report-2008.pdf

 第2節 Collaboration:国民的課題を克服するための「協働」

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