第2部 情報通信の現況と政策動向
第5章 情報通信政策の動向

(1)「新世代ネットワーク」領域


 総務省では、すべてのICT産業を支える基盤であり、新たな要求に柔軟かつ確実に対応することが求められる将来のネットワークを支えていくため、「新世代ネットワーク技術」の研究開発を以下のとおり重点的に推進している。

ア 新世代ネットワーク基盤技術に関する研究開発
 現在のIPネットワークが抱える、サービス品質やセキュリティ対策等の課題を抜本的に解決するため、総務省では、平成20年度から次世代IPネットワークの次の世代を見据えた新たなネットワーク・アーキテクチャの検討を進めるとともに、基盤技術の研究開発を推進している。
 具体的には、情報の伝達効率の飛躍的向上や故障時の自動復旧を可能とするダイナミックネットワークの要素技術及び通信速度や品質を自由自在に設定可能とする仮想化技術等の研究開発を実施し、これらを最適に実現するための日本発の新しいアーキテクチャの具体化を推進する。

イ クラウドネットワーク制御技術に関する研究開発
 多種多様なICTサービスを柔軟に利用可能とするクラウドコンピューティングは、企業によるICT設備投資の負担軽減や情報処理の集約による環境負荷低減につながるものとして期待が高まっている一方で、データ処理を外部に委ねることへの不安(システムの安全性・信頼性や情報の流出に対する懸念等)も根強く存在するほか、情報流通の飛躍的拡大に伴うネットワークへの電力消費等の負担増大も懸念されている。このため、将来のクラウドサービスを支える高信頼で省電力なネットワーク制御技術の研究開発を推進する。

ウ フォトニックネットワーク技術に関する研究開発
 ネットワーク全体を光化することにより、大容量化・低消費電力化を図ることが可能となることから、総務省では、
 [1] 効率性を極限まで追求した大規模光ラベル処理システム技術、超低消費電力ノード構成技術等の研究開発
 [2] 回線交換とパケット交換の特長を兼ね備えた光ノード技術の研究開発
 [3] 1接続当たり100ギガビット級のトラヒックを安定かつ最適な経路で制御・管理する技術等の開発
 [4] エンドユーザー間で、大容量データを効率的に伝送するためのアクセス技術
 [5] 従来の光ファイバの物理的限界を突破し大容量情報通信サービスの持続的発展を支えるための、光伝送方式と新型光ファイバの研究開発
 [6] 全光パケットルーター実現に必要な光RAM等の全光ネットワーク基盤技術の研究開発
 [7] FTTHのサービス拡大やこれに伴う加入者の増加、サービスの内容の変化に柔軟に対応するための研究開発
を実施している。

エ 量子情報通信ネットワーク技術に関する研究開発
 量子コンピュータの出現による現代暗号の危険性や急増する情報通信量に対応し、極めて高い安全性を保証されたネットワークや、量子的性質を用いた超大容量通信を可能とするネットワークの実現に向けて、総務省では、光の量子的性質を制御することにより、極めて安全性の高い暗号通信や少ないエネルギーでの超大容量情報伝送を実現するための研究開発を実施している。

オ ユビキタス・プラットフォーム技術の研究開発
 ユビキタスネット社会の実現に向け、いつでもどこでも誰でも、その場の状況に応じて必要な情報通信サービスを簡単に利用可能とするため、平成20年度から、
 [1] 携帯電話等と電子タグリーダー/ライター機能の融合を図るユビキタス端末技術
 [2] センサー等を活用して利用者の状況を的確に認識し、状況に応じて必要なサービスを自動的に提供するためのユビキタスサービスプラットフォーム技術
 [3] 空間コードを活用し、あらゆる場所に関する情報を容易に利用可能にするユビキタス空間情報基盤技術
の研究開発を行うとともに、平成22年度は、これらの技術が融合した形での技術実証を行う予定である。研究開発の成果を広く公開することで、我が国が直面する生活課題の解決を図る。

カ テラヘルツ波技術に関する研究開発
 テラヘルツ波とは、周波数が10の12乗(テラ)付近の電波と光の間の周波数帯に位置する、電波に近い性質と光に近い性質を併せ持つ電磁波である。例えば、電波としてはその超高周波数特性を利用した通信の高速化、光の性質を利用した内部構造の非破壊・非接触検査等、様々な利用が期待されている。特に、技術開発の急速な進展により、小型の発振デバイスや受信デバイス等が既に開発されており、様々な分野で利用され始めているところである。
 総務省では、リアルタイムでテラヘルツ分光イメージングを可能とする光源、検出器の実現等の研究開発に取り組んでいる。
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