第1部 特集 ICTの利活用による持続的な成長の実現
第3章 ICTによる経済成長と競争力の強化

3 情報化投資の加速とICT利活用による経済成長


(1)情報通信資本とICT利活用能力による成長への寄与


●ICTは、情報通信資本、労働の生産投入及び総要素生産性を通じて成長に寄与

 情報通信資本の成長は、直接的には生産弾力性に応じて産業の成長に寄与する(図表3-1-3-1)。また、その寄与の一部は外部効果として、総要素生産性15の中に含まれる16。さらに、情報通信資本のみならず、労働の中にも十分体化されていない技術変化の要素は存在しうる。例えば情報通信資本や情報通信サービスの利活用等に関する知識・技能の修得に伴う人的資本の成長などは、総要素生産性を通じて成長に寄与するものと考えられる。

図表3-1-3-1 ICTと経済成長
図表3-1-3-1 ICTと経済成長
情報通信資本、労働の生産投入及び総要素生産性を通じて成長に寄与
(出典)総務省「産業の成長における情報通信資本の寄与に関する国際比較分析に関する調査」(平成22年)

 以下、我が国の情報通信資本の現状を国際比較で検証するとともに、ICTの利活用能力が労働生産性に与える効果について分析する。


15 総要素生産性(TFP:Total Factor Productivity)とは、資本投入や労働投入の伸びでは説明できない経済成長部分であり、一般に技術革新、経営ノウハウ等の知識ストック、企業組織改革、産業構造変化等の要因が含まれると理解されている。情報通信のイノベーションによる生産性向上は、主としてこのTFPの上昇として実現されると考えてよい
16 例えば、Stiroh(2002)の他、篠崎(2003)、Kazunori Minetaki & Kiyohiko G. Nishimura(2010)等多数
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