総務省トップ > 政策 > 白書 > 25年版 > ICTの最新トレンドを新たな成長の原動力へ -スマートICT-
第1部 特集 「スマートICT」の戦略的活用でいかに日本に元気と成長をもたらすか
第1節 新たなICTトレンド=「スマートICT」が生み出す日本の元気と成長

(3)ICTの最新トレンドを新たな成長の原動力へ -スマートICT-

本項冒頭に述べたように、クラウド、ビッグデータ、モバイル、ソーシャルといったICT分野の新たな技術革新、サービス革新が新たなICT成長基盤を生み出しつつある。昨年(平成24年版)の情報通信白書では、第2章において、それを「スマート革命」と称して、その影響について、ICT産業、とりわけモバイル産業の構造変化を分析し、「エコシステム間競争」ともいえる現象が生じつつあることを提示した(図表1-1-1-14)。また、ICT機器のコモディティ化の進展により、通信サービス、さらには上位レイヤーのサービスにより成長余力が生じていることを分析したところであるが、平成24年の各社決算をみると、その傾向が引き続き現れているところである(第1章第2節 図表1-2-1-1参照)。

図表1-1-1-14 「スマート革命」(平成24年白書のメッセージ)

さらに、このようなICTの最新トレンドは、ICT産業のみならず、今後ICT利用産業・部門の成長余力も大きく向上させることが各方面で期待されている10。例えば、米国の調査会社のガートナー社は、「モバイル」、「インフォメーション」、「クラウド」、「ソーシャル」の4つの力の融合による成長を強調している。すなわち、「ソーシャルコラボレーション、モビリティ、インフォメーション、クラウドの力が合流して、ビジネスの機会とパラダイムシフトに満ちた消費者主導型のエコシステムを創造する」とした上で、「接続されたスマートデバイスの一般消費財化と普遍化(Consumerization and Ubiquity)-及び人々の行動のシフト-に先導されて、力の融合は、既存のアーキテクチャーを時代遅れのものにする形で起こる。」とし、これらの力の結節が様々なビジネスや産業における価値創造のプラットフォームとなるとしている11。また、同じく米国の調査会社のIDC社も、クライアント/サーバー技術を利用する「第2のプラットフォーム」から、「モビリティ」、「クラウド」、「ビッグデータ」、「ソーシャル技術」による「第3のプラットフォーム」へのシフトを強調している12

具体例をあげると、第1章第3節で分析するように、ビッグデータ活用の裾野の広がりにより、かつて大企業の生産ラインや流通大手の販売管理中心に使われていたシステムが、いわば街中の商店の経営管理や、教育・医療などの公的分野においても容易に活用可能となっている。パンの製造・販売事業者のアンデルセンは、POSシステムから販売履歴情報を解析し、来店客数から商品売れ行きパターンを予測できるようにし、店単位で、従来自動車産業で行われていたような製造計画を立案することが可能になったとのことである。

また、ソーシャルメディアの各種分析への活用は、広告のみならず様々な部門に拡大している。販売促進の側面では、O2O(Online to Offline)と呼ばれるネットやアプリを活用した実店舗への顧客誘導が本格化しており、広告と販売促進の境目があいまいになるなど、広告の在り方も変革しつつある。さらに、モノのコモディティ化の拡大等により製造業・サービス業などあらゆる産業・部門がサービス化し、交換時の価値ではなく、継続して使用する時点での価値(ユーザー体験)をいかに増大するかが競争上重要になってきているとの指摘があるが(サービス・ドミナント・ロジック 本節第2項参照)、ICTは従来からその方向性を加速してきており、ソーシャルメディア活用により、例えば「初音ミク」にみられるように、ユーザー間の「勝手な」交流で商品・サービスの価値が向上していくような、いわばユーザーによる価値「共創」の段階にまでその流れが達しつつある。

他方、社会課題解決の側面からみても、第2章「ICTによる社会インフラの高度化」で紹介するように、ビッグデータやM2M・センサーネットワークの活用により、電力・交通・水道など様々な社会インフラの効率的管理が実現できる。また、資源探査や農業生産の効率化など、我が国が抱える資源問題の解決にも貢献が期待できる。さらに、行政等の保有する各種情報を自由に再利用できるようにする「オープンデータ」は、それを活用した様々なアプリの提供(例えば、福井県鯖江市では、各種公共施設の位置情報等を公開し、APIも公開することにより、民間企業が最寄りのトイレ検索、コミュニティバスのリアルタイム運行状況等を検索できるアプリを開発、提供している)により、民主導による多様でユーザーフレンドリーな公共サービスの創造が可能となる。

このように、ビッグデータ、ソーシャル、M2M・センサーネットワークなどのICTの最新トレンド、いわば「スマートICT」は、業務改善・生産性向上が中心だった従来のICTシステムの枠を大きく超え、新たな成長の原動力を生むポテンシャルを秘めている。



10 2012年5月の米国電子政府戦略「デジタルガバメント戦略」公表に当たりオバマ大統領名でホワイトハウスから各省庁長官宛てに発出されたメモランダム「21世紀の電子政府の構築にあたって」において「コンピュータ能力の飛躍的向上、高速ネットワークの普及やモバイル領域での革新により、インターネットへいつでもアクセスできるようになり、その結果として、新しい産業が生まれ、既存産業の形も変わりつつある」と同様の認識が述べられている。http://www.whitehouse.gov/sites/default/files/uploads/2012digital_mem_rel.pdfPDF

11 Agenda Overview for the Nexus of Force, 2013 2013年1月

12 「IT産業の構造変化を加速する第3のプラットフォーム」2012年12月

テキスト形式のファイルはこちら

ページトップへ戻る