平成21年版 情報通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
目次の階層をすべて開く目次の階層をすべて閉じる

第2部 情報通信の現況と政策動向

第5章 情報通信政策の動向

第3節 安心・安全なユビキタスネット社会の構築

1 電気通信サービスに関する消費者行政

(1)インターネット上の違法・有害情報対策

ア インターネット上の違法・有害情報への対応
 我が国におけるインターネットの普及はめざましく、国民の社会・文化・経済活動等あらゆる活動の基盤(社会インフラ)として利用され、国民生活に必要不可欠な存在となっている。一方で、急速なインターネットの普及は、違法・有害情報の流通等、負の側面も拡大させている。
 総務省では、これらの問題に対処することとして、平成17年8月から18年8月まで「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する研究会」1を開催し、主に民間事業者の自主的対応を中心として具体的な施策について提言してきたところである。しかしながら、その後も、主に携帯電話からの出会い系サイトの利用を通じて青少年が犯罪に巻き込まれる事件や、いわゆる「学校裏サイト」におけるネットいじめ等の問題が発生し、効果的なインターネット上の違法・有害情報対策の立遅れや法規制の導入も含めた対応策の強化の必要性を指摘する声が高まった。
 こうした声を受け、総務省では、平成19年11月から、「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」2を開催し、青少年に向けたフィルタリングの更なる導入促進、プロバイダ等による削除等の措置の支援、インターネットリテラシーの普及啓発等の違法・有害情報に対する総合的な対応について検討を行い、21年1月に最終取りまとめを公表した(図表5-3-1-1)。
 
図表5-3-1-1 インターネット上の違法・有害情報に関する総務省の取組
図表5-3-1-1 インターネット上の違法・有害情報に関する総務省の取組

 また、インターネット上の違法・有害情報対策に関する包括的な政策パッケージとして、平成21年1月に「安心ネットづくり」促進プログラムを策定した。

イ 「青少年インターネット環境整備法」の成立
 第169回国会において、議員立法により、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」(通称:青少年インターネット環境整備法)が成立し、平成21年4月1日より施行された。
 同法は、インターネット上の違法・有害情報対策のうち、青少年(18歳未満)を有害情報から保護することに目的を絞り、インターネットの利用環境整備の在り方について、今後の取組の方向性を明確化したものである。基本理念として、[1]青少年自身がインターネットを適切に活用する能力を習得すること、[2]青少年による有害情報の閲覧の機会を少なくすること、[3]民間による自主的・主体的取組を尊重すること(国・地方公共団体は支援)を掲げており、民間事業者の自主的な取組やリテラシー教育の重要性を強調している。また、具体的な有害情報対策として、フィルタリングの普及とその性能向上に取り組むことを求めている。

ウ フィルタリングの普及促進
 近年、青少年がいわゆる出会い系サイト等のインターネット上の有害サイトにアクセスし、事件に巻き込まれるケースが多発しており、社会問題となっている。インターネット上の有害情報への対応については、利用者の意思によって情報の取捨選択を可能とするフィルタリングが有効な対策の一つであると考えられる。
 総務省では、従来から、携帯電話事業者等に対し、携帯電話フィルタリングの導入促進及び改善等に関して要請を行うなどなどさまざまな取組を実施している。また、業界団体も、フィルタリングの一層の普及を図るため、総務省及び経済産業省と連携して、「フィルタリングの普及啓発アクションプラン」を策定するなど、普及啓発活動に努めてきたところである。
 前出の「青少年インターネット環境整備法」により、21年4月1日から、携帯電話事業者は青少年(18歳未満)がインターネットへの接続に用いる携帯電話等について、原則フィルタリングを設定した上で提供すること、プロバイダは利用者からの求めに応じてフィルタリングを提供すること、パソコン等のインターネットと接続する機能を有する機器を製造する事業者はフィルタリングの利用を容易にする措置を講じた上で販売すること等が義務づけられるとともに、保護者はその保護する青少年によるインターネットの利用を適切に管理する責務があるとされることとなった。総務省、内閣府、内閣官房IT担当室、警察庁、文部科学省及び経済産業省は、平成21年2月、青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするため、連名により、都道府県、教育委員会、都道府県警察及びPTA等に対し、青少年のインターネット利用におけるフィルタリングの普及促進及び適切な利用を推進するため、学校関係者や保護者をはじめ住民に対する啓発活動に取り組むよう依頼したところである3
 また、平成21年3月には、総務省、内閣府、内閣官房、警察庁、文部科学省及び経済産業省の連名により、青少年におけるフィルタリングの普及促進その他のインターネットの適切な利用を推進するため、パーソナルコンピュータの製造事業者、携帯電話・PHS事業者、フィルタリングソフトメーカー、家電販売店等と連携して、フィルタリング普及のためのキャンペーンを実施した4
 総務省では、今後も引き続き業界や関係省庁等と連携し、青少年が安心してインターネットを利用できる環境の整備に取り組んでいくこととしている。

