2 海外の情報通信政策の動向 (1)米国の情報通信政策の動向 ●ワイアレスを含め、世界一のブロードバンド環境実現を目指す計画を発表 国家ブロードバンド計画の策定、発表  2010年3月、連邦通信委員会(FCC)は、連邦議会に提出した「国家ブロードバンド計画(Connecting America: The National Broadband Plan)」を公表した。  本計画は、全17章で構成されており、第2章において議会に勧告する今後10年間の6つの「長期目標」を提示、第3章で米国におけるブロードバンド普及等の現状を分析している。また、第4章から第17章までをさらに3部構成にしつつ、各章で個別分野における具体的な勧告を提示している。  第2章に記述する2020年までに達成すべき6つの長期目標は以下のとおりとなっている。 目標1 世界一のブロードバンド環境の実現  1億世帯以上の家庭が、下り速度が実測100Mbps以上、上り速度が実測50Mbps以上の安価なアクセスを持つべき(2015年までには、1億世帯以上の家庭が、下り実測50Mbps以上、上り実測20Mbps以上の安価なアクセスを持つべき)。 目標2 世界一のワイヤレスブロードバンド環境の整備  米国は、世界最速かつ世界で最も規模の大きな無線ネットワークを持ち、モバイル・イノベーションで世界一となるべき(2020年までに500MHz幅の周波数を新たにブロードバンド向けに利用可能とすべき(2015年までには300MHz幅を利用可能とすべき))。 目標3 全国民へのブロードバンドサービス(ユニバーサルサービス)の提供  すべての米国人は、強固なブロードバンド・サービスへの安価なアクセスを持ち、自らの選択に従いサービスに加入する手段と技能を持つべき(90%以上の加入を実現)2。 目標4 教育・医療等でのブロードバンドの利用  すべてのコミュニティは、学校、病院、政府機関において1Gbps以上の安価なブロードバンド・サービスへのアクセスを持つべき。 目標5 公共安全ネットワークの確保  米国人の安全を確保するため、すべての一次応答者(first responder)3は全国規模で相互運用可能な無線ブロードバンドの公共安全ネットワークへのアクセスを持つべき。 目標6 グリーンICTの利用  米国がクリーン・エネルギー経済において世界をリードすることを確保するため、すべての米国人は自身のリアルタイムのエネルギー消費を追跡し、管理するためブロードバンドを利用すべき。  また、第4章から第17章までに記述する個別勧告には、以下を含んでいる。 ○ブロードバンド料金と競争について、詳細な市場ごとの情報の収集、分析、べンチマーク設定及び公表を行う。 ○ブロードバンドサービス事業者に対して、料金やパフォーマンスの情報を消費者に明らかにする情報開示を義務付ける(以上「第4章 ブロードバンド競争とイノベーション政策」関連)。 ○500MHzの周波数を10年間でブロードバンドに新たに利用可能とし、そのうち300MHzの周波数を5年でモバイルサービスで利用可能とする。 ○周波数のより柔軟な利用のために、利用目的の変更のためのインセンティブとメカニズムを可能とする(以上「第5章 周波数」関連)。 ○実測の下り速度が最低4Mbpsとなる安価なブロードバンド及び音声提供を支援するため、コネクト・アメリカ基金(Connect America Fund(CAF)) を設置し、既存のユニバーサルサービス基金(USF)プログラムから今後10年間で最高155億ドル(約1兆4,000億円)をブロードバンド支援向けに移行する。ただし、議会がサービス未提供地域におけるブロードバンド整備を加速し、あるいは基金の移行を円滑に行うことを求める場合、議会は今後2-3年間にわたって毎年数10億ドル(約900億円)の公的資金援助を行うことが可能(以上「第8章 利用可能性(Availability)」関連)。 2 米国における世帯加入率は67%(2009年11月現在) 3 警察、消防等と考えられる