第2部 情報通信の現況と政策動向
第5章 情報通信政策の動向

(3)ICT産業の国際競争力の強化


 総務省では、ICT産業の国際競争力を強化することとして、様々な取組を実施している。

ア ICT産業の国際展開の支援
 総務省では、我が国のICT産業の国際競争力強化を目的として、我が国がとりわけ技術力を有するデジタル放送、次世代IPネットワーク及びワイヤレス分野について民間の海外展開に係る活動を戦略的に支援するため、ICT企業が海外展開する際の総合的な支援や、海外での各種普及・啓発活動の実施、有用な各国情報の収集・整理等の活動を行っている。
 特に、地上デジタルテレビジョン放送分野では、総務省は、官民連携で日本方式(ISDB-T方式)の普及に取り組んでおり、2006年にブラジルが、2009年にはペルー、アルゼンチン、チリ及びベネズエラが、2010年3月にはエクアドル、同年5月にはコスタリカ、同年6月にはパラグアイ、フィリピンが、日本方式の採用を決定し、中南米のみならずアジアにおいても日本方式が普及してきているとともに、南アフリカなど広く働きかけを実施している(図表5-1-4-2)。

図表5-1-4-2 世界各国の地上デジタルテレビ放送の動向
図表5-1-4-2 世界各国の地上デジタルテレビ放送の動向
2010年6月現在
出典:OECD報告書他各種資料

 2009年9月には、ペルーにおいて採用国間での連携強化等を目的とした第1回ISDB-Tインターナショナルフォーラムが開催された。日本からは原口総務大臣をはじめとした官民代表団が出席し、日本方式採用国の大臣間で、日本方式の更なる普及・拡大に向けた日本方式採用国間での協力等を目的としたリマ宣言への署名を行った(図表5-1-4-3)。2010年5月に第2回フォーラムがアルゼンチンで開催され、日本からは内藤総務副大臣をはじめとした官民代表団が出席し、各国大臣等と今後のデジタル放送分野における協力等についての意見交換を行った。

図表5-1-4-3 ISDB-Tインターナショナルフォーラム第1回会合における日本方式採用5か国 担当大臣によるリマ宣言採択(2009年9月、於:リマ(ペルー))
図表5-1-4-3 ISDB-Tインターナショナルフォーラム第1回会合における日本方式採用5か国 担当大臣によるリマ宣言採択(2009年9月、於:リマ(ペルー))

 また、日本方式採用国における円滑な地上デジタルテレビジョン放送開始を支援するため、関係省庁・機関が連携して、日本からの専門家の派遣及び各国技術者の日本への招へい・研修の実施などの技術移転・人材育成を実施している。その結果、日本、ブラジルに続き、ペルーにおいても、2010年3月に地上デジタルテレビジョン放送が開始された。
 さらに、技術標準化交渉における優位性を確保するための我が国の国際的プレゼンス向上や、二国間・多国間協議を通じたアジアをはじめとする電気通信市場の競争環境整備にも取り組んでいるところである。

イ データセンターの活性化
 ブロードバンドの発展に伴い、どこに保管されているデータであっても情報通信ネットワークを通じて自由に取り扱うことができるクラウドコンピューティング化が進んでいる。これにより、データの保管場所であり、発信拠点であるデータセンターは自由に選択可能となり、グローバルな環境下に置かれることとなったが、現状では、海外データセンターから提供されるサービスを日本国内から利用することが著しく増加しており、我が国の総トラヒック量のうち4割以上が海外からの流入で占められている。データセンターは情報通信ネットワークと車の両輪をなす重要なICT基盤であり、新たな社会経済活動を生み出す求心力として重要度が高まっていることから、我が国の情報通信産業の国際競争力を向上させるためには、国内に設置されたデータセンターの活用を図ることが不可欠である。
 そこで、総務省では、平成21年5月から、「クラウドコンピューティング時代のデータセンター活性化策に関する検討会」を開催し9、同22年5月に最終報告書を取りまとめ、公表した(図表5-1-4-4)。当報告書においては、データセンターを容易に構築可能とする規制緩和のあり方を検討するための「特区」の設立、データセンター機器に対する耐用年数のあり方等について提言されており、総務省では今後、当報告書を踏まえ国内データセンターの活性化に向けた環境整備のあり方を検討する予定である。

図表5-1-4-4 「クラウドコンピューティング時代のデータセンター活性化策に関する検討会」報告書の概要
図表5-1-4-4 「クラウドコンピューティング時代のデータセンター活性化策に関する検討会」報告書の概要

ウ 地域コンテンツの海外展開
 コンテンツの海外展開については、政府の「知的財産推進計画2010」(2010年5月知的財産戦略本部決定)においても、「コンテンツ強化を核とした成長戦略の推進」が柱の一つとされ、海外展開を促進し、国際競争力を高めることが目標に掲げられている。
 総務省においても、コンテンツ市場の拡大やコンテンツ産業の育成に向けた施策を進めており、「ICT維新ビジョン2.0」においては、「デジタルコンテンツ創富力の強化」として、「海外の放送時間枠確保による地域コンテンツの海外展開を図る取組」が盛り込まれている。
 具体的には、平成22年度から、地域の放送局等が地方公共団体や企業等と連携して、各地の自然や文化等を紹介するコンテンツを製作し海外へ発信する機会を創出するための実証実験を実施し、海外の放送局において日本の多様なコンテンツを展開し、その効果検証やノウハウ共有化を行う。このような取組により、我が国の情報発信力やプレゼンスの向上を図るとともに、国際競争力の強化を実現する。また、地域のコンテンツ製作力の再生・強化を促進し、観光客誘致等による地域活性化にもつながることが期待される。


9 参考:「クラウドコンピューティング時代のデータセンター活性化策に関する検討会」:http://www.soumu.go.jp/menu_sosiki/kenkyu/12556.html
テキスト形式のファイルはこちら