(3)中国の情報通信政策の動向 ●開始早々の3Gサービスの競争が進展するもユーザー数は伸び悩む。2Gを含めたユーザー数は7億を超える ア 3Gサービスの推進  2009年1月、中国移動、中国電信及び中国聯通の3キャリアに対し3G免許が交付され、同月より中国移動(既に2008年4月より試験サービスを開始)が、4月より中国電信が、10月より中国聯通が3Gの商用サービスを開始した。現在、各キャリアは、巨大な3G投資を行い、ユーザー数とネットワークカバーエリアの拡大にしのぎを削っている。2009年の3キャリアの3G関連投資は1,609億元(約2兆1,700億円)、設置された3G基地局は累計32万5,000か所に上る。そのうち、中国移動(TD-SCDMA方式)の基地局は10万8,000か所設置され、238都市で利用可能に、中国電信(CDMA2000方式)の基地局は11万7,000か所設置され、342の都市で利用可能に、中国聯通(W-CDMA方式)の基地局は10万か所設置され、335都市で利用可能になったと発表されている。  他方、2009年の1年間で2Gを含めた携帯電話ユーザー数が1億614万契約増加し、2009年末時点で7億4,738万契約まで拡大したが、3Gユーザー数は約1,500万契約に過ぎない。なお、中国最大のキャリアである中国移動のシェアは、2Gにおいては約7割と圧倒的であったが、3Gにおいては4割程度のシェアに留まっている状況である。  また、3Gの推進を目的に、工業・情報化部、国家発展・改革委員会、科技部、財政部、国土資源部、環境保護部、住宅・都市農村建設部、国家税務総局の8省庁は、2010年3月に共同で、「第3世代移動通信網の建設を推進する意見」を公布している。その目的は、3G網の建設を推進することによる国内の関連産業の発展の牽引、経済発展と社会発展への寄与、3G産業の発展による自主創新能力と関連産業の競争力の向上、金融危機に対応した内需拡大、経済成長、雇用促進等である。具体的な目標として、2011年までに、3Gネットワークが全ての地方級レベル以上の市(4つの直轄市と333の地方級レベルの都市)、大部分の県政府所在地及び郷・鎮、主要な高速道路及び観光地におけるカバーを実現することを挙げており、3Gのインフラ建設に4,000億元(約5兆4,000億円)を投入し、3G基地局数40万基以上、3Gユーザー1億5,000万を達成することを見込んでいる。また、そのために、[1]通信インフラの建設支援策(基地局の設置等の審査・許可の手続きの簡素化を含む)、[2]3G関連の研究開発、3G付加価値サービスに従事する企業のうち要件を満たすものへの租税優遇措置の適用、[3]電子発展基金等の特定資金を利用して、3Gネットワークの建設を支援、等の施策を講ずることとしている。 イ 「三網融合」の推進  電気通信と放送の監督部門が異なる中国において、電気通信網、ラジオ・テレビ放送網及びインターネットの三網を融合させる「三網融合」はこれまで理念にすぎなかったが、2010年1月、国務院常務会議は、「三網融合」の加速に向けて具体的な段階目標を決定した。具体的には、2010年から2012年に電気通信とラジオ・テレビ放送の双方向サービスの試行を実施し、2013年から2015年には、その結果を総括し、三網の融合発展を全面的に実現し、応用融合サービスを普及させることで、適度な競争のあるネットワーク産業を形成することとしている。2010年3月に開幕した全人代における温家宝首相の政府活動報告においては、「三網融合」の進展を実質的に推進することが言及され、現在、工業・情報化部及び国家ラジオ映画テレビ総局が試行方案を策定中であるが、両者間の調整は難航している状況である。なお、「三網融合」の具体的推進のため、工業・情報化部は第1陣試験地点として10都市を選定する方針を示している。 ウ 「物聯網」の推進  「物聯網」とは、ユビキタスネットワークに似た概念であり、「人」と「人」のみならず、「人」と「モノ」、「モノ」と「モノ」をつなぐことにより、生活の様々な場面でICTの利便性を享受することのできる社会を目指す中国における戦略の総称である。2010年3月に開幕した全人代における温家宝首相の政府活動報告においても、「三網融合」とともに重要課題と位置付けられており、その研究開発及び応用を加速することが言及されている。現在、国務院、国家発展改革委員会、工業・情報化部等が中心となって実行計画の策定を行っているところであり、地方都市レベルでは既に発展推進計画を発表したところもある。なお、既に実験都市第一号として、江蘇省無錫市が内定している。