2 日本の情報通信産業の現状と成長への貢献 (1)情報通信産業が成長の原動力  平成21年版情報通信白書第3章第2節4(http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h21/html/l3244000.html)では、このような「協働」を情報通信産業と他の各種産業の連携により促進していく必要性を論じているが、ここでは我が国の情報通信産業について、総務省が毎年作成している情報通信産業連関表による推計結果(http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/link/link03.html)を用いて、情報通信産業の我が国産業全体における位置づけや、他産業に与えるプラスの影響について詳しくみてみよう。なお、情報通信産業連関表における「情報通信産業」とは、経済的活動として情報を生産、収集、加工、蓄積、提供、伝達する情報通信活動を行う産業と定義しており、「通信業」「放送業」「情報サービス業」「映像・音声・文字情報制作業」「情報通信関連製造業」「情報通信関連サービス業」「情報通信関連建設業」「研究」の8部門の合計として集計されたものである2。 ア 情報通信産業の市場規模 ●情報通信産業の市場規模は全産業の約1割にあたる96.5兆円で、世界同時不況の影響をうけるものの、コンテンツ・アプリケーションをはじめとする情報サービス業は成長を維持  平成20年における我が国の情報通信産業の市場規模(名目国内生産額)は96.5兆円となっており、全産業の市場規模の約1割を占める最大産業である(図表3-1-2-1)。 図表3-1-2-1 情報通信産業を含む主な産業の市場規模(名目国内生産額) (出典)総務省「ICTの経済分析に関する調査」(平成22年) http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/link/link03.html  また、情報通信産業の市場規模の推移をみると、平成20年は世界同時不況の影響から全体では前年よりも約2.5%減少しているが、産業別については情報サービス業3が約1.5%増のプラス成長をとげている(図表3-1-2-2)。 図表3-1-2-2 情報通信産業の市場規模(名目国内生産額)の推移 (出典)総務省「ICTの経済分析に関する調査」(平成22年) http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/link/link03.html  日本の情報通信市場を、「コンテンツ・アプリケーション4」「プラットフォーム5」「ネットワーク6」「端末7」の4つの垂直的なレイヤー構造としてとらえ、各レイヤーの市場規模をみると、「コンテンツ・アプリケーション」が約33兆円、「プラットフォーム」が約4兆円、「ネットワーク」が約18兆円、「端末」が約25兆円という結果8になった。(図表3-1-2-3)。このうち、コンテンツ・アプリケーションレイヤーにおけるBtoC EC、モバイルコンテンツ・コマース、SNS・ブログ関連、さらにプラットフォームレイヤーの大部分については、年平均で10%を超える成長分野となっている。 図表3-1-2-3 情報通信産業のレイヤー別市場規模(平成20年) (出典)総務省「情報格差是正に関する調査」(平成22年) イ 情報通信産業の経済成長への寄与 ●情報通信産業は深刻な不況下でも唯一プラスに寄与  経済成長(実質GDP成長率)に対する情報通信産業の寄与は、世界同時不況の影響により平成20年には経済成長そのものがマイナスになっている中、唯一プラスに寄与している。また、情報通信産業の経済成長に占める寄与率は2002年から2007年の5年間の年平均で約34%である。 図表3-1-2-4 実質GDP成長率に対する情報通信産業の寄与 (出典)総務省「ICTの経済分析に関する調査」(平成22年) http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/link/link03.html ウ 情報通信産業の経済波及効果 ●情報通信産業における生産活動が我が国の産業全体に及ぼす経済波及効果は、付加価値誘発額については全産業最大、雇用誘発数については小売業や建設業に匹敵する規模  情報通信産業の全産業に与える経済波及効果として、付加価値誘発額と雇用誘発数について、他産業と比較しながらみてみよう。まずは最終需要による経済波及効果だが、実質最終需要65.5兆円による平成20年の付加価値誘発額は、他産業よりも比較的高い51.5兆円となり、平成7年以降一貫して増加している(図表3-1-2-5 左図)。同様に平成20年の雇用誘発数をみると、319万人となり、こちらは対個人サービス(飲食・宿泊・自営業等)、小売、公的サービス、建設といった産業に次ぐ規模となっている(図表3-1-2-5 右図)。 図表3-1-2-5 主な産業部門の最終需要による経済波及効果(付加価値誘発額、雇用誘発数)の推移 (出典)総務省「ICTの経済分析に関する調査」(平成22年) http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/link/link03.html  上記は、「当該部門の最終需要」に着目した経済波及効果であるが、次に視点を「各産業の生産活動」に変えて経済波及効果についてみると9、情報通信産業の付加価値誘発額は平成20年で120.4兆円と我が国の産業の中でも最大となっている(図表3-1-2-6 左図)。同様に情報通信産業の生産活動全体による平成20年の雇用誘発数をみると、755万人と小売に次いで、小売や建設といった産業に匹敵する規模となっている(図表3-1-2-6 右図)。 図表3-1-2-6 主な産業部門の生産活動による経済波及効果(付加価値誘発額、雇用誘発数)の推移 (出典)総務省「ICTの経済分析に関する調査」(平成22年) http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/link/link03.html 2 情報通信産業連関表における部門分類については付注7参照 3 ソフトウェア業、情報処理サービス、情報提供サービスが含まれる 4 情報通信に関わるサービスやコンテンツの制作及び供給に関わる事業、情報通信システムに関するアプリケーションやソフトウェアの開発・運用等に関わる事業に該当する事業領域 5 ユーザ認証、機器(端末)認証、コンテンツ認証などの各種認証機能、ユーザ認証機能、課金機能、著作権管理機能、サービス品質制御機能などを提供する事業領域。なお、固定通信、移動通信、放送の各サービスに含まれるプラットフォーム機能(課金、認証等)はすべて「ネットワーク」へ、コンテンツやアプリケーションの専業事業者が担うプラットフォーム機能はすべて「コンテンツ・アプリケーション」へ、それぞれ便宜的に配分しているため、やや過小評価となっている 6 通信と放送を含むネットワークを経由した伝送事業に該当する事業領域 7 ユーザが利用する情報通信端末の製造事業に関する事業領域 8 市場規模算定に際して用いたソースについては付注8を参照。なお、情報通信産業連関表における「情報通信産業」とは異なる手法により算定しているため注意を要する 9 「最終需要による経済波及効果」は、最終需要となる財・サービスに着目した分析で当該部門の最終需要が国内産業にもたらす経済波及効果をみるのに対し、「生産活動の経済波及効果」は産業部門に着目し、その生産活動が国内産業にもたらす経済波及効果をみるもの