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第1部 特集 「スマートICT」の戦略的活用でいかに日本に元気と成長をもたらすか
第1節 電子行政とオープンデータ

1 電子行政の推進

(1)電子行政のこれまでの流れ

ア 1950年代から90年代までの主な取組

電子行政に関するこれまでの取組を振り返ると(図表2-1-1-1)、政府は、1950年代後半の気象庁及び総理府統計局を皮切りに大規模電子計算機を導入し、大量定型業務の自動処理化を進めてきた。これにより、事務の大幅な効率化が実現されたが、90年代になると、メインフレームやホストコンピュータと呼ばれる大規模なシステムの高コスト構造等が指摘されるようになった。このため、「行政情報化推進基本計画」(平成6年12月25日閣議決定)では、オープンシステム化を推進する方針を打ち出し、その取組を進めることとなった。

図表2-1-1-1 電子行政の取組の展開

また、「行政情報化推進基本計画」では、「各省庁の施設内ネットワークを相互に接続する霞が関WANの整備」を行うこととし、平成9年1月から、各省庁のLANを結ぶ省庁間ネットワークとして霞が関WANの運用を開始し、複数の省庁にわたる電子メールの送受信や情報共有等における情報通信基盤としての機能を果たした。

さらに、90年代後半には、インターネットの普及を背景に、「行政情報化推進基本計画の改定について」(平成9年12月20日閣議決定)において、「日々公表される報道発表資料、国民生活に必要な各種の行政情報などについて、広範にインターネット・ホームページを活用しオンラインによる提供を進めるとともに、提供内容の充実、タイムリーな提供を一層推進する」などとし、これを踏まえ各省庁は、ホームページの開設や、国民に行政情報の所在案内を行うためのクリアリングシステムの整備を進めた。また、総務庁(当時)は、各省庁が提供している行政情報を総合的に検索するための総合案内クリアリングシステムを平成11年に運用開始するなど、インターネット上での行政情報の提供等に関する取組を進めた。

このほか、「行政情報化推進基本計画の改定について」は、「必要な職員へのパソコン1人1台の配備を進める」こととし、これに基づく取組の結果、平成11年度には本省庁におけるパソコン1台当たりの職員数が1.0人となり、「1人1台パソコン」が達成されるなど、行政情報化推進のための基盤整備が進められた。

イ 2000年代以降の主な取組
(ア) 行政手続のオンライン化・オンライン利用促進

政府は、2000年代初頭に、ICTに関する国家戦略である「e-Japan戦略」(平成13年1月IT戦略本部決定)を策定し、電子政府の実現を重点政策分野の一つに位置付けた。その中で、行政手続のオンライン化については、「2003年までに、国が提供する実質的にすべての行政手続きをインターネット経由で可能とする」こととした。この戦略に基づき、各府省の所管手続をオンラインで行えるシステムや、電子的な申請・届出等の真正性を確保する政府認証基盤(GPKI)、府省内で行われる事務処理を電子化する文書保管や稟議・決裁のシステムの整備が相次いで行われ、インターネット経由の行政手続を法的に可能とする「行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律(平成14年法律第151号)」が施行された平成15年(2003年)には、国の行政手続の96%について、インターネット経由で受け付ける環境が整った。

しかしながら、過去一度も書面による申請すら行われたことがない手続や極めて申請件数が少ない手続までもがオンライン化されたこと、申請件数の多い手続についても個人が申請する手続を中心に利用率が十分に伸びなかったこと、利用者の視点に立った業務の分析・見直しや申請システムの設計等が不十分であったことにより、オンライン利用が進まず、費用対効果等の点から取組の見直しが必要であった。

このため、政府は、「オンライン利用拡大行動計画」(平成20年9月IT戦略本部決定)を、さらにその3年後には「新たなオンライン利用に関する計画」(平成23年8月IT戦略本部決定)を策定し、これに基づき、国民や企業等による利用頻度の高い71種類の手続に取組を重点化し、業務プロセスの見直しを含めたオンライン利用促進を行うとともに、オンライン利用が低調で今後も改善の見込みのない手続に係るシステムを停止し、個別の手続についても費用対効果の観点からオンライン利用範囲の見直しを行った。その結果、平成23年度のオンライン利用率は、重点手続では40.4%、その他の手続を含めた全体では38.5%となっている(図表2-1-1-2図表2-1-1-4)。

