(2)メディアの利用状況―震災後 ア 震災発生後のテーマごとの情報源  主な情報源として利用されたメディアについては、全ての年代を通じて全体として一番利用されたのはテレビであり、情報のテーマによってもテレビが一番であることに変化はなかった(図表3-1-4-2)。ただし、「交通状況」については、テレビを情報源とする割合が他のテーマに比べて低めである。また、新聞については「地震速報」「避難指示」「交通状況」といった速報性の高い情報よりも、「原発事故・放射能」「食の安全」といったより専門的な テーマについてよく利用されたことがわかる。なお、インターネットについては、ニュースサイトが比較的利用されているが、利用したと回答した割合は40%〜50%前後といった状況である。 図表3-1-4-2 震災後における災害関連情報に関するテーマ別情報源 (出典)総務省情報通信政策研究所・東京大学情報学環橋元研究室 「東日本大震災を契機とした情報行動の変化に関する調査」(平成24年) イ テーマごとの信頼度について  次に、テーマごとに利用した情報源についてそれぞれどの程度信頼できたかという「信頼度」についてみると、「地震速報」「避難指示」「交通状況」といった情報については、速報性が求められることもあり、テレビ、携帯電話のワンセグ(放送内容はテレビと同じ)、ラジオ、ニュースサイトの信頼度が高く、新聞がやや落ちてそれに続く形となる。また、「地震速報」「避難指示」といった緊急性の高い情報については、政府・自治体による情報提供も高い信頼度を得ていることがわかる(図表3-1-4-3)。 図表3-1-4-3 震災後における災害関連情報に関するテーマ別信頼度 (出典)総務省情報通信政策研究所・東京大学情報学環橋元研究室 「東日本大震災を契機とした情報行動の変化に関する調査」(平成24年)  一方で、「原発事故・放射能」「食の安全」になると、新聞とニュースサイトが相対的に信頼度を保っているものの、特にテレビ(ワンセグ含む)、ラジオといった既存の放送メディアでは「地震速報」や「避難指示」などでみられた値より信頼度が20ポイント程度低い。また、他のメディアと比べても信頼できると回答される割合が低くなり「新聞→ラジオ→ニュースサイト→テレビ」の順となっている。  しかしながら、反比例的に特に信頼性が高まったメディアがあるわけではない。「原発・放射能」と「食の安全」に限り、大学・研究機関等のTwitterの信頼度の値がやや高めで50%〜55%程度になるものの、ソーシャルメディア、インターネットのブログについては、どのテーマをとっても信頼度が50%に満たないなど、信頼性が特に高いとはいえない状態である。このことから、「原発・放射能」「食の安全」については、テレビを中心とする放送メディアの信頼度が他のテーマよりも低い傾向がみられたものの、ネットなど他のメディアがテレビを代替・補完するような高い信頼度を特に得ていたわけでもなかったとみられる。  なお、大学・研究機関等のTwitterの信頼度の値がやや高めであることについては、ソーシャルメディア一般については、震災でもネット上の流言飛語が問題になるなど様々な言説が流布しており、必ずしも一般的に信頼度が高いとはいえなくても、「原発・放射能」「食の安全」といった専門性の高いテーマについては、大学・研究機関や研究者といった主体による情報発信である場合には、情報源として信頼できたという評価を得ていると考えられる。 ウ 情報源の信頼性の変化について  「地震・津波の被害状況」「原発事故・放射能」「食の安全」の3テーマについて、いくつかの情報源について「震災前に比べて震災発生から1か月間」と「震災前に比べて現在」の2時点における信頼性の変化を比較した。情報源については、いわゆる既存メディアと、個人を含む利用者発信型の比較的新しいインターネットの情報源を対比する観点から、「テレビ」「ラジオ」「新聞」という既存メディアと「インターネットのブログ」「インターネットのソーシャルメディア」というネット系情報源に限定した。  まず、「地震・津波の被害状況」については、既存メディアについて信頼性が上がったと回答した割合がネット系情報源より10〜20ポイント高い。  これに対し、「原発事故・放射能」「食の安全」については、テレビを中心に既存メディアについて信頼性が下がったと回答した割合がネット系情報源よりも大きい。テレビについては、信頼性が下がったと回答した人が一番多く、25%程度である。また、「原発事故・放射能」「食の安全」については、ネット系の一部を除き、各情報源は震災発生から1か月間の時点よりも、現在の方が、震災前に比べて信頼性が低くなっている。この場合も、信頼性の下がり幅が一番大きいのはテレビである(図表3-1-4-4)。 図表3-1-4-4 震災後における災害関連情報に係る各情報源の信頼性変化 (出典)総務省情報通信政策研究所・東京大学情報学環橋元研究室 「東日本大震災を契機とした情報行動の変化に関する調査」(平成24年)