付注

付注5 ブロードバンドサービスの普及による経済効果の推計方法


 全国民が多様なブロードバンドサービスを利用できる環境が整備されていることを前提に、ブロードバンドサービス及び端末の普及が家計消費(最終需要)に与える影響(直接効果)を、付注4のインターネットアンケート調査と郵送アンケート調査結果に基づく利用者ニーズより推計((1)直接効果の推計)し、さらに産業全体に与える経済効果及びその粗付加価値額を産業連関分析より推計((2)経済効果及び粗付加価値額の推計)した。

(1)直接効果の推計
 ブロードバンドサービスの普及と質の向上は消費者便益を向上し、既存の家計消費に占めるブロードバンドサービス比率の拡大に加え、ブロードバンドサービスによる新たな需要の創出を促すことが期待される。このうち、後者の新規需要創出分(年間)を「直接効果」と定義し、ブロードバンドサービスと端末とに分けて算出した。

ア ブロードバンドサービス
 図表1-1-3-6「ブロードバンドサービスの利用意向」に示したブロードバンドサービスを対象に、各サービスの普及によって創出される新規需要をそれぞれ以下の方法で推計し、全サービスによる新規需要分として合算した。

 [1]既存の家計消費(現状値) × [2]ブロードバンドサービスによる家計消費増加率 × [3]総世帯数

 [1]は総務省「平成21年家計消費状況調査」(http://www.stat.go.jp/data/joukyou/12.htm)に基づき、各ブロードバンドサービスを利用して支払われると考えられる家計消費品目を抽出し、その支出合計を現状値として設定した。
 [2]は各ブロードバンドサービスが利用可能な場合に、[1]で分類した家計消費品目への支出額がどの程度拡大するかについて、固定インターネット利用者へのインターネットアンケート調査及び固定インターネット未利用者への郵送アンケート調査において定量的に把握した結果を家計消費増加率として採用した。ただし、普段から当該家計消費品目への支出は無いが、各ブロードバンドサービスについて将来的に利用意向を有する回答者については、支出額の絶対値を把握し[1]の現状値を基準として比率に換算し[2]に含めることとした。
 なお、[2]は母数が全回答者(母集団は全国民)になるよう重み付け換算し、それを全世帯の家計消費増加率とみなして[1]及び[3](住民基本台帳に基づく)を乗じた。

図表1 ブロードバンドサービス消費増加の推計結果
図表1 ブロードバンドサービス消費増加の推計結果
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イ 端末
 テレビ、パソコン、携帯電話、電子書籍端末、デジタルフォトフレームの5種類を対象として、それぞれ以下に示す方法で各端末の新規需要創出分を推計し、全端末分を合算した。

 [1]端末の平均単価 × [2]購入増分台数 × [3]世帯又は人口

 [1]は、富士キメラ総研「2010次世代ホームネットワーク関連市場の将来展望」(https://www.fcr.co.jp/report/094q20.htm)及び「2010ワイヤレスBBアプリケーション市場調査総覧」(https://www.fcr.co.jp/report/094q23.htm)に基づき各端末の平均的な市場単価を推計した。
 [2]は各ブロードバンドサービスが利用可能な場合の保有意向台数と現時点の保有台数をアンケート調査より把握し、その差分(ストック台数の増分)を端末の平均買替え期間で除して、年間のフロー台数に換算した。買替え期間については、内閣府「主要耐久消費財の買替え状況」(平成20年4月〜平成21年3月)に基づき、電子書籍端末及びデジタルフォトフレームは携帯電話の買替え期間を採用した。
 [3]はテレビ・パソコンについては総世帯数、携帯電話、電子書籍端末、デジタルフォトフレームについては15歳〜69歳の人口を採用(いずれも住民基本台帳に基づく)した。

図表2 端末購入増加の推計結果
図表2 端末購入増加の推計結果
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(2)経済効果及び粗付加価値額の推計
 総務省「平成19年情報通信産業連関表71部門表(逆行列係数表)」(http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/renkan/h19_renkan.html)を用いて、(1)で推計した直接効果(ブロードバンドサービス市場と端末市場の直接効果の合計)から誘発される生産額を算出した。さらに、この生産誘発額(3.6兆円)と直接効果(8.7兆円)を合算して、経済効果(12.3兆円)を算出した。
 最後に、粗付加価値係数を上記の経済効果の推計金額に乗じることで、粗付加価値額(7.2兆円)を算出した。