図表2-1-1-2 これまでのオンライン利用の促進に関する取組の概要
図表2-1-1-3 国の行政機関が扱う手続のオンライン化状況の推移
「図表2-1-1-3 国の行政機関が扱う手続のオンライン化状況の推移」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら
図表2-1-1-4 国の行政機関が扱う申請・届出等手続のオンライン化の状況
「図表2-1-1-4 国の行政機関が扱う申請・届出等手続のオンライン化の状況」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら
(イ) 業務・システムの最適化

政府は、行政運営の簡素化・効率化を実現するため行政事務のICT化に取り組んできたが、これらは既存の業務及び制度を前提とした取組にとどまっており、ICT導入に当たって、業務の制度面・運用面からの見直しは必ずしも十分に行われていなかった。また、人事・給与や旅費の支給など、各府省に共通・類似する業務について、各府省それぞれにシステムの整備・運用が行われ、制度との整合性は図りつつも、各府省独自の処理が行われていた。

このため、政府は、平成15年度に「電子政府構築計画」(各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定)を策定し、人的・物的資源の効率的な活用を通じた行政の簡素化・合理化を図り、予算効率の高い簡素な政府を実現することを目標に掲げた。そして、ICT化に対応した業務改革として、「業務・システムの最適化」と呼ばれる取組を開始した。

「業務・システムの最適化」では、

・人事・給与等業務、共済業務、物品調達、物品管理、謝金・諸手当、補助金及び旅費の各業務(内部管理業務)や、災害管理業務、統計調査等業務など各府省に共通する業務・システム(20分野)

・旧式(レガシー)システムや経常的な経費が1億円以上の情報システムを用いている各府省独自の個別業務・システム(67分野)

の、計87分野の業務・システムについて、「業務・システム最適化指針(ガイドライン)」(平成18年3月各府省CIO連絡会議決定)に沿って「最適化計画」を策定し、業務と情報システムの改革を一体的かつ計画的に行うこととした(図表2-1-1-5)。特に、いわゆる旧式(レガシー)システムについては、長年にわたり非競争な環境におかれ、運用コストが高止まりになる傾向があったことを踏まえ、上記各業務・システムに係る最適化計画の一環として、

・汎用パッケージソフトウェアの利用

・オープンシステム化

・ハードウェアとソフトウェアのアンバンドル化(分離調達)

・随意契約から競争入札への移行

・データ通信役務サービス契約の見直し

・国庫債務負担行為の活用

の適用可能性を調査する、刷新可能性調査を事前に実施し、その結果を踏まえて最適化計画を策定し、システム刷新に取り組むこととした。

図表2-1-1-5 業務・システム最適化対象分野一覧

業務・システムの最適化の取組の中で、総務省は、各府省が立案した最適化計画の案を確認し、その内容について必要な調整を行うとともに、最適化の実施・評価状況のモニタリングを行う役割を担っており、平成19年度から毎年度、前年度におけるそれぞれの実施状況や取組による効果発現状況について、各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議において取りまとめを行っている。

平成24年9月に同連絡会議で取りまとめた平成23年度の最適化実施状況によると、これまでの最適化の取組によって発現した平成23年度の効果は、経費の削減効果が785億円/年(目標値:550億円/年)、職員等の業務処理時間の短縮効果が16百万時間/年(目標値:15百万時間/年)と試算されている。これらの効果は、それぞれの取組の進捗に応じ、年々増加しており、最終的には87分野の全取組において効果が発現することで、経費については1,151億円/年の削減効果、業務処理時間については63百万時間/年の短縮効果が見込まれている。

こうした業務・システムの最適化による取組効果は、政府全体の情報システム関係予算にも反映されてきており、予算総額は平成21年度の6,340億円から平成25年度の5,319億円へ、そのうち運用経費等は平成21年度の4,662億円から平成25年度の4,197億円へと、それぞれ減少している(図表2-1-1-6)。

