(1)ブロードバンドインターネットの普及 ●平成13年のブロードバンド元年の後、DSLやFTTH、ケーブルインターネットなどのブロードバンドが拡大  平成13年版情報通信白書において、『ブロードバンド元年』と位置付けられて以降、その後10年間でブロードバンドは、どのように普及したのだろうか。  平成14年時点では、自宅のパソコンからインターネットにアクセスする方法として、70.6%がナローバンド回線1を利用していたが、平成16年にナローバンド回線とブロードバンド回線2が逆転し、平成22年には77.9%がDSL、FTTHやケーブルインターネットなどのブロードバンド回線利用となった(図表1-2-1-2)。 図表1-2-1-2 「自宅」で「パソコン」からインターネットを利用する際のアクセス方法の推移 (出典)総務省「ICTインフラの進展が国民のライフスタイルや社会環境等に及ぼした影響と相互関係に関する調査」(平成23年) (総務省「通信利用動向調査」により作成) ア DSLの急増による成長 ●低廉化・高速化が進み、平成12年の開始から3年で契約数が1,000万を超える急成長  DSLは平成12年から開始されたが、同年8月、アンバンドル3した加入者回線等の料金や接続の技術的条件に関するルール整備が行われたこともあり、平成13年からは、Yahoo!BBなど低廉な価格でDSLを提供する新規事業者が参入し、開始当初から提供していたNTT東日本も含めて、料金が低廉化していった(図表1-2-1-3)。また、その回線速度は平成14年に12Mbps、翌平成15年に20Mbpsを超え、平成16年には50Mbpsに達するなど、高速化と低廉化が進み、その契約数は急激に拡大、開始から3年後の平成15年には契約数が1,000万を超える成長を見せた。 図表1-2-1-3 ブロードバンド(DSL)の契約数と料金の推移 (出典)総務省「ICTインフラの進展が国民のライフスタイルや社会環境等に及ぼした影響と相互関係に関する調査」(平成23年) ●DSLがインターネットの拡大をけん引し、「自宅」で「パソコン」からインターネット利用する際、DSLを利用する世帯割合が増加  当時、インターネットはどのように利用されていたのだろうか。DSLが拡大していた平成12年から平成16年にかけて、「自宅」で「パソコン」からインターネット利用する際にDSLを利用する世帯の割合は増加傾向にあり、平成16年には39.2%がインターネット接続にDSLを利用していた(図表1-2-1-4)。このことから、平成9年から平成15年頃までの成長期における成長の要因として、DSLの拡大があったと考えられる。 図表1-2-1-4 「自宅」で「パソコン」からインターネットを利用する際、DSLを利用する世帯の割合の推移 (出典)総務省「ICTインフラの進展が国民のライフスタイルや社会環境等に及ぼした影響と相互関係に関する調査」(平成23年) (総務省「通信利用動向調査」により作成) イ ケーブルインターネットの拡大 ●ケーブルインターネットは継続して拡大し、高速化・大容量化も促進  インターネットの拡大においては、DSLとともにケーブルインターネットが拡大の大きな要素となっている。ケーブルインターネットはDSLより早い平成8年よりサービスを開始し、それ以降継続的に契約数を拡大、平成21年度末には531万契約に達した(図表1-2-1-5)。その回線速度は、平成17年にJCOMにより最大速度100Mbpsのサービスが提供開始になり、現在は、最大160Mbpsのサービスも提供されているなど、高速化・大容量化が進んでいる。 図表1-2-1-5 ケーブルインターネット契約者数の推移 (出典)総務省「ICTインフラの進展が国民のライフスタイルや社会環境等に及ぼした影響と相互関係に関する調査」(平成23年) ウ FTTHの拡大と乗り換え ●インターネットの成熟期には、DSLからFTTHへの乗り換えが加速  インターネットが成熟期に入ったと考えられる平成15年以降にはどのような動きがあったのだろうか。平成13年から本格的に提供開始したFTTHは、DSLよりも高速な通信が可能であり、開始以降増加し続けたものの、平成13年から平成16年までの間は、DSLの増加に遅れをとる状況(図表1-2-1-6)であった。しかし、平成17年には最安価格が2千円台になるなど、サービス開始当初より価格の低廉化が進んだ(図表1-2-1-7)こともあり、利用は継続して拡大し、平成20年には、平成17年以降減少傾向となっていたDSLの契約数を超えることとなった。この間、インターネットの普及率は急激な増加・減少なく、安定的に推移しており(図表1-2-1-1)、FTTHの増加とDSLの減少の大きな影響は受けていない。このことから、インターネットの成熟期には、DSLからFTTHへの乗り換えが進み、ブロードバンドの主流がFTTHへ移行していったと考えられる。 図表1-2-1-6 ブロードバンド回線別の契約数の推移 (出典)総務省「ICTインフラの進展が国民のライフスタイルや社会環境等に及ぼした影響と相互関係に関する調査」(平成23年) 図表1-2-1-7 ブロードバンド(FTTH)の契約数と料金の推移 (出典)総務省「ICTインフラの進展が国民のライフスタイルや社会環境等に及ぼした影響と相互関係に関する調査」(平成23年) エ ブロードバンドのリッチ化 ●ブロードバンドはケーブルインターネット、DSLにより普及、FTTHにより高速化・大容量化し、動画投稿サイト等のリッチコンテンツの利用が促進  平成13年版情報通信白書で『ブロードバンド元年』を宣言した以降、ブロードバンドはケーブルインターネットやDSLにより大きく普及し、その後FTTHへの移行を通して、より高速化・大容量化、つまりリッチ化していった。  利用する機能・サービスにどのような差異が生まれるのか、平成22年通信利用動向調査より、ナローバンドとブロードバンドの比較(図表1-2-1-8)をしたところ、デジタルコンテンツ(音楽・音声、映像、ゲームソフト等)の入手・聴取については、ナローバンドからは16.3%と利用が比較的少ないが、ブロードバンドになると、28.3%と利用が拡大していることがわかる。また、動画投稿サイトについても、ナローバンドの利用が少なく、ブロードバンドからだと利用が拡大する機能・サービスである。つまり、ブロードバンドのリッチ化により、インターネットを介して動画投稿サイトや音楽・音声、映像、ゲームソフト等の様々なデジタルコンテンツや情報にアクセスすることが容易にできる環境になったと考えられる。 図表1-2-1-8 ナローバンド・ブロードバンド別、利用した機能・サービスと目的・用途の比較 (出典)総務省「ICTインフラの進展が国民のライフスタイルや社会環境等に及ぼした影響と相互関係に関する調査」(平成23年) (総務省「通信利用動向調査」により作成) 1 電話回線(ダイヤルアップ)、ISDN回線、携帯電話回線、PHS回線のいずれか 2 光回線(FTTH)、ケーブルテレビ回線(CATV回線)、DSL回線、第3世代携帯電話回線、固定無線回線(FWA)及びBWAアクセスサービスのいずれか 3 第一種指定電気通信設備との接続に係る機能のうち、他の事業者が必要とするもののみを細分して使用できるようにすることをいう