(2)限界生産性比較(産業別)  この産業別生産関数分析で得られたパラメータを用いて、情報資本の限界生産性、一般資本の限界生産性及び両者の格差を産業別に推計を行った。資本ストックの限界生産性とは、資本ストックが1単位(100万円)増加した時、実質GDPが何単位(100万円)変化するかを示す指標であり、例えば、情報資本が100万円増加すると、GDPが1,500万円増加する場合、情報資本1単位の増加に対するGDPの増加分は15倍となる。情報資本と一般資本の限界生産性の格差が大きければ大きいほど、当該産業における情報資本の蓄積が遅れていることを示す5。  我が国産業別に限界生産性格差をみると、全産業ともに一般資本及び情報資本においては限界生産性に格差がみられ、情報資本の蓄積に対して何らかの抑制要因が存在していることがわかる。おおむね各産業ともに、一般資本及び情報資本の格差が減少方向に向かっているものの、農林水産業については、限界生産性の格差が拡大する傾向がみられる(図表1-4-2-2)。 図表1-4-2-2 産業別にみた限界生産性格差(主要産業) (出典)総務省「ICTが成長に与える効果に関する調査研究」(平成24年)  しかしながら、我が国及びドイツについては、依然として大きな格差が存在している。特に、ドイツは、近年においても格差の縮小傾向が見られるものの、我が国については格差の縮小傾向に立ち止まり感が見られ、情報資本蓄積が低下傾向にある。 5 篠崎彰彦「情報技術革新の経済効果」(日本評論社)によれば、「資源の移動に制約がなく、効率的な配分が行われるとすれば、限界生産力の高い分野には、より多くの収益機会を求めて投資が集まり、この格差はやがて収斂していくと考えられる。逆にいうと、これだけの格差が今なお存在するということは、情報資本の蓄積に対して何らかの抑制要因が存在することを示唆している。(中略) 限界生産性の格差の大きさは、何らかの理由で情報資本の蓄積が遅れていることを示すものであるといえる。」とされる。