図表2-1-1-6 情報システム関係予算額の推移
(ウ) 情報システムのクラウド化

平成15年から始まった業務・システムの最適化の取組は、府省共通業務・システムの集中化、レガシーシステムのオープン化などについて着実な進展を見せており、運用コストの削減、業務処理の効率化等に関して相応の成果が見込まれる一方で、各分野で行われた取組は、個々の業務・システムの範囲にとどまり、最適化される範囲も限定的であったため、電子行政は、各業務・システムを結ぶ政府全体を通じた全体最適に向け、次の新たな施策を講ずる必要性が増してきていた。

こうした事情も背景として、政府は、「デジタル新時代に向けた新たな戦略〜三か年緊急プラン〜」(平成21年4月IT戦略本部決定)において、当時、一般の情報システムにおいても十分実装可能なレベルにまで進展してきていた仮想化技術等を政府情報システムにも導入し、「霞が関クラウド(仮称)」を構築する構想を示した。これを具体化するため、総務省は、府省ごとに分散する情報システムを統合・集約化し、共通機能の一元的提供等を行うための新しい政府共通のシステム基盤として、「政府共通プラットフォーム」の整備に着手し、平成25年3月にその運用を開始した(図表2-1-1-7)。

図表2-1-1-7 政府共通プラットフォームの概要

また、地方自治体においては、いわゆる電子申請などのフロントオフィス業務において、ASP・SaaSの導入事例が増えてきたこともあり、平成22年度においてASP・SaaS導入活用ガイドラインを取りまとめるとともに、同年度に基幹系業務の共同利用を促進するため、「自治体クラウド推進本部」を設置し、基幹系業務の共同利用・データセンターによる情報管理を目的とした自治体クラウドの円滑な展開を実現するための検討・実施を行ってきたところである。

(エ) 政府におけるICTガバナンスの確立・強化

電子政府の推進体制を確立・強化するため、政府は平成14年に、各府省に情報化統括責任者(CIO)を設置した。また、平成15年には、府省内の業務・システムの分析・評価や最適化計画の策定に当たり、各府省CIOを補佐し、支援・助言等を行うCIO補佐官を配置した。さらに、平成18年には、各府省CIOの下で、府省内の情報システム企画、開発、運用、評価等の業務について責任を持って統括する体制(プログラム・マネジメント・オフィス(PMO))を整備した。

しかし、政府のICTガバナンスについては、ICT投資管理やシステムの整備・運用に係るポリシー・ルールが必ずしも十分に整備されておらず、政府全体のマネジメントが十分に機能していないとの指摘があった。このため政府は、「i-Japan戦略2015」(平成21年7月IT戦略本部決定)や「新たな情報通信技術戦略」(平成22年5月IT戦略本部決定)において、電子行政推進の司令塔としての役割を担う政府CIOの設置の必要性を示し、平成24年8月、内閣官房に政府情報化統括責任者(政府CIO)を設置した。

そして、政府CIOの設置や権限等を法定化するため、政府は、平成25年通常国会に「内閣法等の一部を改正する法律案」を提出した。同法案は衆議院の修正を経て成立し、政府CIOは、ICTの活用による国民の利便性の向上や行政運営の改善に関する事務を所掌する「内閣情報通信政策監」として内閣法に位置付けられた。

(オ) その他の取組

行政情報のインターネット上での提供については、総務省は平成13年に、総合的な行政情報ポータルサイトとして、電子政府の総合窓口(e-Gov)の運用を開始した。これは、総合行政サービスシステム、総合行政文書ファイル管理システム、法令データ提供システム等を一体的に運用するものであり、その後、パブリックコメントに関する情報案内機能の追加や、e-Gov電子申請システムの運用開始等を行い、サービスの拡充を進めている(図表2-1-1-8)。

図表2-1-1-8 電子政府総合窓口(e-Gov)の主な機能

また、電子行政の取組を効果的に推進するためには、職員のICT能力を向上させることが重要であることから、総務省では、各府省の職員を対象に情報システム統一研修を実施し、情報化を担う基幹要員等の養成に努めている(図表2-1-1-9)。

図表2-1-1-9 情報システム統一研修の概要
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