(2)UGDを用いたグローバル展開 ●製品に対する消費者の声を、お客様相談室だけでなく、工場やマーケティング、研究開発部門など関係各部署で共有するシステムを構築、中国とタイにも展開済み   このようなUGDをグローバル展開にうまく活用している我が国の企業の例として、ユニチャーム「SMILEシステム」を見てみよう(図表3-2-3-3)。 図表3-2-3-3 ユニチャーム「SMILEシステム」のイメージ図 (出典)日経コンピュータ(2008年8月15日号) http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20090309/326213/  同社は、電話や電子メール、手紙などで寄せられる消費者の声を、問い合わせ、苦情を含めて一元管理し、お客様相談室だけでなく、工場やマーケティング、研究開発部門など関係各部署で共有し、商品開発に活用する「SMILEシステム」を2008年4月より稼動させた。おむつやマスクなど、肌に直接触れる商品を開発する同社にとって、商品の不良は利用者に不快感を与える場合が多く、苦情の放置はリコールやそれを通じたブランドイメージの低下に直結し、「消費者への対応が企業競争力を左右する」、苦情にせよ要望にせよ「寄せられた声を適切に処理することが欠かせない」(同社)との考えによる。このシステムを用い、商品に不具合があった場合は即座に対応をするとともに、商品開発のアイデアになる情報を研究開発部門などで共有する。消費者の声を受けて3カ月ごとに改良している商品もある。また、売り上げの35%が海外である同社は、この消費者の声を商品開発に活用する仕組をグローバル展開に生かすべく、「SMILEシステム」を既に中国とタイにも展開しているところであり、今後、台湾やインドネシアなどに広げ「アジアでナンバーワンの消費者対応」の実現を目指す考えを持っている。 ●ICTを用いたユーザーとの協働(UGD)は、グローバル展開での現地市場・消費者のニーズの収集にますます重要に  かつて、日本の企業は、現地に根を張り、足で稼ぎ、ローカライゼーションを進めながらグローバル展開をしてきた。また、グローバル展開をする上で有効な手段である国際見本市への出展だが、最近は中国、韓国企業などに押され、日本企業のプレゼンスは小さくなっている。  グローバル展開における現地市場・消費者のニーズの収集やタイムリーな製品開発、販売、営業等において、これらの手段は引きつづき有効であると考えられるが、ICTを用いたユーザーとの協働(UGD)も有効な手段であり、今後、企業の国内展開のみならず、グローバル展開においても、ますます重要になっていくだろう。