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第1部 特集 「スマートICT」の戦略的活用でいかに日本に元気と成長をもたらすか
第3節 ビッグデータの活用が促す成長の可能性

(4)ビッグデータの戦略的活用に向けた諸外国の取組

このように、ビッグデータの活用は多くの経済効果・価値をもたらすものと考えられていることから、諸外国では国家・地域レベルでビッグデータの活用に戦略的な取組を進めているところ、各国における取組について紹介する。

ア 米国

米国では、大統領府科学技術政策局(OSTP)が平成24年3月29日に発表したビッグデータ研究発展イニシアティブ(Big Data Research and Development Intiative)10において、政府として戦略的に取り組む姿勢を明確にしており、総額2億ドルの予算が研究開発に充てられている。同イニシアティブでは、国立科学財団(NSF)、国立衛生研究所(NIH)、国防総省(DoD)、エネルギー省(DOE)、国防高等研究計画局(DARPA)及び地質調査所(USGS)の6機関が参加しているところである。

このほかに、連邦政府ではビッグデータ関連事業が実施されている。米国のIT企業Deltek社が2012年11月に行った調査11では、連邦政府内で163の関連事業が実施されている。その中でも事業数が多いのは、保健福祉省(HHS)、国防総省、エネルギー省といった機関である(図表1-3-1-12)。なお、同社では、ビッグデータ関連予算は57億ドル(2014年)から年率8.2%で成長し、2017年には70億ドル以上に達すると予測している。

図表1-3-1-12 米国連邦政府におけるビッグデータ関連事業数(機関別)
(出典)総務省「ICT分野の革新が我が国社会経済システムに及ぼすインパクトに係る調査研究」(平成25年)
「図表1-3-1-12 米国連邦政府におけるビッグデータ関連事業数(機関別)」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら
イ EU

EUにおけるビッグデータに関する主な取組としては、第7次研究枠組計画(FP7)において、2012年9月から2014年10月まで実施される予定のBIG(Big Data Public Private Forum)12がある。BIGはビッグデータのバリューチェーンの具体化、技術トレンドのロードマップの作成、ビッグデータの適用分野の明確化、予想されるインパクトに応じた優先順位の決定、次期研究枠組計画であるHorizon2020策定への貢献といった目標がある。BIGは5つのフォーラム(金融・保険、医療、製造・リテール・エネルギー・輸送、公共、テレコム・メディア・エンターテインメント)を有し、5つの作業部会(データ取得、データ分析、データ・キュレーション、データ保存、データ用途)を持つ。

また、FP7におけるビッグデータ関連研究計画として、Planet Data13がある。実施期間は2010年10月から2014年9月までであり、総予算は372万ユーロ(うちEU補助金は302万ユーロ)となっている。同計画の目標は、様々な組織が自らのデータを新たな有益なやり方でウェブ上において提供する取組をサポートする学際的な持続的研究コミュニティを確立することにある。同計画は研究結果の理解を広めるため、EUの他のプロジェクトとも緊密に連携しており、2012年6月に第1回欧州データフォーラムを開催し、欧州のデータ経済を中心としたテーマについて議論を行っている。

ウ 韓国

政府横断的なビッグデータ戦略として、2012年11月末に国家情報化戦略委員会14が「スマート国家具現のためのビッグデータ・マスタープラン(以下、マスタープラン)」を発表した。2017年までにビッグデータ強国となることを目標としているマスタープランの主要内容は、次の4点である。

①ビッグデータ共有と活用のための政府内共同設備構築

②ビッグデータ技術開発ロードマップ策定と中核技術開発支援

③専門人材育成のため大学にビッグデータ関連科目を開設し産官学共同研究開発事業を支援

④公共データ開放活性化のための法令制定推進、個人情報保護対策整備

政府は、ビッグデータの活用場面のうち、犯罪発生場所と時間の予測、自然災害早期感知、民間参加型交通事故減少体系構築といった3課題を選定して2013年に優先的に推進、2017年までに16課題を遂行する方針である。マスタープラン実施のための予算は、2016年までに政府と民間合わせて約5,000億ウォンが投じられる予定である。

省庁レベルの政策としては、これより先の2012年6月に放送通信委員会が「ビッグデータサービス活性化方針」において7つの政策課題15を発表している。省レベルの戦略はマスタープランに沿った形で進められ、個別政策課題は可能なものから2013年以降に実施される。

エ 中国

国家発展・改革委員会は、2012年12月に「2012年におけるハイテク・サービス業の研究開発と産業化に関する通知」を発表し、その中の支援内容において、ビッグデータの処理技術の確立を促進する一環として、ビッグデータ分析ソフトウェアの開発とそれを活用したサービスの創出が重点的支援の対象と指定された。対象となっているのは、先進的な14省市で、各地方政府は、今後3年間のプロジェクト実施方案と資金申請報告を策定・提出し、国家発展・改革委員会は2013年上半期に、優良プロジェクトに対して資金を支援することとしている。

オ シンガポール

情報通信開発庁(IDA)は、2012年11月にビッグデータ関連の政策を含むパッケージ「情報通信技術ロードマップ(The Infocomm Technology Roadmap)」16を策定、国内の経済、社会に大きな影響を与える9つのテーマを提示した。ビッグデータはこれら9つの最初に言及されており、クラウド・コンピューティング、サイバー・セキュリティやモノのインターネットといった隣接分野とともに、ロードマップの核となっている。また、新技術がもたらすインパクトの代表例として、ビッグデータと、モノのインターネットやユーザーインターフェイスとの融合可能性も高く評価されており、ビッグデータによる他産業への波及効果にも大きな期待が寄せられている。

IDAは情報通信専門職の職能基準を「国家情報通信フレームワーク(National Infocomm Competency Framework: NICF)」17により規定し、ビッグデータ事業に従事するデータ分析専門家の充実を図っている。IDAは、2015年までに約2,000人のデータ分析専門家を市場に送り出すことを目標としている 。



10 http://www.whitehouse.gov/sites/default/files/microsites/ostp/big_data_press_release_final_2.pdfPDF

11 http://govwin.com/arossino_blog/big-data-experience-in-federal/742968別ウィンドウで開きます

12 http://www.big-project.eu/別ウィンドウで開きます

13 http://www.planetdata.com/別ウィンドウで開きます

14 2013年3月の省庁再編により廃止

15 7つの政策課題とは、新規サービス発掘・拡大のための試験サービス推進、ビッグデータ技術及びプラットフォーム競争力強化、専門人材養成、ビッグデータ支援センターの設置・運営及び情報共有体系整備、ビッグデータ産業実態調査、個人情報保護関連法制度改善及びビッグデータ産業振興のための法制度改善

16 http://www.ida.gov.sg/Infocomm-Landscape/Technology/Technology-Roadmap別ウィンドウで開きます

17 http://www.ida.gov.sg/Collaboration-and-Initiatives/Initiatives/Store/National-Infocomm-Competency-Framework-NICF別ウィンドウで開きます

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