第1部 特集 ICTの利活用による持続的な成長の実現
第2章 グリーンICTによる環境負荷軽減と地域活性化

(3)エリクソン社(スウェーデン 通信機器メーカー)の事例


●他に例を見ない製品寿命を延ばす取組により、グリーンICTのグローバル振興を目指す

 エリクソン社は、省電力化の手段としてのICTを全世界で振興することを目指している。そのためにWWF(World Wide Fund)スウェーデンとの協業にも取り組んでいる。WWFスウェーデンとエリクソンの推計によると、ICT産業が省電力化の製品やソリューションを提供することで、全体の15%の温室効果ガスを削減可能と見込んでいる。同社はこの値を根拠として、テレワークや電話会議、モバイル遠隔医療などのソリューションをICT産業が積極的に提供することを強く訴えかけている。

ア エリクソン社によるグリーンICTの取組の概要

(ア)製品のライフサイクルアセスメント(LCA)の適用による携帯電話端末の省電力化を推進
 GreenHeartとよばれる全社プロジェクトの下、端末のライフサイクルアセスメント(LCA)の適用による携帯電話端末の省電力化を進めるほか、製造業者としては他に例を見ない製品寿命を延ばす取組をしている。具体的には、プロジェクトの対象となる機種は、いずれもカーボンフットプリント6が従来製品よりも15%少なくなっている上、筐体(きょうたい)に再生プラスチックを使用、揮発性有機化合物の少ない水性塗料を使い、消費電力を抑えたディスプレイライトを搭載している。

(イ)海外企業、通信キャリアへの積極的な働きかけ
 さらに、ブリティッシュテレコム社同様にISO14001を取得し、スウェーデン以外の国にも取組を広げようとしている。自社のICT技術を他国の通信キャリアに展開する例としては、チャイナモバイルに対して最適化された通信ネットワークインフラを提供している事例があげられる。同社からの技術提供をうけた通信キャリアは、このインフラを利用することで基地局設置数を縮減し、その結果、消費電力を削減可能となる。

イ エリクソン社によるグリーンICTの取組の効果
 紙のマニュアルの代わりに本体に電子マニュアルを搭載することにより、紙の使用量の90%削減を達成できた上、50%以上の部品材料を既存端末からのリサイクルとした。これらの取組により、2008年には携帯電話利用者一人当たり、1992年比21%の温室効果ガス排出削減を実現した。
 そして、同社のグリーンICT技術を世界各国、特に一人当たり平均所得が低い国に展開し、環境負荷を配慮した形でのコミュニケーション環境を整備することで、地域社会の発展に結果的に貢献している。例えば、バングラディッシュのアポロ病院に対して、同社のモバイルICT技術を活用した遠隔診断の支援を行っている。これにより、患者の通院時に発生する温室効果ガス排出量が削減できるほか、患者は同社の携帯電話端末を利用して、健康状態のモニタリングを行ったり、日記をつけたり、遠隔地の医師による受診が可能となる等、地域の医療レベル向上への貢献を図っている。


6 商品・サービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るライフサイクル全体における温室効果ガス排出量をCO2量に換算し表示する仕組
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