(5)インドの情報通信政策の動向 ●民間事業者に対する3G周波数の割当てオークションを実施。2Gを含めた携帯ユーザー数は6億に迫る  インド通信市場においては、1990年代初頭から自由化が段階的に実施され、各種の規制緩和とそれに伴う競争促進がもたらす料金低下を背景として市場は発展を続けている。特に移動体通信市場は爆発的な成長を続けており、直近では毎月2,000万人以上というペースで携帯電話利用者の増加が続いており、契約者数は、2010年3月末現在で5億8,432万となっている。  既に、国営のBSNL(全国展開の総合通信サービス提供事業者)とMTNL(都市部のデリーとムンバイにおいてサービス展開をする総合通信サービス事業者)の2社に3G周波数への割当てが実施されており、2009年2月にMTNLがデリーでインド初の3Gサービスを開始、BSNLが同月にインド北部及び東部の主要11都市で同時に3Gサービスの提供を開始していたが、2010年4月には民間事業者を対象にした周波数オークションが実施され、同年5月にオークションが終了し、全ての落札者が確定した。バルティ・エアテル(シェア1位)、リアイアンス・コミュニケーションズ(シェア2位)、エアセル(シェア7位)が22地域中13地域で帯域を獲得し、ボーダフォン・エッサール(シェア3位)が9地域を押さえた。他方、全国をカバーする周波数帯(1スロット)は入札金額が高騰しすぎ、落札事業者がなかったため、これらの大手事業者が全国サービスを行うためには、各地域で他社とローミングの提携をしなければならなくなった。なお、我が国の携帯キャリア(NTTドコモ)が出資するタタ・テレサービシズ(シェア5位)は、デリー、ムンバイ及びチェンナイを含むタミルナード州の周波数を獲得することはできなかったものの、マハーラーシュトラ州、グジャラート州など収益性の高いと思われる地区の周波数を獲得している。  インド政府は当初、今回のオークションで得られる金額を最大でも3,500億ルピー(約7,000億円)と予想していたが、落札額は、全地域合計で6,800億ルピー(約1兆3,600億円)に達しており、ただでさえ低い水準の携帯料金に頭を痛める各通信事業者にとって、高額な落札額が重い負担となり、各社の利益を圧迫するとみられている。