エ 「安心ネットづくり」促進プログラムの策定
 第169回国会において、「青少年インターネット環境整備法」及び「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律の一部を改正する法律」(通称:特定電子メール法)が成立したことを受け、総務省は同省における今後のインターネット上の違法・有害情報対策の包括的政策パッケージとして、「安心ネットづくり」促進プログラムを策定した5図表5-3-1-2)。
 
図表5-3-1-2 安心ネットづくり促進プログラム
図表5-3-1-2 安心ネットづくり促進プログラム

 本プログラムは、「青少年インターネット環境整備法」第3条の基本理念と方向性を共有し、[1]安心を実現する基本的枠組の整備、[2]民間における自主的取組の促進、[3]利用者を育てる取組の推進の3つを柱とした総合的な政策パッケージである。

オ プロバイダ責任制限法関係ガイドラインの策定・改定
 ウェブページや電子掲示板等における他人の権利を侵害する情報の増加への対策として、平成14年5月に、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(通称:プロバイダ責任制限法)が施行された。本法律においては、
[1] 他人の権利が侵害された場合におけるプロバイダ等の損害賠償責任の制限・明確化
[2] 権利侵害を受けた者のプロバイダに対する発信者情報の開示請求権
を規定しており、これを受けて、総務省では、同法が適切に運用されるよう、業界団体や権利者団体等から構成される「プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会」6に対する支援や周知を行っている。同検討協議会では、セミナー等を開催するほか、「発信者情報開示関係ガイドライン」「著作権関係ガイドライン」「名誉毀損・プライバシー関係ガイドライン」「商標権関係ガイドライン」を策定・公表するとともに、定期的に意見交換を行っている。

カ インターネット上の違法・有害情報に対するプロバイダ等の自主的対応に関する支援
 「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する研究会」最終報告書(平成18年8月)の提言を踏まえ、総務省は、平成18年9月から、社団法人電気通信事業者協会、社団法人テレコムサービス協会、社団法人日本インターネットプロバイダー協会及び社団法人日本ケーブルテレビ連盟とともに、インターネット上の違法な情報及び公序良俗に反する情報に対するプロバイダ等による適切かつ迅速な対応を促進するための方策について検討を行った。
 その検討結果を踏まえ、上記4団体は、平成18年11月に、インターネット上に掲載された情報の違法性の判断基準及び送信防止措置等の手続を定めた「インターネット上の違法情報への対応に関するガイドライン」及びプロバイダ等が違法・有害情報に対して契約約款に基づく自主的な対応を行うための「違法・有害情報への対応等に関する契約約款モデル条項」を策定した。その後、闇サイトや硫化水素による自殺方法の流通といった新たな問題の発生を受け、平成20年12月に上記ガイドライン及びモデル条項の改訂が行われている。また、平成20年1月には、プロバイダ等の事業者からの違法・有害情報に関する相談・問合せ等を受け付ける「違法・有害情報事業者相談センター」7をテレコムサービス協会内に設置した。


1 参考:「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する研究会(平成17年〜)」:http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/chousa/internet_ihoyugai/index.html
2 参考:「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会(平成19年〜):http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/chousa/internet_illegal/index.html
3 参考:「青少年のインターネット利用におけるフィルタリングの普及促進及び適切な利用のための啓発活動の都道府県等への依頼」:http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/090210_4.html
4 参考:「フィルタリング普及キャンペーン」の実施:http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/090304_2.html
5 参考:安心ネットづくり促進プログラムの公表:http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/2009/090116_2.html
6 参考:プロバイダ責任制限法検討協議会((社)テレコムサービス協会):
7 参考:違法・有害情報事業者相談センター:

 第3節 安心・安全なユビキタスネット社会の構築

テキスト形式のファイルはこちら

(3)電波利用環境の整備 に戻る (2)迷惑メール対策・フィッシング対策 に進む