第1部 特集 ICTの利活用による持続的な成長の実現
第1章 ICTによる地域の活性化と絆の再生

(2)ソーシャルメディアによる不安の解消


ア ソーシャルメディアを使う前の日常生活の不安

●利用前の「自分の健康」「自分の生活」等の不安はいずれも6割超。中年層の不安が高い傾向

 ソーシャルメディアを利用する前の日常生活の悩みや不安について、「自分の健康」「自分の生活」「収入や資産」「老後の生活設計」「家族・親戚の生活や育児」「家族・親戚間の人間関係」「勤務先での仕事や人間関係」「近隣・地域との関係」の8つの項目を例示して「不安があるか」について調査したところ、「自分の健康」が89.8%と最も多く、ついで「自分の生活(86.1%))」「収入や資産(79.3%)」「老後の生活設計(77.3%)」「家族・親戚の生活や育児(76.3%)」「家族・親戚間の人間関係(74.0%)」「勤務先での仕事や人間関係(64.3%)」「近隣・地域との関係(63.8%)」となっており、いずれも6割を超える高い不安があった(図表1-2-2-7)。

図表1-2-2-7 ソーシャルメディアを使う前の日常生活の不安(世代別)
図表1-2-2-7 ソーシャルメディアを使う前の日常生活の不安(世代別)
利用前の「自分の健康」「自分の生活」などの不安はいずれも6割超、中年層の不安が高い傾向
(出典)総務省「ソーシャルメディアの利用実態に関する調査研究」(平成22年)

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 最も不安の割合の高い「自分の健康」については、高齢層が94.4%と他の層に比べて最も高く、次に不安の割合の高かった「自分の生活上の不安・問題」は若年層(88.0%)、中年層(86.7%)の割合が高い傾向がある。その他の「家族・親戚の生活や育児」「収入や資産」「老後の生活設計」「家族・親戚間の人間関係」「近隣・地域との関係」「勤務先での仕事や人間関係」については、中年層の「不安あり」という回答が高い傾向がある。

●すべての不安項目について、「中年層一人暮らし」グループの不安が他のグループよりも高い傾向

 また、ソーシャルメディア利用前の不安について、「不安あり」の回答については、解決方法の有無により「不安あり(解決方法あり)」「不安あり(解決方法なし)」に分けてきいており、「不安あり(解決方法なし)」と回答された不安について、上述の7つのグループ別に分析したのが図表1-2-2-8である。これによると、すべての不安項目について「中年層一人暮らし」のグループの不安の割合が高く、また「収入や資産」「老後の生活設計」「家族・親戚間の人間関係」「勤務先での仕事や人間関係」「近隣・地域との関係」といった悩みや不安において2〜4割が「不安はあるが解決方法がない」という状況であることがわかる。

図表1-2-2-8 ソーシャルメディアを使う前の日常生活の不安(7つのグループ別)
図表1-2-2-8 ソーシャルメディアを使う前の日常生活の不安(7つのグループ別)
すべての不安項目について、「中年層1人暮らし」のグループの不安が他のグループよりも高い傾向
(出典)総務省「ソーシャルメディアの利用実態に関する調査研究」(平成22年)

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 「中年層一人暮らし」のグループを構成すると考えられる単身世帯の有業者(サラリーマン・自営業者)は、地域から孤立する確立が高いという分析結果もあり13、身近に相談できる人が少ないこともあいまって、他の世代よりも悩みや不安を持つ傾向が高いといえよう。前記(1)(ウ)の 図表1-2-2-5において、「中年層一人暮らし」のグループがソーシャルメディアでよく利用するテーマとして、「地域情報」「医療・健康」「会社」などが多いのもそのような背景があるためと考えられる。

イ ソーシャルメディアによる不安意識への影響

●ソーシャルメディアにより、すべての項目で1割以上の人が不安を解消

 ソーシャルメディアを利用する前に各項目について「不安あり」と回答した人が、ソーシャルメディアを用いて問題解決した割合(「非常にあてはまる」と「あてはまる」と回答した割合の合計)を示したのが図表1-2-2-9である。この結果によると、ブログを利用して「自分や家族・親戚の健康上の不安・問題」を解決したと回答した割合は16.5%、「自分自身の生活上の不安・問題」を解決したと回答した割合は14.7%、「家族・親戚の生活に関わる不安・問題」を解決したと回答した割合は15.2%、「勤務先での不安・問題」を解消したと回答した割合は13.3%であった。「老後のくらしの不安・問題」の9.2%を除くとそれ以外ではどれも10%以上の人が不安や問題を解消したと回答している。

図表1-2-2-9 ソーシャルメディアで解決された問題
図表1-2-2-9 ソーシャルメディアで解決された問題
ソーシャルメディアにより、すべての項目で1割以上の人が不安を解消
(出典)総務省「ソーシャルメディアの利用実態に関する調査研究」(平成22年)

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 SNSでは、いずれの項目においても不安や問題が解消したという回答が10%以上となっているが、特に「家族・親戚の生活に関わる不安・問題(13.5%)」「近隣・地域に関わる不安・問題(12.6%)」などが高い傾向がある。
 情報共有サイトもいずれの項目においても不安や問題が解消したと回答する割合が10%を超える結果となっているが、「自分や家族・親戚の健康上の不安・問題」が16.7%と特に高く、「家族・親戚の生活に関わる不安・問題」が15.0%、「自分自身の生活上の不安・問題」「収入や資産に関する不安・問題」は13.8%と高い割合となっている。動画共有サイトについては全般的に6%〜7%台となっている。
 マイクロブログはいずれの項目においても10%を超える結果となっており、「近隣・地域に関わる不安・問題(15.2%)」「家族・親戚間の人間関係に関わる不安・問題(13.6%)」「収入や資産に関する不安・問題(13.4%)」「勤務先での不安・問題(13.2%)」の割合が高いのが特徴的である。また、掲示板は10%を超えている項目は少ないが、「自分や家族・親戚の健康上の不安・問題(12.4%)」の割合が高いのが特徴的である。
 このようにソーシャルメディアにより、すべての項目で1割以上の人が不安を解消している結果となっており、10人に1人の不安を解消する重みは決して無視できないものであろう。


13 平成19年版国民生活白書(P73)参照
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